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入れ替わりマニュアル…って、こんなの無理!!
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しおりを挟む目を覚ますと、黒い髪が目の前にあった。
オレのじゃない。
短髪で、小顔の……!
「っ……!
邪魔だバカ!変態!退けろクズ!!」
「っせーな……あんたが倒れたんだろ?」
ダルそうに頭を抱えながら、亜貴は起き上がる。
顔を合わせて、さっきのを思い出して、唇を強く拭った。
サイテー、最悪だ!
こんな遊び人の、色んな女とヤッてるようなクズに………!
「何?なんか間違ってた?
あんた、あいつとキスしたかったの?」
「なっ!そんなわけねーだ……っ!」
顔を上げると、片手で両頬を摘ままれた。
無表情のままギリギリまで顔を近づけてくる。
なんだ……!?
なんか……怒ってる!?
「……ムカつく」
「はぁ!?は、離せよ…!!」
「俺、誰とも付き合ってないから」
「っ……!」
「遊んでもない。
バカどもの噂だろ?」
「っ……そういうところだろ!
他の人間を下に見て、バカにして、こうやって人のこと掻き回して……」
会った時からそうだ。
勝手に人の身体を使って遊んで。
勝手にキスをして。
オレのたった一つの特技も……!
「楽しんで何が悪い」
「っ!」
パン……ッ!
「…………」
手がビリビリと痛む。
無意識に、亜貴の顔を叩いた。
「………何泣いてんの?」
「っ………!お前のせいだよ……!」
悔しい……!
この、バカにされた目が!
「ふーん……」
「い、いいから離せよ!!」
力を入れて手を引き離そうとするも、ビクともしない。
「あのさ……」
「っ!」
グッと床に押し付けられ、押し倒された。
「普通ならここで引き下がるか、あんたが出て行くかなんだろうけど……」
「やっ……!」
チュッ……
唇に、あの感触が蘇る。
「なんだ…ちゃんと目、閉じるじゃん」
「!?………や!」
チュッ……クチュッ………!
リップ音が屋上に響くのを感じた。
う…そ……!
舌………!!
抵抗するも、力が入らない。
「……反省した?」
「っ……は………?」
「まだ?」
「ま……んっ……!!」
今度は、優しいキス。
深く、甘く、全部持ってかれそうな。
キュッと、身体が縮むような、変な感覚。
足の指先まで、電気が走った気がした。
「……どう?」
「はっ……っ………どうって………!」
息が、上がる。
名一杯の青空を背景に、真っ直ぐな瞳の亜貴がいた。
「……劣等感」
「は……?」
「俺と張り合おうとしてるみたいだけど、御門違いだから。
男の俺にお前は一生敵わない。
無意味だからやめとけ」
「っ!
そんなん分かんねーだろ!?」
「じゃあ、振り解いてみろよ」
ギュッと、握られた手が痛む。
「抵抗も出来ない。
こうやってやられっぱなし。
顔赤くしてエロい顔して、片想いして……。
女なんだよお前は。
入れ替わってようが何しようが、女だ。
女だって、自覚しろ」
「やっ……イタッ!」
また顔が近づいてきて、目を瞑ると、首筋にチクッと痛みが走った。
「……それ、隠すなよ?」
涼しい顔で、そうやって離れてく。
「あと、俺と付き合ってることにしとけ。
その方がラクだから」
ラクって、なんだよ……。
エロい顔って、なんだよ……。
こんなの、卑怯だろ……。
ムカつく。
あいつも、目を閉じてあいつのキスを受けた自分も。
何、受け入れてんだよ。
もっと、抵抗出来んだろ。
目を開けた時の、あいつの顔が頭に浮かんだ。
正直、ドキッとした。
何か、胸の奥が、疼いた。
それがたまらなく、ムカつく。
なんで、女はこんなに……無力なんだよ。
横向きに寝転がり、ギュッと拳を握り締めた。
男に生まれてれば、こんなことに悩まないのに……。
なんで………!
さっきぶつけたらしい後頭部が、ズキズキした。
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