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ハルカの補習期間が終わった日
「今日で補習も終わりだ。みんな良く頑張ったな。でも普段からしっかり勉強してたら補習なんて受けなくって良いんだからな」
先生の励まし半分・イヤミ半分の言葉を以て一週間に渡る補習期間が終わった。
「さぁて、行きますか」
ハルカは颯爽とママチャリに跨り、ペダルに足を乗せた。昨日擦りむいて出来た膝小僧の傷が突っ張って少し痛いがこれから始まる楽しい時間を考えるとこれぐらいの痛みはどうということはない。
鼻歌交じりでペダルを回し、家に着くや否やサイクルジャージに着替え、ボトルに氷とスポーツドリンクを入れてエモンダにセットし、タイヤの空気圧をチェックし、少し抜けてしまっていた分の空気を補充した。
「さっ、行こうか」
ハルカは誰にでもなく言うとヘルメットをかぶり、グローブを着けるとエモンダに跨り、走り出した。目指すはもちろん渋山峠だ。
*
昨日も走った渋山峠への道。昨日はトシヤと一緒だったが今日は一人だ。だが、昨日はママチャリだったが今日は久しぶりのロードバイク、愛車のエモンダだ。気分がアガるのは必然、そして気分と共にスピードも上がる。
熱い空気を切って走ること十数分、山はどんどん近くなり、渋山峠の麓のコンビニに着いたハルカの目に三台のロードバイクが映った。エモンダ、プリンス、リアクトだ。そしてその傍らに立っていた三人はもちろんルナとマサオ、そしてトシヤだ。ハルカが補習を受けている間、既に渋山峠を一本上っていたのだ……マサオは第二ヘアピンを抜けた勾配のキツい直線で一回足を着いてしまったが。
「おっ、ハルカちゃんの登場だぜ」
ハルカのエモンダがコンビニの駐車場に入ってきたことにいち早く気付いたマサオの声にトシヤとルナが反応して何か言おうとした。しかしその前にハルカのエモンダは三人の前までスーっと走り寄り、そして止まった。
「おまたせ。やっと補習終わったよ」
ハルカは言うと嬉しそうに笑った。
「ああ、あ疲れさん」
労うように言ったトシヤ。
「ちゃんと勉強しなくちゃダメよ。来年は補習なんて受けなくって良いようにね」
「うぐぅ……」
ちょっと厳しいことを言うルナにハルカは言葉に詰まった。するとマサオが調子に乗って偉そうに言い放った。
「まったくハルカちゃんってばダメダメなんだから。なんだったら俺が勉強、見てやろうか?」
「ばっか。何言ってんのよ、ギリギリで補習受けなくって済んだクセに」
「いやいや、ハルカちゃんこそ何言ってんだよ。補習受けずに済みゃあ良いんだよ。ギリギリだろうが紙一重だろうが」
「うぐぅ……」
「それに俺のヤマって結構当たるんだぜ。俺が補習受けなくって済んでるのが立派な証拠だ。まあ、気が向いたら言ってくれ」
調子こいてはいるが、ハルカは補習を受けなければならず、マサオは補習を免れたという事実は覆せないし、『テストのヤマが当たる』という魅力的な言葉には抗うことができない。
「そ……そうね、まあ、みんなで勉強会ってのも良いんじゃないかしら」
ハルカは顔を赤らめながら小さな声で言った。せめてもの抵抗なのだろう、『勉強会』と体裁を繕い、マサオから目を背けて。すると『勉強会』という言葉にトシヤが反応した。
「えっ、勉強会って、俺も?」
「そりゃそうでしょ。私とマサオ君、二人っきりなワケ無いじゃない」
「そりゃそうだろ、俺とハルカちゃんが二人っきりなワケ無いじゃんかよ」
トシヤが驚いたように言うとハルカとマサオが同時に声を上げた。確かにハルカとマサオが二人っきりで行動するのは想像し難い。それにトシヤ自体、『俺も?』と言いながらも勉強会のメンバーに入っていることは想定の上だったに違いない。
「そうだな。じゃあ、ルナ先輩も一緒にどうっすか?」
「えっ、私も?」
いきなり話を振られ、ルナも驚きの声を上げた。学年の違う自分にも勉強会の誘いがかかるとは。しかも誘ったのはマサオでもハルカでもなくトシヤだったのだから。
「あっ、ソレ良いっすね。ルナ先輩、ぜひ参加して下さいよ。俺一人じゃ二人も教えきれないっすよ」
トシヤのナイスな提案にマサオは身を乗り出してルナに迫った。
二年生のルナが一年生のハルカ達の勉強会に参加したところで勉学的には得るものは無い。いや、得るどころか逆に勉強を教えてやらなければならなくなり、自分の勉強の妨げになるかもしれない。だが、ここでトシヤやマサオの誘いを無下に断るほどルナは面白くない人間では無い。
「うーん、まぁ良いか。たまにはそういうのも悪くないかもね」
「よっしゃ、やったぁ! 俺ん家でやりますんで、美味しいケーキ用意しときますよ。で、いつにします?」
「何言ってんだよ、期末試験終わったばっかじゃねぇか」
鼻息を荒くしてコトを進めようとするマサオにトシヤが呆れた顔で言った。するとハルカが残念そうな顔でボソッと言った。
「私は明日でも良いんだけどね。美味しいケーキ用意してくれるってのなら」
「何バカなこと言ってるの。大事なのはケーキじゃなく勉強でしょ」
バカなことを言うハルカにルナが渋い顔をした。するとハルカは苦笑いしながらエモンダの向きを変え、言った。
「そんなコトより早く行こうよ。山が呼んでるよ!」
ハルカの言葉に釣られるようにトシヤは山の方を見た。青い空に濃い緑で覆われた山肌が映え、まさに山が誘っているかのように思えた。
「じゃあ、二本目行きますか!」
「うん! 私はまだ一本目だけどね」
トシヤの声にハルカが応え、二人は走りだした。
「やれやれ。じゃあ、俺達も行きますか」
「ええ。あ、マサオ君、二本目なんだから無理しないでね」
この会話だけを聞くと、なんだかマサオとルナとの仲が良い感じになったかのように思えるが、残念ながらそんなコトは無い。と言うか、マサオは夏休み二日目にプールに行って以来、ルナと会えていなかったりする。
「りょーかいっす」
マサオは軽く頷いて答えると走りだし、ルナも続いてスタートした。
先生の励まし半分・イヤミ半分の言葉を以て一週間に渡る補習期間が終わった。
「さぁて、行きますか」
ハルカは颯爽とママチャリに跨り、ペダルに足を乗せた。昨日擦りむいて出来た膝小僧の傷が突っ張って少し痛いがこれから始まる楽しい時間を考えるとこれぐらいの痛みはどうということはない。
鼻歌交じりでペダルを回し、家に着くや否やサイクルジャージに着替え、ボトルに氷とスポーツドリンクを入れてエモンダにセットし、タイヤの空気圧をチェックし、少し抜けてしまっていた分の空気を補充した。
「さっ、行こうか」
ハルカは誰にでもなく言うとヘルメットをかぶり、グローブを着けるとエモンダに跨り、走り出した。目指すはもちろん渋山峠だ。
*
昨日も走った渋山峠への道。昨日はトシヤと一緒だったが今日は一人だ。だが、昨日はママチャリだったが今日は久しぶりのロードバイク、愛車のエモンダだ。気分がアガるのは必然、そして気分と共にスピードも上がる。
熱い空気を切って走ること十数分、山はどんどん近くなり、渋山峠の麓のコンビニに着いたハルカの目に三台のロードバイクが映った。エモンダ、プリンス、リアクトだ。そしてその傍らに立っていた三人はもちろんルナとマサオ、そしてトシヤだ。ハルカが補習を受けている間、既に渋山峠を一本上っていたのだ……マサオは第二ヘアピンを抜けた勾配のキツい直線で一回足を着いてしまったが。
「おっ、ハルカちゃんの登場だぜ」
ハルカのエモンダがコンビニの駐車場に入ってきたことにいち早く気付いたマサオの声にトシヤとルナが反応して何か言おうとした。しかしその前にハルカのエモンダは三人の前までスーっと走り寄り、そして止まった。
「おまたせ。やっと補習終わったよ」
ハルカは言うと嬉しそうに笑った。
「ああ、あ疲れさん」
労うように言ったトシヤ。
「ちゃんと勉強しなくちゃダメよ。来年は補習なんて受けなくって良いようにね」
「うぐぅ……」
ちょっと厳しいことを言うルナにハルカは言葉に詰まった。するとマサオが調子に乗って偉そうに言い放った。
「まったくハルカちゃんってばダメダメなんだから。なんだったら俺が勉強、見てやろうか?」
「ばっか。何言ってんのよ、ギリギリで補習受けなくって済んだクセに」
「いやいや、ハルカちゃんこそ何言ってんだよ。補習受けずに済みゃあ良いんだよ。ギリギリだろうが紙一重だろうが」
「うぐぅ……」
「それに俺のヤマって結構当たるんだぜ。俺が補習受けなくって済んでるのが立派な証拠だ。まあ、気が向いたら言ってくれ」
調子こいてはいるが、ハルカは補習を受けなければならず、マサオは補習を免れたという事実は覆せないし、『テストのヤマが当たる』という魅力的な言葉には抗うことができない。
「そ……そうね、まあ、みんなで勉強会ってのも良いんじゃないかしら」
ハルカは顔を赤らめながら小さな声で言った。せめてもの抵抗なのだろう、『勉強会』と体裁を繕い、マサオから目を背けて。すると『勉強会』という言葉にトシヤが反応した。
「えっ、勉強会って、俺も?」
「そりゃそうでしょ。私とマサオ君、二人っきりなワケ無いじゃない」
「そりゃそうだろ、俺とハルカちゃんが二人っきりなワケ無いじゃんかよ」
トシヤが驚いたように言うとハルカとマサオが同時に声を上げた。確かにハルカとマサオが二人っきりで行動するのは想像し難い。それにトシヤ自体、『俺も?』と言いながらも勉強会のメンバーに入っていることは想定の上だったに違いない。
「そうだな。じゃあ、ルナ先輩も一緒にどうっすか?」
「えっ、私も?」
いきなり話を振られ、ルナも驚きの声を上げた。学年の違う自分にも勉強会の誘いがかかるとは。しかも誘ったのはマサオでもハルカでもなくトシヤだったのだから。
「あっ、ソレ良いっすね。ルナ先輩、ぜひ参加して下さいよ。俺一人じゃ二人も教えきれないっすよ」
トシヤのナイスな提案にマサオは身を乗り出してルナに迫った。
二年生のルナが一年生のハルカ達の勉強会に参加したところで勉学的には得るものは無い。いや、得るどころか逆に勉強を教えてやらなければならなくなり、自分の勉強の妨げになるかもしれない。だが、ここでトシヤやマサオの誘いを無下に断るほどルナは面白くない人間では無い。
「うーん、まぁ良いか。たまにはそういうのも悪くないかもね」
「よっしゃ、やったぁ! 俺ん家でやりますんで、美味しいケーキ用意しときますよ。で、いつにします?」
「何言ってんだよ、期末試験終わったばっかじゃねぇか」
鼻息を荒くしてコトを進めようとするマサオにトシヤが呆れた顔で言った。するとハルカが残念そうな顔でボソッと言った。
「私は明日でも良いんだけどね。美味しいケーキ用意してくれるってのなら」
「何バカなこと言ってるの。大事なのはケーキじゃなく勉強でしょ」
バカなことを言うハルカにルナが渋い顔をした。するとハルカは苦笑いしながらエモンダの向きを変え、言った。
「そんなコトより早く行こうよ。山が呼んでるよ!」
ハルカの言葉に釣られるようにトシヤは山の方を見た。青い空に濃い緑で覆われた山肌が映え、まさに山が誘っているかのように思えた。
「じゃあ、二本目行きますか!」
「うん! 私はまだ一本目だけどね」
トシヤの声にハルカが応え、二人は走りだした。
「やれやれ。じゃあ、俺達も行きますか」
「ええ。あ、マサオ君、二本目なんだから無理しないでね」
この会話だけを聞くと、なんだかマサオとルナとの仲が良い感じになったかのように思えるが、残念ながらそんなコトは無い。と言うか、マサオは夏休み二日目にプールに行って以来、ルナと会えていなかったりする。
「りょーかいっす」
マサオは軽く頷いて答えると走りだし、ルナも続いてスタートした。
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