妄想少女は鏡に願う

蒼星 創

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6話

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 公園でアヤと待ち合わせたユミは、アヤの姿を見つけると、心からの笑顔で駆け寄った。「アヤ!」ユミが呼ぶと、アヤは驚いた表情を浮かべながらも温かく応じた。「ユミ、元気になったんだね」



 二人は公園のベンチに座って語り合う。ユミは鏡の中で数日過ごしていたから当然としてアヤにとってもユミとしっかり話すのは久しぶりだった。ユミは鏡の中の世界のことは話さなかったが、アヤはユミの目に新たな輝きを感じ取り、「何かいいことでもあった?」と尋ねる。



 ユミは穏やかに微笑みながら、「うん、ちょっといろいろ考える時間があってね。大切なことに気づいたよ」と答えた。アヤはユミの言葉に何かを感じ取りながらも、詳しくは聞かずに彼女の変化を喜んだ。



 会話の中で、ユミはアヤとの友情の深さと、現実世界の人間関係の大切さを改めて感じた。ユミはアヤとの会話を楽しみ、久しぶりに心からの笑い声を上げる。ユミの心は、再会の喜びと、現実世界での生活への新たな愛着で満たされていた。



 アヤとは夕暮れまで話し、ユミは家に帰りながら、現実世界での新しい一歩を踏み出すせたことの喜びと、友情の大切さを心に刻む。鏡の中の世界での経験が、ユミをより強く成長させていた。



 ♤♥♢♣



 アヤとの再会に心を満たされたユミは、翌日久しぶりに学校へと足を運んだ。彼女にとっては長い間離れていたように感じられたが、現実世界ではただの休み明けであった。校門をくぐると、ユミは新しい目で学校の風景を見つめる。



 彼女はクラスメイトたちとの交流を再開し、彼らの顔を一人ひとり見つめると、以前は気づかなかった彼らの特徴や表情の微妙な変化に心を動かされた。「ユミ、なにか変わった?」とクラスメイトに聞かれると、「ちょっとね」と明るく笑ってみせた。



 授業が始まると、ユミは先生の話に真剣に耳を傾け、自分のノートにメモを取り始めた。彼女は授業内容に新たな関心を持ち、学ぶことの楽しさを再発見する。



 休み時間には、アヤと一緒に過ごし、二人で学校生活や将来の夢について話し合う。「ユミ、本当に変わったね」とアヤが言うと、ユミは苦笑いを浮かべ「本当に――いろいろ考えることがあったんだ」と答えた。



 学校からの帰り道、ユミは自然の美しさや周囲の小さな出来事に目を留め、日常の中にある幸せを感じていた。鏡の中の世界での経験は彼女に、現実の世界の価値を改めて教えてくれる。ユミは新たな日々を受け入れ、自分の居場所である現実世界での生活を心から楽しんでいた。



 学校から帰宅したユミは、母親が夕食の準備をしている姿を優しい目で見つめた。「おかえり、ユミ。今日は何が食べたい?」母親が笑顔で尋ねた。

「何でもいいよ。お母さんが作るものなら、なんでもおいしいから」とユミは答え、キッチンで母親を手伝い始めた。



 ♤♥♢♣



 夜が更けて静まり返った家の中で、ユミは自分の部屋で深い思索に耽っていた。鏡の中の世界での経験が彼女の内面に大きな影響を与えていた。ベッドに座り、彼女は自分自身を見つめ直す。



「私は本当に何者なのだろう?」彼女は自問した。鏡の中の冒険は、彼女に多くの教訓を与えたが、それ以上に自分自身と向き合う機会を提供してくれた。ユミは、自分の強さと弱さ、望みと恐れを考え始める。



 彼女はスケッチブックを取り出し、自分の感じたこと、学んだことを絵と言葉で表現し始めた。彼女の絵には、鏡の中の世界での冒険と現実世界での経験が交錯し、新たな自己像が描かれていった。



「私はもっと強くなれる。もっと自分自身を信じることができる」とユミはスケッチブックに書き込みながら思った。彼女は自分の成長を実感し、自分の過去の行動や考え方を受け入れ、それらから学ぶことを決めた。



 ♤♥♢♣



 ユミは地元の美術教室に足を運び、絵画のレッスンに参加することを決める。教室では、彼女は異なる年齢や背景を持つ人々と出会い、それぞれのアーティスティックな才能に触れることで新たな刺激を受けた。



「絵を通じて、自分の感じることを表現したいんです」と、ユミは先生に自分の目標を語った。先生はユミの情熱を評価し、「君の絵からは大きな可能性が感じられるよ」と励ました。



 レッスンの後、ユミは公園のベンチに座り、自然を観察しながらスケッチを始める。彼女は自分の絵に現実世界の美しさと、鏡の中の世界での経験を融合させることで、独自のアートスタイルを探求していた。



 夕方、家に帰る道すがら、ユミは自分の新しい夢に向かって歩むこと、それを実現するための意欲。何よりもそれを自分が持ってたことを喜んだ。



 ♤♥♢♣



 新しい夢に向かって前進する中で、ユミは自室で鏡の破片を手に取り、深く考え込んでいた。彼女はその破片をじっと見つめながら、鏡の中の世界での経験と、それが自分にもたらした変化を振り返った。



「あの世界は私に多くを教えてくれたけど、今はここにいることが大切」



 ユミは鏡の破片をそっと箱に収め、過去の経験を胸にしまい込む。それは、彼女が新たな人生を歩むための鏡との決別の瞬間だった。



「家族や友達がいるから、私は強くいられる」とユミは自分自身に語りかける。彼女は、鏡の中の世界での経験が自分を成長させ、現実の世界の価値を再認識させてくれたことを感謝していた。



 ユミは翌朝、新しい一日を迎えるためにベッドから起き上がった。彼女は窓を開け、新鮮な空気を吸い込みながら、今日という日を最大限に活用することを心に誓う。彼女の心は、経験から学んだ教訓と、現実世界での新しい可能性に向けていた。



 ユミは自室を出る前に、もう一度鏡の破片の入った箱を見つめて微笑んだ。
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