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デイブ、剣技の稽古デビューはお城で!?
ソルドとドルフのガチ勝負
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気合と共にドルフが踏み込んで斬りかかるとソルドは僅かに身を躱し、剣で防御した。ドルフは受けられた剣を押し込まずにすぐさま引いて次の攻撃に繋げるが、またも受けられてしまう。
距離を取ろうとドルフが一歩飛び下がるとソルドは併せて踏み込み、その勢いのままに剣を振る。しかしドルフは危なげなく防御し、すぐに返し技を繰り出す。それを余裕の表情で受けては返すソルド。
鉄と鉄が激しくぶつかり合う音が途切れること無く響く。そんなソルドとドルフの激しい打ち合いを目の当たりにし、デイブが思わず言葉を漏らした。
「あれ、鉄の剣でやってますよね」
そう、稽古での打ち合いは木刀でだったが、今ソルドとドルフは鉄の剣で打ち合っているのだ。刃が付いていなくても鉄の棒で殴り合っているのと同じ、一歩間違えば生命に関わる。だがステラは涼しい顔で言った。
「ええ。いつもの事ですわ」
「怪我したりしないんですか?」
「大丈夫ですよ。お互い安全な場所しか狙ってませんから」
さっきの稽古の時とは桁違いの速さで打ち合う二人に圧倒されるデイブに対し、ステラは笑顔を絶やさない。すると激しく打ち合っていた二人は一旦距離を取った。
「そろそろ終わりですね」
ステラが口にすると同時に二人が一足飛びに距離を詰め、剣を振り上げた。ほんの僅かに間合いの長いドルフが一瞬早く剣を振り下ろすと、それに反応したソルドは剣で受け、ドルフの太刀筋を変えると反撃の一閃。飛び退いてかろうじて避けるドルフにソルドが飛び込んで追撃を加えるが、剣で防御され、二人の剣はクロスして拮抗して動かなくなった。
「はいはい、そこまでにしましょうか」
そこにステラがポンポンと手を叩きながら割って入った。
「また引き分けか」
「ステラ様に止められたらしょうがねぇよな」
ソルドとドルフが剣を収め、張り詰めていた空気が一気に緩んだ。そしてドルフがデイブを呼び、握っていた剣を渡した。
「今日のお土産だ」
デイブは受け取った剣をじっと見つめた。ソルドとの打ち合いで刀身は傷だらけで所々欠けている部分もある。
「中古品かよ。ドルフもセコイなぁ。どうせなら新品くれってんだ。なぁ、デイブ」
ソルドが笑いながらちゃちゃを入れた。だがデイブは首を横に振り、ニコリと微笑んだ。
「いえ、コレが良いです。ドルフさんがソルドさんと実際に打ち合ったこの剣が」
「おいおい、俺達が打ち合った剣なんていくらでも転がってるぞ」
ソルドが呆れた顔で言うとステラがデイブの言葉の意味を説明した。
「ソルドさんはわかってませんね。デイブさんにとってあなた方は憧れの存在なんですよ。その二人が実際に打ち
合ったという点でその剣はデイブさんにとって価値があるのですよ」
「そうか。ま、思い出の品としては良いかもしれんな。だがデイブ、その剣を宝物になんかしてちゃダメだぞ」
「そうだな。その剣は練習に使い倒してくれよ」
「はいっ」
ソルドとドルフの言葉にデイブが嬉しそうに答えると、背後から声が聞こえた。
「うむ、良い返事だ。頑張ってドルフを追い越してくれたまえ」
「はいっ頑張ります!……って、ゼクス様!?」
デイブに声をかけたのはゼクスだった。王の登場にデイブはピンと背筋を伸ばして直立不動となってしまった。
「おいおいデイブ君、そう固くならないで」
ゼクスは笑いながら言うが、一般庶民のデイブに王を前にして固くなるなと言うのは無理な注文だ。するとステラが困った顔で口を開いた。
「お父様、私達があまり長居していれば皆が緊張します」
周囲を見ればデイブを始め、訓練で疲れきった衛兵達も直立不動で王の一挙一動を注視している。正にステラの言う通りだ。
「そうか。なら仕方がない。私達は席を外すとするか。皆、ご苦労だった。アルテナの平和は君達にかかっている。これからもよろしく頼むぞ」
「では皆さんお疲れ様でした。これで私も失礼しますね」
ゼクスが名残惜しそうにその場を離れると、ステラも一礼してゼクスの後を追う様に宮殿へと消えて行った。
*
「んじゃ、後片付けして帰っか」
ソルドの言葉に衛兵達は稽古で踏み荒らされた土を馴らし、草木が被った土埃を払って綺麗にし、中庭は元通り美しくなった。それを確認したソルドはルーク達に言った。
「メシ食って帰ろうぜ」
朝から昼過ぎまでぶっ続けのハードな稽古。ルークもデイブもくたくただった。
「ボク、食欲無いよぉ……」
「俺もっす……」
情けない事を言うルークとデイブをソルドは一喝した。
「こんぐらいの稽古で何言ってんだ。メシ食わないと強くなれねぇぞ。奢ってやっからとっとと来い。もちろんミレアもな」
するとドルフが割り込んできた。
「俺は?」
「お前、俺に一本も入れて無ぇじゃねぇか」
一本も入れて無いのはソルドも同じだが、そんな事はこの二人にはさしたる問題では無い様だ。
「カタい事言ってんじゃねぇよ。こないだ奢ったじゃねぇか」
「わかったわかった。コイツ等の前でそんな話すんじゃねぇよ」
『カタい事言うな』そして『こないだ奢った』この二つのパワーワードに仕方が無いといった体で言うソルドだが、もちろんドルフも最初から誘うつもりだった……と言うより誘うまでも無く一緒に来るだろうと思っていたのは言うまでも無い。するとドルフが満足そうに言った。
「よっしゃ、行こうぜ。良い店知ってんだ」
距離を取ろうとドルフが一歩飛び下がるとソルドは併せて踏み込み、その勢いのままに剣を振る。しかしドルフは危なげなく防御し、すぐに返し技を繰り出す。それを余裕の表情で受けては返すソルド。
鉄と鉄が激しくぶつかり合う音が途切れること無く響く。そんなソルドとドルフの激しい打ち合いを目の当たりにし、デイブが思わず言葉を漏らした。
「あれ、鉄の剣でやってますよね」
そう、稽古での打ち合いは木刀でだったが、今ソルドとドルフは鉄の剣で打ち合っているのだ。刃が付いていなくても鉄の棒で殴り合っているのと同じ、一歩間違えば生命に関わる。だがステラは涼しい顔で言った。
「ええ。いつもの事ですわ」
「怪我したりしないんですか?」
「大丈夫ですよ。お互い安全な場所しか狙ってませんから」
さっきの稽古の時とは桁違いの速さで打ち合う二人に圧倒されるデイブに対し、ステラは笑顔を絶やさない。すると激しく打ち合っていた二人は一旦距離を取った。
「そろそろ終わりですね」
ステラが口にすると同時に二人が一足飛びに距離を詰め、剣を振り上げた。ほんの僅かに間合いの長いドルフが一瞬早く剣を振り下ろすと、それに反応したソルドは剣で受け、ドルフの太刀筋を変えると反撃の一閃。飛び退いてかろうじて避けるドルフにソルドが飛び込んで追撃を加えるが、剣で防御され、二人の剣はクロスして拮抗して動かなくなった。
「はいはい、そこまでにしましょうか」
そこにステラがポンポンと手を叩きながら割って入った。
「また引き分けか」
「ステラ様に止められたらしょうがねぇよな」
ソルドとドルフが剣を収め、張り詰めていた空気が一気に緩んだ。そしてドルフがデイブを呼び、握っていた剣を渡した。
「今日のお土産だ」
デイブは受け取った剣をじっと見つめた。ソルドとの打ち合いで刀身は傷だらけで所々欠けている部分もある。
「中古品かよ。ドルフもセコイなぁ。どうせなら新品くれってんだ。なぁ、デイブ」
ソルドが笑いながらちゃちゃを入れた。だがデイブは首を横に振り、ニコリと微笑んだ。
「いえ、コレが良いです。ドルフさんがソルドさんと実際に打ち合ったこの剣が」
「おいおい、俺達が打ち合った剣なんていくらでも転がってるぞ」
ソルドが呆れた顔で言うとステラがデイブの言葉の意味を説明した。
「ソルドさんはわかってませんね。デイブさんにとってあなた方は憧れの存在なんですよ。その二人が実際に打ち
合ったという点でその剣はデイブさんにとって価値があるのですよ」
「そうか。ま、思い出の品としては良いかもしれんな。だがデイブ、その剣を宝物になんかしてちゃダメだぞ」
「そうだな。その剣は練習に使い倒してくれよ」
「はいっ」
ソルドとドルフの言葉にデイブが嬉しそうに答えると、背後から声が聞こえた。
「うむ、良い返事だ。頑張ってドルフを追い越してくれたまえ」
「はいっ頑張ります!……って、ゼクス様!?」
デイブに声をかけたのはゼクスだった。王の登場にデイブはピンと背筋を伸ばして直立不動となってしまった。
「おいおいデイブ君、そう固くならないで」
ゼクスは笑いながら言うが、一般庶民のデイブに王を前にして固くなるなと言うのは無理な注文だ。するとステラが困った顔で口を開いた。
「お父様、私達があまり長居していれば皆が緊張します」
周囲を見ればデイブを始め、訓練で疲れきった衛兵達も直立不動で王の一挙一動を注視している。正にステラの言う通りだ。
「そうか。なら仕方がない。私達は席を外すとするか。皆、ご苦労だった。アルテナの平和は君達にかかっている。これからもよろしく頼むぞ」
「では皆さんお疲れ様でした。これで私も失礼しますね」
ゼクスが名残惜しそうにその場を離れると、ステラも一礼してゼクスの後を追う様に宮殿へと消えて行った。
*
「んじゃ、後片付けして帰っか」
ソルドの言葉に衛兵達は稽古で踏み荒らされた土を馴らし、草木が被った土埃を払って綺麗にし、中庭は元通り美しくなった。それを確認したソルドはルーク達に言った。
「メシ食って帰ろうぜ」
朝から昼過ぎまでぶっ続けのハードな稽古。ルークもデイブもくたくただった。
「ボク、食欲無いよぉ……」
「俺もっす……」
情けない事を言うルークとデイブをソルドは一喝した。
「こんぐらいの稽古で何言ってんだ。メシ食わないと強くなれねぇぞ。奢ってやっからとっとと来い。もちろんミレアもな」
するとドルフが割り込んできた。
「俺は?」
「お前、俺に一本も入れて無ぇじゃねぇか」
一本も入れて無いのはソルドも同じだが、そんな事はこの二人にはさしたる問題では無い様だ。
「カタい事言ってんじゃねぇよ。こないだ奢ったじゃねぇか」
「わかったわかった。コイツ等の前でそんな話すんじゃねぇよ」
『カタい事言うな』そして『こないだ奢った』この二つのパワーワードに仕方が無いといった体で言うソルドだが、もちろんドルフも最初から誘うつもりだった……と言うより誘うまでも無く一緒に来るだろうと思っていたのは言うまでも無い。するとドルフが満足そうに言った。
「よっしゃ、行こうぜ。良い店知ってんだ」
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