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騎士の国ルフト陥落
ルフトの現在
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翌日、ソルドはルフトと呼ばれていた国に出向いた。素性を隠す為にボロボロのマントを頭から被り、流れの旅人を装って。
「こいつは意外だな」
ソルドの頭にはガイザスに虐げられているルフトの人々の姿があったのだが、それは思い過ごしだった。見える景色もほとんど変わっていない。町中歩き回って日が暮れてきた頃、一軒のバーの看板に灯りが灯っているのが見えた。ソルドが入ってみると、旅人の姿が珍しいのか酔客達が話しかけてきた。その旅人の正体が『ルフトの英雄』だと夢にも思わずに。
「兄ちゃん、旅の人かい?」
「ああ。ルフトがガイザスに敗戦したって聞いて足を延ばしてみたんだが、戦争に負けた直後だとは思えないな」
それが現在のルフトを見たソルドの正直な感想だった。すると酔客の一人が大仰に声を上げた。
「だろ。俺達もびっくりよ」
「びっくり? 何に?」
ソルドが尋ねると酔客達は口々に喋り出した。
「ガイザス軍に王城が燃やされた後、三日ばかりはヒルロンとか言うガイザスのゴブリン王子が好き放題やりやがってルフトは終わりだって思ったんだけどな」
「何かガイザスの副官とか言うヤツがソイツ等をとっちめてくれたんだよな」
「ああ。たいしたモンだ。ゴブリン王子とは言え王子は王子。ソレを国に帰らせたんだもんな」
ありがたい事に酔客達はどんどん情報を提供してくれる……頼んでもいないのに。うんうんと頷きながら耳を傾けるソルドに気を良くした酔客達の口は止まらない。溜まっていたものを吐き出すかの様に詳しい話をソルドに聞かせた。
「今じゃ政権がガイザスに変わっただけで、俺たちの生活は何も変わってないんだよ」
「ガイザスは武闘派だって聞いてたから、乱暴な奴らが街で好き放題するんじゃないかって思ってたんだけどな」
「ガイザスに忠誠を誓うなら今までと同じ生活は約束するってよ」
酔客達の話を聞いてソルドは困惑した。話に聞いていたガイザスは戦乱を続ける小さな国をひとつひとつ武力で屈服させてひとつの国としてまとめ上げたというバリバリの武闘派だ。ルフトも恐怖政治の犠牲にされるものとばかり思っていたのだがそうでは無かったのか。まあ、何にせよルフトの国民が虐げられる事無く暮らしているのを見て少しほっとしたのが救いではあった。
「そうか……いろいろ聞かせてくれてあんがとな」
ソルドはバーを出て、また町をぶらぶら歩いて見て回った。町では先程の酔客達が言っていた通り、平穏な日常の生活が営まれている。
『王が変っても国民の生活は変わら無い……か。じゃあ、俺のやろうとしている事は意味が無いのかもしれない』
ソルドの胸にそんな思いが浮かび上がってくる。
『ならいっそ、ルーク様の記憶が戻らない方が平穏に暮らせるのではないか? 国民もルーク様も……』
『いや、それはルーク様の記憶が戻ら無い事に胡座をかいた歪んだ平穏でしかない。やはりルーク様の意志を尊重しなければ……国民を巻き込む様な事はしたく無いが……』
いくら考えても答えなど出ないままに町を歩くソルドに突然声がかけられた。
「こいつは意外だな」
ソルドの頭にはガイザスに虐げられているルフトの人々の姿があったのだが、それは思い過ごしだった。見える景色もほとんど変わっていない。町中歩き回って日が暮れてきた頃、一軒のバーの看板に灯りが灯っているのが見えた。ソルドが入ってみると、旅人の姿が珍しいのか酔客達が話しかけてきた。その旅人の正体が『ルフトの英雄』だと夢にも思わずに。
「兄ちゃん、旅の人かい?」
「ああ。ルフトがガイザスに敗戦したって聞いて足を延ばしてみたんだが、戦争に負けた直後だとは思えないな」
それが現在のルフトを見たソルドの正直な感想だった。すると酔客の一人が大仰に声を上げた。
「だろ。俺達もびっくりよ」
「びっくり? 何に?」
ソルドが尋ねると酔客達は口々に喋り出した。
「ガイザス軍に王城が燃やされた後、三日ばかりはヒルロンとか言うガイザスのゴブリン王子が好き放題やりやがってルフトは終わりだって思ったんだけどな」
「何かガイザスの副官とか言うヤツがソイツ等をとっちめてくれたんだよな」
「ああ。たいしたモンだ。ゴブリン王子とは言え王子は王子。ソレを国に帰らせたんだもんな」
ありがたい事に酔客達はどんどん情報を提供してくれる……頼んでもいないのに。うんうんと頷きながら耳を傾けるソルドに気を良くした酔客達の口は止まらない。溜まっていたものを吐き出すかの様に詳しい話をソルドに聞かせた。
「今じゃ政権がガイザスに変わっただけで、俺たちの生活は何も変わってないんだよ」
「ガイザスは武闘派だって聞いてたから、乱暴な奴らが街で好き放題するんじゃないかって思ってたんだけどな」
「ガイザスに忠誠を誓うなら今までと同じ生活は約束するってよ」
酔客達の話を聞いてソルドは困惑した。話に聞いていたガイザスは戦乱を続ける小さな国をひとつひとつ武力で屈服させてひとつの国としてまとめ上げたというバリバリの武闘派だ。ルフトも恐怖政治の犠牲にされるものとばかり思っていたのだがそうでは無かったのか。まあ、何にせよルフトの国民が虐げられる事無く暮らしているのを見て少しほっとしたのが救いではあった。
「そうか……いろいろ聞かせてくれてあんがとな」
ソルドはバーを出て、また町をぶらぶら歩いて見て回った。町では先程の酔客達が言っていた通り、平穏な日常の生活が営まれている。
『王が変っても国民の生活は変わら無い……か。じゃあ、俺のやろうとしている事は意味が無いのかもしれない』
ソルドの胸にそんな思いが浮かび上がってくる。
『ならいっそ、ルーク様の記憶が戻らない方が平穏に暮らせるのではないか? 国民もルーク様も……』
『いや、それはルーク様の記憶が戻ら無い事に胡座をかいた歪んだ平穏でしかない。やはりルーク様の意志を尊重しなければ……国民を巻き込む様な事はしたく無いが……』
いくら考えても答えなど出ないままに町を歩くソルドに突然声がかけられた。
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