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夏休みまでにしておかなければならない事
観覧車ってカップルがキスする為の乗り物だと思うのは偏見だろうか?
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俺と岩橋さんはコーヒーカップから降りたんだが、さて何と声をかければ良いのだろう。
『怖かったね』 ……絶叫マシーンかよ。
『楽しかったね』 ……楽しかったのは俺だけかもしれない。
『岩橋さんと密着できて嬉しかったよ』 ……いや、それは絶対言っちゃダメだろ。
言葉選びに頭を悩ませる俺だったが、俺と岩橋さんの間に流れる微妙な空気を破ったのは意外な事に岩橋さんだった。
「ごめんなさい、迷惑かけちゃって……」
うわっ、また謝られちまったよ。そもそも迷惑どころか、俺は思いっきり嬉しかったんだけど。やっぱり岩橋さん、俺と密着しちゃって恥ずかしいんだろうな、気まずいんだろうな……俺が岩橋さんの立場だったらダッシュで逃げてしまうかもしれない。
俺の頭に絶望の二文字が浮かんだ。だが、その二文字は一瞬にして『希望』と言う二文字に変わった。
「でも、楽しかった。また一緒に乗ってくれる?」
乗る! 乗ります! 何なら今すぐにでも。いや、落ち着け俺。岩橋さんに『もっとはしゃごうよ』と言ったが、はしゃぐにも限度ってモンがあるぞ。
俺は小躍りしたい気持ちを抑えてポケットからくしゃくしゃになった園内マップを取り出して広げた。
「もちろん! じゃあ、次は何に乗ろうか?」
俺が言うと、岩橋さんは嬉しそうに俺が手にしている園内マップを覗き込んだ。同時に俺も岩橋さんが乗れそうなアトラクションを探したのだが、コーヒーカップ程度のスピードで慌てて帽子が飛ばされない様に押さえる岩橋さんだ。スピードが出るアトラクションは全て却下だ。と、なるとメリーゴーランドとか観覧車ぐらいか……って、観覧車!?
観覧車と言えばカップルがキスをする為のアトラクションだ。えっ、違う? だって、男女が密室で二人っきりなんだぜ。ま、まさかキス以上の事をしようってんじゃ無いだろうな? そんなの、彼女いない歴=年齢の俺には想像すら出来なかったぜ。
いやいや、次にドコに行くか、何に乗るかは俺が決める事じゃ無い。岩橋さんに決めさせてあげないと。
「どうする?」
優しく聞いた俺に岩橋さんは少し考える様な仕草の後、園内マップの一点を指差して小さな声で言った。
「観覧車に乗りたいな」
来たよ、来ちゃったよ。麻雀で言えばリーチ一発高めってヤツだ。岩橋さん、わかってるのかな? 俺と二人で観覧車に乗るって事は、俺と密室で二人っきりになるって事なんだぜ。それとも岩橋さんにはそれだけの覚悟があるって事なのか……なんて、俺の考え過ぎだろうな。
俺と岩橋さんは園内マップを頼りに観覧車のある方へと歩いた。観覧車はGSJの中でも一番背の高いアトラクションだ。暫く歩くとすぐにその姿を現した。
「すごーい、大きいね」
岩橋さんのテンションが少し上がったみたいだ。俺が腕時計をちらっと見ると、和彦達と別れてから三十分ってところだ。観覧車って一周何分ぐらいで回るんだろう?
「行こっ、加藤君!」
さすがに今度は駆け出しこそしなかったが、岩橋さんは凄く楽しそうに歩く速度を速めた。歩く速度を速めたと言っても所詮は女の子の歩く速さだ、置いて行いかれる訳は無いのだが、どうせなら手を取って欲しかったな……って、何を他力本願な事を言ってるんだよ俺は。自分から攻めるのが男ってモンじゃねーか。
だが、もちろん俺にそんな勇気がある筈が無い。とりあえず足を速めて岩橋さんと並んで歩いた。あと数センチ手を伸ばす事が出来無い自分の腑甲斐無さを情けなく思いながら。
観覧車も少し並べばすぐに乗れそうな雰囲気だった。それを確認した俺の頭をコーヒーカップの時と同じく一つの問題が悩ませた。
今回もシンプルな二択問題だ。一つ目の選択肢は『隣に座る』そしてもう一つの選択肢は『向かい合って座る』だ。
もちろん隣に座りたい。できればさっきの様に密着して。だが、そんな勇気があればとっくに手ぐらい握ってるって。
さてどうしたものか。この際俺が先にゴンドラに乗り込んで、岩橋さんに座る場所を選んでもらうか? いや、それはダメだ。男として恥ずかし過ぎる。やはりココはレディファーストで岩橋さんに先に乗ってもらわないとな。
いよいよ次にゴンドラに乗るのは俺と岩橋さんとなった。係員がドアを開け、先客を降ろすと、まず、岩橋さんをゴンドラに乗ってもらった。さあ、問題はココからだ。岩橋さんが二人並んで座れるベンチシートの真ん中あたりに座れば悩む事は無い。向かいに座るしか無いからな。また、ベンチシートの手前つまり扉側に座っても俺は向かいに座るしか無い。岩橋さんの前を横切って隣に座るなんて芸当は俺には到底無理。だが、もしベンチシートの奥側に座ったら……
① 向かい側の手前、つまり対角線上に座る。
② 向かい側の奥、つまり正面に座る。
③ 隣に座る。
おい、選択肢が増えてるじゃないか。二択じゃ無かったのかよ! しかも①②③と数字が大きくなるに連れて難易度が高くなってるし。もちろん俺の希望は③なんだけどな。
『怖かったね』 ……絶叫マシーンかよ。
『楽しかったね』 ……楽しかったのは俺だけかもしれない。
『岩橋さんと密着できて嬉しかったよ』 ……いや、それは絶対言っちゃダメだろ。
言葉選びに頭を悩ませる俺だったが、俺と岩橋さんの間に流れる微妙な空気を破ったのは意外な事に岩橋さんだった。
「ごめんなさい、迷惑かけちゃって……」
うわっ、また謝られちまったよ。そもそも迷惑どころか、俺は思いっきり嬉しかったんだけど。やっぱり岩橋さん、俺と密着しちゃって恥ずかしいんだろうな、気まずいんだろうな……俺が岩橋さんの立場だったらダッシュで逃げてしまうかもしれない。
俺の頭に絶望の二文字が浮かんだ。だが、その二文字は一瞬にして『希望』と言う二文字に変わった。
「でも、楽しかった。また一緒に乗ってくれる?」
乗る! 乗ります! 何なら今すぐにでも。いや、落ち着け俺。岩橋さんに『もっとはしゃごうよ』と言ったが、はしゃぐにも限度ってモンがあるぞ。
俺は小躍りしたい気持ちを抑えてポケットからくしゃくしゃになった園内マップを取り出して広げた。
「もちろん! じゃあ、次は何に乗ろうか?」
俺が言うと、岩橋さんは嬉しそうに俺が手にしている園内マップを覗き込んだ。同時に俺も岩橋さんが乗れそうなアトラクションを探したのだが、コーヒーカップ程度のスピードで慌てて帽子が飛ばされない様に押さえる岩橋さんだ。スピードが出るアトラクションは全て却下だ。と、なるとメリーゴーランドとか観覧車ぐらいか……って、観覧車!?
観覧車と言えばカップルがキスをする為のアトラクションだ。えっ、違う? だって、男女が密室で二人っきりなんだぜ。ま、まさかキス以上の事をしようってんじゃ無いだろうな? そんなの、彼女いない歴=年齢の俺には想像すら出来なかったぜ。
いやいや、次にドコに行くか、何に乗るかは俺が決める事じゃ無い。岩橋さんに決めさせてあげないと。
「どうする?」
優しく聞いた俺に岩橋さんは少し考える様な仕草の後、園内マップの一点を指差して小さな声で言った。
「観覧車に乗りたいな」
来たよ、来ちゃったよ。麻雀で言えばリーチ一発高めってヤツだ。岩橋さん、わかってるのかな? 俺と二人で観覧車に乗るって事は、俺と密室で二人っきりになるって事なんだぜ。それとも岩橋さんにはそれだけの覚悟があるって事なのか……なんて、俺の考え過ぎだろうな。
俺と岩橋さんは園内マップを頼りに観覧車のある方へと歩いた。観覧車はGSJの中でも一番背の高いアトラクションだ。暫く歩くとすぐにその姿を現した。
「すごーい、大きいね」
岩橋さんのテンションが少し上がったみたいだ。俺が腕時計をちらっと見ると、和彦達と別れてから三十分ってところだ。観覧車って一周何分ぐらいで回るんだろう?
「行こっ、加藤君!」
さすがに今度は駆け出しこそしなかったが、岩橋さんは凄く楽しそうに歩く速度を速めた。歩く速度を速めたと言っても所詮は女の子の歩く速さだ、置いて行いかれる訳は無いのだが、どうせなら手を取って欲しかったな……って、何を他力本願な事を言ってるんだよ俺は。自分から攻めるのが男ってモンじゃねーか。
だが、もちろん俺にそんな勇気がある筈が無い。とりあえず足を速めて岩橋さんと並んで歩いた。あと数センチ手を伸ばす事が出来無い自分の腑甲斐無さを情けなく思いながら。
観覧車も少し並べばすぐに乗れそうな雰囲気だった。それを確認した俺の頭をコーヒーカップの時と同じく一つの問題が悩ませた。
今回もシンプルな二択問題だ。一つ目の選択肢は『隣に座る』そしてもう一つの選択肢は『向かい合って座る』だ。
もちろん隣に座りたい。できればさっきの様に密着して。だが、そんな勇気があればとっくに手ぐらい握ってるって。
さてどうしたものか。この際俺が先にゴンドラに乗り込んで、岩橋さんに座る場所を選んでもらうか? いや、それはダメだ。男として恥ずかし過ぎる。やはりココはレディファーストで岩橋さんに先に乗ってもらわないとな。
いよいよ次にゴンドラに乗るのは俺と岩橋さんとなった。係員がドアを開け、先客を降ろすと、まず、岩橋さんをゴンドラに乗ってもらった。さあ、問題はココからだ。岩橋さんが二人並んで座れるベンチシートの真ん中あたりに座れば悩む事は無い。向かいに座るしか無いからな。また、ベンチシートの手前つまり扉側に座っても俺は向かいに座るしか無い。岩橋さんの前を横切って隣に座るなんて芸当は俺には到底無理。だが、もしベンチシートの奥側に座ったら……
① 向かい側の手前、つまり対角線上に座る。
② 向かい側の奥、つまり正面に座る。
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おい、選択肢が増えてるじゃないか。二択じゃ無かったのかよ! しかも①②③と数字が大きくなるに連れて難易度が高くなってるし。もちろん俺の希望は③なんだけどな。
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