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真由美は機嫌を直してくれるのか?

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 奈緒の案内で真由美の家の前まで来た浩輔達。奈緒は男子三人を隠れさせると、インターホンを押した。

「はい……あれっ、奈緒ちゃんに真白ちゃん、どうしたの?」

 どうやら出たのは真由美の母親の様だ。

「ちょっと用事があって。真由美ちゃん、帰ってます?」

「ええ、ちょっと待ってね」

 真由美の母が答えると、奈緒は信弘を見て親指を立て、手招きした。

「じゃあ私達は隠れてるから、後は頑張って下さいよ」

「おいっ!?」

 尻込みする信弘一人を残し、今度は奈緒達が隠れた。と同時に玄関ドアが開き、真由美が顔を見せた。

「どうしたの奈緒……ノブ君!?」

 予想外の顔に真由美の動きが止まった。逆に信弘は動いた。早く声をかけないと真由美が家の中に引っ込んでしまうと思ったのだ。

「真由美、今日はゴメンな。俺、自分の事ばっか考えててよ……」

 まずは頭を下げ、素直に詫びると信弘は袋を差し出した。

「んで、お詫びの印と言ったらなんだけど、受け取ってくれ」

 キョトンとした顔の真由美に袋を押し付けると信弘は照れ臭そうに言った。

「水着、俺が選んだんだ。きっとお前に似合うと思う。だから……」

 そこまで言って信弘の言葉が止まった。言いたい事は決まってる。でも、断られるのが怖くて口に出せないのだ。

「だから?」

 黙り込んでしまった信弘に真由美がぶっきらぼうに言った。こういう時、どう言えば良いのか? 信弘は必死に頭を回転させるが、『ナンパABC~Z(以下略)』で得た知識など役に立ちそうに無い。そこで信弘は素直な気持ちをぶつけた。

「明日、九時に駅前に集合だ。無理にとは言わないけど、来てくれたら嬉しいな」

 真由美は複雑な表情を見せると「考えとくわ」と言葉を残し、家の中へと入ってしまった。

          *

「信弘先輩、頑張りましたね」

「大丈夫ですよ。真由美ちゃん、明日はきっと来ますよ」

 一仕事終えて放心状態の信弘に奈緒と真白が優しい言葉をかけると信弘は緊張の糸が切れたのか、ふらふらしながら力なく笑った。。

「ありがとう。だったら良いんだけどな」

          *

「まったく、こんなもので機嫌撮ろうなんて……」

 真由美はブツブツ言いながらも部屋で信弘から渡された袋を開けた。入っていたのは白いフリルが可愛いスカイブルーのセパレーツ。暫く眺めていた真由美はおもむろに服を脱ぎ出し、それを着けてみた。鏡の前でくるりと一回転して後ろ姿もしっかりチェックする。それは女子高生らしい爽やかな水着姿だったが、真由美はポツリと呟いた。

「お尻がちょっと気になるかな……」

 女の子特有の強迫観念にも似た自意識過剰と言うヤツだろうか。そんなに大きくない、いやそれどころか健康的で魅力的なお尻をしているというのに真由美は自分のお尻が大きいと思っている様だ。付属していたパレオを腰に巻くとグッとイメージも変わった。少し大人っぽく見える気がする。かと言って、色っぽさやセクシーさを前面に押し出したものでは無い。真由美の顔に笑みが浮かんだ。

「ノブ君、初めっからこういうのを選んでくれたら良かったのに……」

         *

 明けて日曜日、待ち合わせの駅前では浩輔・郁雄・真白・奈緒が楽しそうに話をしている中、信弘が一人浮かない顔をしていた。そう、真由美が来ていないのだ。

「振られちまったかな……」

 呟く信弘に浩輔達は「まだ時間には少し早い」とか「女の子は準備に時間がかかる」などと慰めの言葉をかけるが、信弘は暗い目をして言った。

「みんなもう集まってんだぜ。真由美以外はな……」

 とことんネガティブになってしまった信弘。間も無く時計の針は九時を指そうとしている。

「お前等だけでも行って来いよ。俺はもうちょっと待ってみるからさ」

 諦め顔で言う信弘の目に駆け足で向かって来る女の子の姿が映った。見間違える筈など無い。真由美だ。信弘の顔が急に明るくなった。

「真由美、遅かったじゃない。もしかしたら来ないんじゃないかって心配してたのよ」

 奈緒が言うと信弘はきっぱりと言い切った。

「俺はきっと来るって確信してたけどな」

「嘘つけ。さっきまでの悲愴な顔、真由美に見せたかったわよ」

「まったく強がりも大概にしとけってんだよ」

 奈緒と郁雄が息ぴったりに信弘に突っ込むが、信弘は涼しい顔で「あれ、そうだったっけ?」などと白々しい言葉を吐く。

「ごめんなさい、遅くなっちゃって」

 真由美は頭を下げる真由美に信弘はぬけぬけと言った。

「来てくれりゃ良いんだよ。さあ、みんな揃ったし行こうぜ!」

 まったく奈緒の言う通り、さっきまでの悲愴な顔を真由美に見せてやりたいものだが、みんなが笑顔になったので、ここは広い心で大目に見てやるとしよう。



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