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輝く龍に会いました。

時代劇の世界

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「め…………」

  声がする。

  なんて言ってるのか、分からない。

「ひめ……………」

  ん?

  もしかして、“姫”って呼ばれてる?

  肩をトントンと叩かれる。

  やっぱり、あたしのこと?
  どうする?  また夢?
  それとも人違い?

  はたまた、天国では死んだ女を姫と呼ぶとか?

  うーん、有り得る。

  てか、さっきよりも頭がスッキリしてない?
  死の淵から抜け出した、的な?

  あ、なんか目も軽い……

「姫!」

  うっすらと目を開けると、真剣な表情の男の人がいた。

  さっきからあたしを呼んでいたのは、この人?


「リイ姫!
よくお目覚めになりました!」

  ……ナニ?


  よく見れば、男は白い着物を着て髪を結っている。

  天井は茶色の木目が見えるし、なんだか畳の匂いがする。
  周りに少し目をやれば襖(ふすま)があるし、何人か女の人がいるけど、みんな日本史の教科書に出て来たような、はたまた古典の教科書にあったような格好をしている。

  時代劇?
  何かのドッキリ企画?
  あたしそんなに有名人だったっけ?

  部屋の角に目を映したところで、心臓がキュッと冷たくなる。
  誰かが背中を預けて腕を組み、鋭い瞳でこっちを睨んでいた。

  紺の着物で襟足長めの真っ黒な短髪。
  腰には、明らかにテレビでしか見たことない刀が刺さっている。

  理由は無いけどなんか恐そう。

「姫様……?
どうかなされましたか……?」

  また男の人が話しかけてきて、あたしは目を戻した。

  女の人たちの表情も、なんか動揺してたし、あたし、まだ何も話して無かったよね。

  全く状況が掴めないし、みんな何か言うの待ってるみたいで空気重いし、とりあえず何か言わないと!

「………誰?」

  ようやく出せた声は、予想外に掠れてしまっていたが、これはだいぶ爆弾発言だったらしくて。

  周りの空気が一瞬凍りついた。

 
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