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消えた生徒
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それから嘉武はヨルから情報を引き出した。一度観念するとズルズルと情報が流れ出し始め、思っていたより根の深い話が聞く事が出来た。
グランディア学園内部には『ロータス』の息のかかったものが恐らく複数潜伏している。幹部であるかは分からないが、幹部と繋がっているのは最低でも考えられる。教師陣に潜伏している可能性も有るのだが、ここまで全ては生徒による仕業である。
その物の名前や特徴を口に出そうとすると声帯が血切れ、声を発する事が出来ない。それ故に示唆さえも行えない。
先日の生徒二人は元より素行が悪く、『ロータス』から声がかけられてもおかしくない。そんな人に忠告しようとしていたらしい。既に誘いを受けている可能性もあった。
ここまではヨル単独で確認出来た。しかも、他のSクラスの者もこの事について気が付いているだろうとの事。だが、今回はあくまでも独断での行動であると主張していた。
「だから、今までもそもそも殺してなんかないしっ、脅して情報引き出そうとしてただけなのにっ!」
「だったら紛らわしいんだよ。でも僕の事は殺しに来てたじゃないか」
「硬すぎるのよ!あなたの耐久はどうなってるの!?そんなに優秀ならなんでグランディアに居なかったのよ!?」
「まあ、外界に触れる機会が無かっただけだよ」
確かに目の前の少年は現役Sクラスの一人に勝利した。見たくれはどこにでも居そうな一般人的冒険者。それでも異常な力を持つアンビバレントな存在。それ程の人材が何処をほっつき歩いていたというのか。今までどこで少年が隠されていたのか。信じられない程の実力に、どこか機関の秘密なのだろうかとヨルは思考してしまう。
(まさか、伝説の・・・冒険者の・・・、いや、無いか・・・こんな普通な感じじゃ・・・)
でも良い、自分には自分の討つべき仇が居る。ヨルは嘉武を利用しようと企んだ。
「あなたも『ロータス』を知っているんでしょう?このままじゃディオーネ全土が危うくなってしまうかも知れない・・・。手遅れになってからでは遅いのよ」
「ああ、僕も成り行きで『ロータス』を潰せたら良いかなって思ってるよ」
「・・・中途半端な覚悟ね、あなたには冒険者としての矜恃とか無いわけ・・・?」
ずっと腑抜けた返事しか返さない嘉武にヨルは呆れる。それでも、ヨルとの目的は同じ。
「悪いけど、僕はこの世界をもっと知ろうと思ってるんだ。その邪魔をするって言うなら『ロータス』であろうと潰してやろうって考えなだけだよ」
少年の様子は本気に見えた。
「それなら、協力して欲しいことがあるの」
ヨルは続けた。
二年前、ヨルは王立グランディア学園へと入学した。クラスメイトの先輩達は皆仲が良く、冒険者や騎士団の隔たりもなく共闘して力を付けて磨いていた。
ある日、新入生歓迎を兼ねて皆でノーザル鉱山へと行った。そこではアルマジェイト鉱石と言う高価な鉱石が取れるのだが、Sクラス程度の実力が無ければ採掘が難しい。
発掘事態に力を要する他、時折、大型の魔獣が出没するのだ。新入生がいては危険だと言う先輩も居たのだが、一人、どうしても鉱石へ行き新入生へも力を示したいと言う先輩がいた。
そして、そのノーザル鉱山で悲劇が起きた。殺意のこもったトラップ、暗殺部隊が差し向けられ、新入生を守った先輩三人と二人の同級生が命を奪われた。そして、一人が行方を眩ませた。
ただ、消えた一人が敵組織に攫われたとは思えなかった。行方を眩ませた者こそがノーザル鉱山へと行こうと提案し、強行した者だったから。
生きて還った五人の生徒はそれから考えた。それでも今では時間が経ちすぎてその話題が出ることは自然と無い。今はもう後輩も居る。同級生達とこの話をすることは自然と無くなった。それでも、グランディアは常に狙われ続けている。
それだけが確か。そして、その事件に巻き込まれ、一緒に生きて還ったのはヴェイルと言う生徒だけ。彼はもうその件については諦めており、大した反応は見せない。もう、強い怨念を抱くのはヨルのみとなった。
そしてようやく掴んだ『ロータス』という組織の実態。二年前より突如現れた暗躍組織。あの事件とも何か関係しているに違いないのだと確信している。
「それでもなぁ、僕は特に恨み辛みなんて無いし、わざわざ厄介事に足は突っ込む気は無いんだよね。そういうのって結構怖いし」
地面に座り込むヨルは見上げる。そこに居るのは顔色ひとつ変えない少年。思わず発する。
「こんなに話させておいて!?冒険者としてどうこうの前にどこまで薄情者なのよ!?」
「でも、僕もロータスは気になっている奴が一人居るんだ。それまでなら共同で探ってやっても良い」
そう、それはモーリーとガヴァルド。この世界の国や種族、全てが奴の魔の手に落ちればこの世界へ転生してきた意味が無くなる。嘉武的にも絶対に阻止すべき存在なのだ。
突然の切り返しに絶句するヨル。そして、嘉武が言う。
「そういうことで、僕は美濃嘉武。皆からは嘉武と呼ばれている。しばらくの間ローダルヘインに滞在する予定だ、よろしく頼むよ、ヨル・シュナルダス」
手を差し出し、地面に座り込んでいるヨルを引き起こした。
「ヨルでいいわ・・・全く、回りくどいんだから」
そう言ってヨルは下半身に付着した砂埃を叩いた。
グランディア学園内部には『ロータス』の息のかかったものが恐らく複数潜伏している。幹部であるかは分からないが、幹部と繋がっているのは最低でも考えられる。教師陣に潜伏している可能性も有るのだが、ここまで全ては生徒による仕業である。
その物の名前や特徴を口に出そうとすると声帯が血切れ、声を発する事が出来ない。それ故に示唆さえも行えない。
先日の生徒二人は元より素行が悪く、『ロータス』から声がかけられてもおかしくない。そんな人に忠告しようとしていたらしい。既に誘いを受けている可能性もあった。
ここまではヨル単独で確認出来た。しかも、他のSクラスの者もこの事について気が付いているだろうとの事。だが、今回はあくまでも独断での行動であると主張していた。
「だから、今までもそもそも殺してなんかないしっ、脅して情報引き出そうとしてただけなのにっ!」
「だったら紛らわしいんだよ。でも僕の事は殺しに来てたじゃないか」
「硬すぎるのよ!あなたの耐久はどうなってるの!?そんなに優秀ならなんでグランディアに居なかったのよ!?」
「まあ、外界に触れる機会が無かっただけだよ」
確かに目の前の少年は現役Sクラスの一人に勝利した。見たくれはどこにでも居そうな一般人的冒険者。それでも異常な力を持つアンビバレントな存在。それ程の人材が何処をほっつき歩いていたというのか。今までどこで少年が隠されていたのか。信じられない程の実力に、どこか機関の秘密なのだろうかとヨルは思考してしまう。
(まさか、伝説の・・・冒険者の・・・、いや、無いか・・・こんな普通な感じじゃ・・・)
でも良い、自分には自分の討つべき仇が居る。ヨルは嘉武を利用しようと企んだ。
「あなたも『ロータス』を知っているんでしょう?このままじゃディオーネ全土が危うくなってしまうかも知れない・・・。手遅れになってからでは遅いのよ」
「ああ、僕も成り行きで『ロータス』を潰せたら良いかなって思ってるよ」
「・・・中途半端な覚悟ね、あなたには冒険者としての矜恃とか無いわけ・・・?」
ずっと腑抜けた返事しか返さない嘉武にヨルは呆れる。それでも、ヨルとの目的は同じ。
「悪いけど、僕はこの世界をもっと知ろうと思ってるんだ。その邪魔をするって言うなら『ロータス』であろうと潰してやろうって考えなだけだよ」
少年の様子は本気に見えた。
「それなら、協力して欲しいことがあるの」
ヨルは続けた。
二年前、ヨルは王立グランディア学園へと入学した。クラスメイトの先輩達は皆仲が良く、冒険者や騎士団の隔たりもなく共闘して力を付けて磨いていた。
ある日、新入生歓迎を兼ねて皆でノーザル鉱山へと行った。そこではアルマジェイト鉱石と言う高価な鉱石が取れるのだが、Sクラス程度の実力が無ければ採掘が難しい。
発掘事態に力を要する他、時折、大型の魔獣が出没するのだ。新入生がいては危険だと言う先輩も居たのだが、一人、どうしても鉱石へ行き新入生へも力を示したいと言う先輩がいた。
そして、そのノーザル鉱山で悲劇が起きた。殺意のこもったトラップ、暗殺部隊が差し向けられ、新入生を守った先輩三人と二人の同級生が命を奪われた。そして、一人が行方を眩ませた。
ただ、消えた一人が敵組織に攫われたとは思えなかった。行方を眩ませた者こそがノーザル鉱山へと行こうと提案し、強行した者だったから。
生きて還った五人の生徒はそれから考えた。それでも今では時間が経ちすぎてその話題が出ることは自然と無い。今はもう後輩も居る。同級生達とこの話をすることは自然と無くなった。それでも、グランディアは常に狙われ続けている。
それだけが確か。そして、その事件に巻き込まれ、一緒に生きて還ったのはヴェイルと言う生徒だけ。彼はもうその件については諦めており、大した反応は見せない。もう、強い怨念を抱くのはヨルのみとなった。
そしてようやく掴んだ『ロータス』という組織の実態。二年前より突如現れた暗躍組織。あの事件とも何か関係しているに違いないのだと確信している。
「それでもなぁ、僕は特に恨み辛みなんて無いし、わざわざ厄介事に足は突っ込む気は無いんだよね。そういうのって結構怖いし」
地面に座り込むヨルは見上げる。そこに居るのは顔色ひとつ変えない少年。思わず発する。
「こんなに話させておいて!?冒険者としてどうこうの前にどこまで薄情者なのよ!?」
「でも、僕もロータスは気になっている奴が一人居るんだ。それまでなら共同で探ってやっても良い」
そう、それはモーリーとガヴァルド。この世界の国や種族、全てが奴の魔の手に落ちればこの世界へ転生してきた意味が無くなる。嘉武的にも絶対に阻止すべき存在なのだ。
突然の切り返しに絶句するヨル。そして、嘉武が言う。
「そういうことで、僕は美濃嘉武。皆からは嘉武と呼ばれている。しばらくの間ローダルヘインに滞在する予定だ、よろしく頼むよ、ヨル・シュナルダス」
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