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目覚め
決断
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「ソルド!」
名前を呼んでルークはソルドを揺り起こした。
「……何だよ、外はまだ真っ暗じゃないか。怖い夢でも見たか?」
ソルドは子供に言う様な口ぶりでルークに言いながらも、大事な事に気付いた。ルークが『兄さん』では無く『ソルド』と呼んだのだ。それだけでソルドは全てを悟った。
「……そうか、思い出しちまったか」
頭をぼりぼり掻きながら残念そうに言うソルドにルークは頭を下げ、涙ながらに感謝の意を伝えた。
「今までありがとう。ボクは何も知らずにのうのうと学園生活を送っていた……」
ルークの言葉を聞き、ソルドの目も変わった。兄の目から君主を見る騎士の目だ。
「それは私の望みでもありましたから」
口調も本来の丁寧なものに戻っている。だが、それはルークも同じで王子たる口調でソルドに詫びを入れた。
「本当にすまない」
尚も頭を下げるルークをソルドは慈しむ様な目で見ながらベッドから出ると恭しく片膝を付いて言った。
「ルーク様、顔をお上げください。全ては私が勝手にしでかしたこと。」
「『しでかした』だなんてそんな……ソルドには感謝するばかりだよ」
ルークは本当に心からソルドに感謝してくれている。ルークの口調からそう感じながらソルドはいつぞや見てきたルフトの現状をルークに伝えた。そしてワイン達がルークの記憶が戻るのを心待ちにし、ガイザスに逆襲する準備を密かに整えている事を付け加えた。
「大事なのはこれからです。いかがなさるおつもりですか?」
ルークに尋ねるソルドの気持ちは複雑だった。もちろんルークに記憶が戻ったのは喜ばしい事だ。しかし……
ソルドの問いにルークは答えた。
「サラマンダーと契約したからボクも少しは魔法を使える様になった。すぐにでもガイザスに打って出ようと思う」
「やはりそう仰られますか……魔法学園は卒業していただきたかったのですが……」
すぐにでもガイザスに打って出ると言う事は、ソルドのルフト再興に並ぶもう一つの願いである『ルークに学生生活を楽しませる事』が叶わなくなってしまったのだ。ソルドは残念そうに言った。だが、ルークの決意は固かった。
「ソルドには感謝してもしきれない。だが、こればかりは……」
「わかりました。このソルド、どこまでもお供致します」
忠誠の意を示すソルドにルークは言った。
「ありがとう、ソルド。では、夜が明けたらルフトに出かけるとしようか。ルフトの現状も見たいしね」
ルークも気の早い男だ。するとソルドが言いにくそうな顔で言った。
「ステラ様には会われなくてよろしいので?」
ソルドの言葉にルークの胸が痛んだ。ステラには苦労をかけ、寂しい思いをさせてしまっていたのだから黙って行くのは心苦しい。だが、ステラの顔を見ると気持ちが揺らいでしまうかもしれない。そう思うとルークはステラに会うわけにはいかないのだ。
「ステラと会ったら……行けなくなっちゃうかもしれないから」
ルークが迷いを振り切る様に言った後、少し躊躇いながら恥ずかしそうにまた口を開いた。
「それから、ソルドに一つお願いがあるのだけど」
ルークは照れ臭そうな目でソルドを見ながら『命令』では無く『お願い』という言葉を口にした。
「お願い? ルーク様が私にですか?」
不思議そうな顔をのソルドにルークはおずおずと言った。
「これからもソルドの事を兄さんと呼んでも良いだろうか?」
それを聞いたソルドの目が従者の目から優しい兄の目へと戻った。
「ああ、わかったよ、ルーク」
名前を呼んでルークはソルドを揺り起こした。
「……何だよ、外はまだ真っ暗じゃないか。怖い夢でも見たか?」
ソルドは子供に言う様な口ぶりでルークに言いながらも、大事な事に気付いた。ルークが『兄さん』では無く『ソルド』と呼んだのだ。それだけでソルドは全てを悟った。
「……そうか、思い出しちまったか」
頭をぼりぼり掻きながら残念そうに言うソルドにルークは頭を下げ、涙ながらに感謝の意を伝えた。
「今までありがとう。ボクは何も知らずにのうのうと学園生活を送っていた……」
ルークの言葉を聞き、ソルドの目も変わった。兄の目から君主を見る騎士の目だ。
「それは私の望みでもありましたから」
口調も本来の丁寧なものに戻っている。だが、それはルークも同じで王子たる口調でソルドに詫びを入れた。
「本当にすまない」
尚も頭を下げるルークをソルドは慈しむ様な目で見ながらベッドから出ると恭しく片膝を付いて言った。
「ルーク様、顔をお上げください。全ては私が勝手にしでかしたこと。」
「『しでかした』だなんてそんな……ソルドには感謝するばかりだよ」
ルークは本当に心からソルドに感謝してくれている。ルークの口調からそう感じながらソルドはいつぞや見てきたルフトの現状をルークに伝えた。そしてワイン達がルークの記憶が戻るのを心待ちにし、ガイザスに逆襲する準備を密かに整えている事を付け加えた。
「大事なのはこれからです。いかがなさるおつもりですか?」
ルークに尋ねるソルドの気持ちは複雑だった。もちろんルークに記憶が戻ったのは喜ばしい事だ。しかし……
ソルドの問いにルークは答えた。
「サラマンダーと契約したからボクも少しは魔法を使える様になった。すぐにでもガイザスに打って出ようと思う」
「やはりそう仰られますか……魔法学園は卒業していただきたかったのですが……」
すぐにでもガイザスに打って出ると言う事は、ソルドのルフト再興に並ぶもう一つの願いである『ルークに学生生活を楽しませる事』が叶わなくなってしまったのだ。ソルドは残念そうに言った。だが、ルークの決意は固かった。
「ソルドには感謝してもしきれない。だが、こればかりは……」
「わかりました。このソルド、どこまでもお供致します」
忠誠の意を示すソルドにルークは言った。
「ありがとう、ソルド。では、夜が明けたらルフトに出かけるとしようか。ルフトの現状も見たいしね」
ルークも気の早い男だ。するとソルドが言いにくそうな顔で言った。
「ステラ様には会われなくてよろしいので?」
ソルドの言葉にルークの胸が痛んだ。ステラには苦労をかけ、寂しい思いをさせてしまっていたのだから黙って行くのは心苦しい。だが、ステラの顔を見ると気持ちが揺らいでしまうかもしれない。そう思うとルークはステラに会うわけにはいかないのだ。
「ステラと会ったら……行けなくなっちゃうかもしれないから」
ルークが迷いを振り切る様に言った後、少し躊躇いながら恥ずかしそうにまた口を開いた。
「それから、ソルドに一つお願いがあるのだけど」
ルークは照れ臭そうな目でソルドを見ながら『命令』では無く『お願い』という言葉を口にした。
「お願い? ルーク様が私にですか?」
不思議そうな顔をのソルドにルークはおずおずと言った。
「これからもソルドの事を兄さんと呼んでも良いだろうか?」
それを聞いたソルドの目が従者の目から優しい兄の目へと戻った。
「ああ、わかったよ、ルーク」
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