獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

チミッ子メイド道

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 ハンナは侍女としての自分に誇りを持っています。
 そんなハンナにとって侍女の制服は一番やる気に満ち溢れる戦闘服です。気持ちがピシッとするのです。

 「ハンナおねえちゃんカッコいい~」

 いつも背筋を正して歩くハンナの制服姿に憧れる子がいました。
 その子がいるのは四阿です。前から有ったものではなく、新たに作られた四阿です。
 その四阿には大きな黒板が有りました。
 そうです。ハンナが希望し、ロウ村長が叶えてくれた青空教室です。変わりやすい山の天気と黒板の耐久年数向上の為に専用の四阿をも作ってくれたのです。
 校舎は建てる程子供達が集まるとは限らないので保留中です。

 「ではリンゴが一個ありました。もう一個リンゴを買ったらいくつになるでしょう」

 ハンナが黒板にリンゴの絵を一つ描き、そしてお店とリンゴを描き足します。
 集まったチミっ子はうーんうーんと唸っています。もう少し大きい少年少女達は流石にわかりましたが黙っています。チミっ子に答える場を設けているのです。

 「あっ!」

 ハンナをカッコいいと言ったチミっ子が閃きました。

 「はい!ハンナせんせー!」

 元気良く手を上げてアピールです。
 ハンナは直ぐに気付いてニコッとします。

 「はいミンミさん」

 名前を当てて貰ったチミっ子ことミンミはパァッと顔を輝かせて立ち上がりました。

 「にこです!」

 元気良く答えてマルかバツかの答えをワクワクして待ちます。
 勿論合っていますし、少年少女達もうんうん頷いています。
 けれども答えがわからなかったチミっ子達は本当に合っているのか不安顔です。

 「はい正解です」

 ハンナは頷き黒板に花丸を描きました。
 これにミンミは顔を赤くして「きゃー♪」と喜びの声を上げます。

 「はなまる!はなまるもらったー!」

 花丸が嬉しかった様です。
 見ていたチミっ子達は羨ましそうにミンミと花丸を見ました。

 「それじゃあ次の問題です」

 すかさずハンナが黒板に絵を描き足すと羨ましそうに見ていたチミっ子達は真剣に黒板と向き合います。今度は自分が花丸貰うんだと息巻いています。
 ミンミもまた花丸貰おうと黒板を見ました。
 こうしてチミっ子向けの問題を徐々に難しくしていき、最終的には少年少女達向けの問題へとシフトしていく方式で授業は進められていました。

 授業が終われば解散です。思い思いに友達と語り合いながら授業の内容を反芻する子もいれば、この後何処に遊びに行くかと話す子まで様々です。
 そんな中で一目散にハンナの元へ駆け寄る子がいました。ミンミです。
 ミンミはキラキラのお目々でハンナを見上げ、メイド服の裾をきゅむっと握りました。

 「ハンナせんせー」
 「あらミンミ。どうしましたか?」
 「あのねーんとねーミンミねー」

 頭を撫でられ問われると、ミンミは恥ずかしそうにモジモジします。俯いたり、チラリと視線を上げたりしています。
 ハンナはミンミが言うまで笑みを浮かべて待ってくれています。
 ミンミは自分のペースで心を落ち着かせて勇気を出すと、勢いよくハンナを見上げました。

 「ミンミもハンナせんせーみたいなめいどさんになりたい!」

 ミンミは大きな声でハッキリと気持ちを伝える事が出来ました。言い切ったあとは興奮で頬が紅潮しています。
 ハンナはビックリして両目を見開きます。そして嬉しそうに破顔するとミンミの視線に合わせて腰を落としました。

 「ありがとうミンミ。わたくしもこの仕事に誇りを持っているのでその様に夢を語って貰えてとても嬉しいです」

 正確には侍女なのですが、侍女になるにはメイドから始めます。勿論ハンナもメイドを経験してきました。

 「メイドの道は厳しいですよ。それでも頑張れるなら、先ずは見習いとして教えましょう」
 「ほんと!?ミンミがんばれるよ!」
 「まあ!とても頼もしいですね。花丸です」
 「あー!はなまるー!ミンミ!ミンミがんばる!」

 こうしてハンナに小さな頼もしい部下が出来たのでした。
 後にミンミが村の初代侍女頭に就任するのはまだ遠い未来のお話です。
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