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本編
今年の年神様は兎さん♪ #新年のあいさつを兼ねた小話です#
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「あけましておめでとーなんだよ」
除夜の鐘は無いけれど、炬燵に入ってまったり剥いていたミカンを置いてペコリと頭だけで挨拶をする三巳がいます。
炬燵には同じく半ペンを着たクロがかぶれるだけ炬燵布団を被ってニコニコと三巳を見ています。そして同じく手に取っていたミカンを置いてペコリと頭を下げます。
「あけましておめでとう」
『うむ。今年も家内安全を我が守ろう。のうクロよ』
クロに続いて言うのはその背後を陣取り全身の毛でクロを包む母獣です。尊大に言っていますがクロを見る目は甘々です。
「ありがとう愛しい人。僕も君と三巳を大切にするからね」
毎度の事ながら始まったイチャイチャに、三巳は居心地悪く炬燵の中に頭を引っ込めてしまいます。
炬燵の中はぬくぬくでとっても居心地が良いです。このまま春まで冬眠も悪くないと思っていると、コツンコツンと玄関を叩く音がしました。
「うにゅ?神気だ。今年も来たのかな?」
昨年は寅年でした。地球と同じなら兎年ですが流石にそんな偶然は無いだろうと思いつつも三巳は炬燵から出ます。そして
「はーい。今開けるんだよ」
と言いながらトテトテ歩いて行き、玄関の扉を開けたのです。
「うにゅ?」
しかしそこには誰も居ませんでした。
「神気はあるのに」
と言った所で気が付きます。その神気が随分下から感じる事に。
直ぐに視線を下げると感じた通りにそこに獣神がチョコンと立って……いえ座って?伏せて?いました。立っているのか座っているのか伏せているのかわからなくても無理はありません。何故ならそこにいたのは小さな兎さんだったのですから。
「地球といっしょ……」
何故世界も常識も違うこの星で干支の概念があるのだと疑問が頭を過った三巳です。けれども深く考えないのも三巳です。
「まいっか。いらっしゃいなんだよ。三巳は母ちゃんの子供の三巳なんだよ」
目線を合わせる為に限界までしゃがんでいつもの様に自己紹介をします。
すると鼻をヒクヒクさせて上を見ていた兎獣神が垂れていた耳を半分上げました。ロップイヤーな兎さんです。
『今晩はなのよ。寅のに聞いてあたしも来てみたのよ』
鼻をヒクヒク。髭をピコピコさせて言うその声はとっても可愛らしい声でした。鈴の音色のような、けれどか細く大人しい声です。
その声の可愛さに三巳もメロメロと顔を緩めてしまいます。絶対に兎獣神の方が年上ですがそんな事は可愛さの前では些細なことです。持ち上げて抱き上げて撫で上げたい衝動が芽生えました、が。そこはグッと堪えます。流石にいきなり抱き上げたら失礼だと一応大人だと思っている三巳は掌を上に向けた状態で兎獣神の横に置くに留めます。
「にゅ……。にゅぅー……。抱っこしたら嫌か?」
三巳は指先だけワキワキさせ、我慢の気持ちを耳と尻尾に全面に押し出した格好で最早懇願な体で聞きました。
兎獣神は鼻をヒクヒクさせて三巳の手に顔を向けます。
『全力で可愛がってくれるなら良いのよ』
兎獣神はコテンと小首を傾げて許可をくれました。
その事に喜ぶ三巳は「わーい♪」と素直に喜んで抱き上げナデナデモフモフ堪能しながら炬燵に戻ります。
『……。相変わらずよの。兎の』
『あら。羨ましいなの?でもこれはあたしの特権なのよ。だって兎は寂しいと死んじゃうのよ』
『それは迷信であろうに。……言うとくがクロに手出ししたら承知せんぞ』
『安心してなの。あたしは可愛いを独占したいから神のモノには興味無いのよ』
『ならば良い』
愛でまくる三巳の側で母獣と兎獣神が旧友な会話を繰り広げていますが、炬燵のヌクヌクと胸元のヌクヌクが心を占めている三巳には聞こえていないのでした。
除夜の鐘は無いけれど、炬燵に入ってまったり剥いていたミカンを置いてペコリと頭だけで挨拶をする三巳がいます。
炬燵には同じく半ペンを着たクロがかぶれるだけ炬燵布団を被ってニコニコと三巳を見ています。そして同じく手に取っていたミカンを置いてペコリと頭を下げます。
「あけましておめでとう」
『うむ。今年も家内安全を我が守ろう。のうクロよ』
クロに続いて言うのはその背後を陣取り全身の毛でクロを包む母獣です。尊大に言っていますがクロを見る目は甘々です。
「ありがとう愛しい人。僕も君と三巳を大切にするからね」
毎度の事ながら始まったイチャイチャに、三巳は居心地悪く炬燵の中に頭を引っ込めてしまいます。
炬燵の中はぬくぬくでとっても居心地が良いです。このまま春まで冬眠も悪くないと思っていると、コツンコツンと玄関を叩く音がしました。
「うにゅ?神気だ。今年も来たのかな?」
昨年は寅年でした。地球と同じなら兎年ですが流石にそんな偶然は無いだろうと思いつつも三巳は炬燵から出ます。そして
「はーい。今開けるんだよ」
と言いながらトテトテ歩いて行き、玄関の扉を開けたのです。
「うにゅ?」
しかしそこには誰も居ませんでした。
「神気はあるのに」
と言った所で気が付きます。その神気が随分下から感じる事に。
直ぐに視線を下げると感じた通りにそこに獣神がチョコンと立って……いえ座って?伏せて?いました。立っているのか座っているのか伏せているのかわからなくても無理はありません。何故ならそこにいたのは小さな兎さんだったのですから。
「地球といっしょ……」
何故世界も常識も違うこの星で干支の概念があるのだと疑問が頭を過った三巳です。けれども深く考えないのも三巳です。
「まいっか。いらっしゃいなんだよ。三巳は母ちゃんの子供の三巳なんだよ」
目線を合わせる為に限界までしゃがんでいつもの様に自己紹介をします。
すると鼻をヒクヒクさせて上を見ていた兎獣神が垂れていた耳を半分上げました。ロップイヤーな兎さんです。
『今晩はなのよ。寅のに聞いてあたしも来てみたのよ』
鼻をヒクヒク。髭をピコピコさせて言うその声はとっても可愛らしい声でした。鈴の音色のような、けれどか細く大人しい声です。
その声の可愛さに三巳もメロメロと顔を緩めてしまいます。絶対に兎獣神の方が年上ですがそんな事は可愛さの前では些細なことです。持ち上げて抱き上げて撫で上げたい衝動が芽生えました、が。そこはグッと堪えます。流石にいきなり抱き上げたら失礼だと一応大人だと思っている三巳は掌を上に向けた状態で兎獣神の横に置くに留めます。
「にゅ……。にゅぅー……。抱っこしたら嫌か?」
三巳は指先だけワキワキさせ、我慢の気持ちを耳と尻尾に全面に押し出した格好で最早懇願な体で聞きました。
兎獣神は鼻をヒクヒクさせて三巳の手に顔を向けます。
『全力で可愛がってくれるなら良いのよ』
兎獣神はコテンと小首を傾げて許可をくれました。
その事に喜ぶ三巳は「わーい♪」と素直に喜んで抱き上げナデナデモフモフ堪能しながら炬燵に戻ります。
『……。相変わらずよの。兎の』
『あら。羨ましいなの?でもこれはあたしの特権なのよ。だって兎は寂しいと死んじゃうのよ』
『それは迷信であろうに。……言うとくがクロに手出ししたら承知せんぞ』
『安心してなの。あたしは可愛いを独占したいから神のモノには興味無いのよ』
『ならば良い』
愛でまくる三巳の側で母獣と兎獣神が旧友な会話を繰り広げていますが、炬燵のヌクヌクと胸元のヌクヌクが心を占めている三巳には聞こえていないのでした。
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