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入れ替わってる!?……いやいや冗談抜きで

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「おー!純!
今日もよく食べるなー」

「ったりめーだ!
食わねーでデカくなれるわけねーからな!」

今日の昼飯は購買で買って来たパン5つ。
焼きそばパン、カレーコロッケパン、カツサンド、プリンパン、揚げパンだ。
それに自前の弁当がある。

「プッ……やっぱおめー女じゃねーな」
「わりーかよ!
お前もこんなヤツに絡んでる暇あんなら弁当差し出せ!」
「俺のコンビニ弁当くれるわけねーだろ!これは俺んだ!」

茶髪のチリチリのミディアムヘアー(本人曰く、マッシュウルフという髪型らしい)のこいつは、オレのクラスメートの八神 健斗ヤガミ ケント

何故かいつも一緒にいて、こうしてオレに絡んでくるのだ。

オレたちの学校は3年間クラス替えが無いから、こいつとは卒業までこうやってると思う。

「はぁ……」
「なんだよ?」

紙パックの牛乳を飲みながら、頭を垂れる健斗。

「あいつが純みたいに単純バカだったらどんだけ楽か……」

「はあ!?
自分の彼女だろ!
またケンカしたわけ?」

「しゃーねーだろ!
したくてしてんじゃねーんだから!」

「逆ギレすんなし」

こいつには、彼女がいる。
他校の確か、水泳部で、ボンキュボンのエロい体だとか(こいつから聞いた話だからこれぐらいしか知らない)。
去年の夏、市営のプールでナンパして、それから今まで付き合っているらしいが、ケンカが絶えないよう。

「なんかさー、アレだよな」
「ん?」
「菜々子は運命の相手じゃねーのかもなーって、思っててさ」

プッ!!

「え、何? 急に乙女なの!?
てか実は純情トキめく女の子なの!? レズなの!?」

「バカかよ! てめーと一緒にすんな!!」

「はぁ!? オレはレズじゃねーよ!」

ムキになって返すと、珍しく健斗はまたため息をついて顔を逸らした。

「こんだけ上手くいかなくて、なんで付き合ってんのかも分かんねーし、てか、付き合うって何?みたいなところまで来てるっていうか……
こんなの、おめーに話しても意味ねーな」

「なんでよ?
オレはその可愛い健斗ちゃん見てて飽きないけどな」

「この……!」

「や!やめろー!いてっ!頭割れるー!」

両側のコメカミを片手で握られて、引き離そうと健斗の手を握った。

「……でも、ホントそれだよな」

「?」

「恋すると、自分が自分で無くなる。
マジ今の俺、カッコわりー」

そうやって、少し顔を赤くして、目を逸らす。

正直、オレは羨ましい。

自分の気持ちに素直になれるこいつが。


オレは、届かないから。

今は部活一筋。

恋なんて、しない。
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