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本編
無人島
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「まるーいほしーの♪すいへいせーんはー♪」
知らない無人島に調子っ外れな歌声が響いています。
音の発生源ではガサガサ、パキパキと草木を掻き分ける音も鳴っていて、まるで音楽を奏でているようです。
「可愛い……」
「大きな尻尾をフリフリさせてて、本人が隠れちゃってるのがまた可愛い……」
元気いっぱいに歩くモフモフの後ろ姿は、後ろを護衛兼見守りをしている女性達の心を鷲掴みにしていました。
そんな後ろの萌え萌えしてる様子など知りもせず、三巳は拾った木の枝を振り回して次を歩く人達が歩きやすい様に草を掻き分けています。
「いっぱーいしまーがあるんだよー♪」
気分は瓢箪な島を行く人です。所々で屈伸しながら進んで波まで表現しています。
勿論そんな物語を知らない後ろの人達ですが、それでもその歌がとっても楽しく感じていました。
「モフモフは……」
「正義……」
後ろで密かに結成された【三巳ちゃん見守り隊】はさておき、三巳は歌いながらも鼻を利かせて目的地へ来ていました。
「とーちゃーく!」
匂いの中心に立ってその場でクルクル回り、鼻をクンカクンカさせています。
その場所は低い木々が生えていて、葉っぱが太陽を遮っているからか背の高い草が生えていません。代わりに苔系の植物や蔓系の植物が足元を覆っています。
「着いたのは良いけど、知らない実なんだよ」
見渡した木々には確かに実がなっていました。
しかしそれは三巳が見た事の無かった実だったのです。
「リファラにもウィンブルドンにも売ってなかった」
取っても大丈夫かわからなくて立ち尽くしていると、冒険者の女性が一つ取ってくれました。
「これはレキュよ。酸っぱくて食べると口がキュッて萎まっちゃうの。普段はお茶に入れたり料理の添え物で出てくるけど、これは野生種だからどうかしら」
しかも説明までしてくれます。
「レキュ」
形は角ばった雫型をしています。そして色は蛍光色の強い黄緑です。けれどもその説明を聞いているとまるでレモンの様で、三巳の口も「キュ」の所で思わずキュッと萎まりました。
「取り敢えず食べてみるんだよ」
取って貰ったレキュの皮を服の裾でキュキュッと拭い、そしてパクリと齧り付いてみます。
「!!?」
果汁が口に入った瞬間、三巳は毛という毛を総毛立たせました。あまりの広がり方にまるで毬藻になった様です。
それもその筈、口の中に広がる酸っぱさはレモンを凌駕していたのです。
想像を絶した酸っぱさに、流石の三巳も言葉が出ません。
(!!?)
思考も纏まりません。
慌てたのはその思い切りの良さを見ていた冒険者の女性です。
「そのまま食べたらもの凄く酸っぱいわよ!?」
そう言って腰に下げていた水筒を三巳の口に当てました。
「ほらっ、口を濯いでペッてして」
ピルピルしている三巳の背中を優しく摩り、水筒を傾けます。しかし三巳は口を開けません。
「三巳ちゃんお水よ」
酸っぱさが極限過ぎてウルウルとした涙目が冒険者の女性を見上げます。
口に当たる水筒から水が滴ってきてようやっと口を開けると、口に入った水を閉じ込める様にまた口を閉じました。そしてそのままゴクンと嚥下します。
「え!?ペッよペッ!」
ビックリした冒険者の女性は思わず背中を叩いて吐き出させようとします。
「うにゅぅ~酸っぱかったんだよ」
しかしその言葉は最早手遅れだと悟らせるには十分でした。
「なら飲まなきゃ良いのに……」
冒険者の女性は総毛立っていた毛がゆっくり戻るのを撫でて促しながら言います。
毬藻三巳が普通の三巳に戻ると、三巳はもう一度水を飲みました。
「酸っぱいけど美味しかったんだよ。スッて抜ける爽やかさを奥底に秘めてる味」
「そうね。普通は薄めて飲んだり、1滴2滴垂らして使うものだから」
水筒を渡してくれたのとは別の女性が苦笑を漏らして言います。格好からしてこの女性も冒険者だとわかります。
「ありがとう、もう大丈夫なんだよ。えっと……」
「ふふ。そう言えば名乗って無かったわね。私はエイミーで、こっちは仲間のクレイン」
「宜しくね」
「三巳は三巳。宜しくなんだよ」
エイミーが自己紹介を始めたので残りの人達も集まり自己紹介をします。
三巳の元に集まったのは冒険者のエイミー、クレイン。他の冒険者のシャーリー。商人のトワイニー。吟遊詩人兼踊り子のコリアンナです。
「吟遊詩人で踊り子!三巳!三巳もな!踊り教わったし歌うの好きなんだよ!」
「あらぁステキねぇ。あたし達趣味が合うわぁ」
言いながらクルン。クルンと体をしならせ踊るコリアンナに、三巳が拍手喝采を浴びせます。そして三巳も一緒にグランで習った踊りを踊ってみせました。
(リファラだとつい気を抜いちゃったからな。今度は神気漏らさないように気を付けないと)
気分が高揚するとついウッカリを発動するのが三巳です。とはいえリファラの事からまだ数年しか立っていないので、ちゃんと覚えていて我慢が出来たのでした。
知らない無人島に調子っ外れな歌声が響いています。
音の発生源ではガサガサ、パキパキと草木を掻き分ける音も鳴っていて、まるで音楽を奏でているようです。
「可愛い……」
「大きな尻尾をフリフリさせてて、本人が隠れちゃってるのがまた可愛い……」
元気いっぱいに歩くモフモフの後ろ姿は、後ろを護衛兼見守りをしている女性達の心を鷲掴みにしていました。
そんな後ろの萌え萌えしてる様子など知りもせず、三巳は拾った木の枝を振り回して次を歩く人達が歩きやすい様に草を掻き分けています。
「いっぱーいしまーがあるんだよー♪」
気分は瓢箪な島を行く人です。所々で屈伸しながら進んで波まで表現しています。
勿論そんな物語を知らない後ろの人達ですが、それでもその歌がとっても楽しく感じていました。
「モフモフは……」
「正義……」
後ろで密かに結成された【三巳ちゃん見守り隊】はさておき、三巳は歌いながらも鼻を利かせて目的地へ来ていました。
「とーちゃーく!」
匂いの中心に立ってその場でクルクル回り、鼻をクンカクンカさせています。
その場所は低い木々が生えていて、葉っぱが太陽を遮っているからか背の高い草が生えていません。代わりに苔系の植物や蔓系の植物が足元を覆っています。
「着いたのは良いけど、知らない実なんだよ」
見渡した木々には確かに実がなっていました。
しかしそれは三巳が見た事の無かった実だったのです。
「リファラにもウィンブルドンにも売ってなかった」
取っても大丈夫かわからなくて立ち尽くしていると、冒険者の女性が一つ取ってくれました。
「これはレキュよ。酸っぱくて食べると口がキュッて萎まっちゃうの。普段はお茶に入れたり料理の添え物で出てくるけど、これは野生種だからどうかしら」
しかも説明までしてくれます。
「レキュ」
形は角ばった雫型をしています。そして色は蛍光色の強い黄緑です。けれどもその説明を聞いているとまるでレモンの様で、三巳の口も「キュ」の所で思わずキュッと萎まりました。
「取り敢えず食べてみるんだよ」
取って貰ったレキュの皮を服の裾でキュキュッと拭い、そしてパクリと齧り付いてみます。
「!!?」
果汁が口に入った瞬間、三巳は毛という毛を総毛立たせました。あまりの広がり方にまるで毬藻になった様です。
それもその筈、口の中に広がる酸っぱさはレモンを凌駕していたのです。
想像を絶した酸っぱさに、流石の三巳も言葉が出ません。
(!!?)
思考も纏まりません。
慌てたのはその思い切りの良さを見ていた冒険者の女性です。
「そのまま食べたらもの凄く酸っぱいわよ!?」
そう言って腰に下げていた水筒を三巳の口に当てました。
「ほらっ、口を濯いでペッてして」
ピルピルしている三巳の背中を優しく摩り、水筒を傾けます。しかし三巳は口を開けません。
「三巳ちゃんお水よ」
酸っぱさが極限過ぎてウルウルとした涙目が冒険者の女性を見上げます。
口に当たる水筒から水が滴ってきてようやっと口を開けると、口に入った水を閉じ込める様にまた口を閉じました。そしてそのままゴクンと嚥下します。
「え!?ペッよペッ!」
ビックリした冒険者の女性は思わず背中を叩いて吐き出させようとします。
「うにゅぅ~酸っぱかったんだよ」
しかしその言葉は最早手遅れだと悟らせるには十分でした。
「なら飲まなきゃ良いのに……」
冒険者の女性は総毛立っていた毛がゆっくり戻るのを撫でて促しながら言います。
毬藻三巳が普通の三巳に戻ると、三巳はもう一度水を飲みました。
「酸っぱいけど美味しかったんだよ。スッて抜ける爽やかさを奥底に秘めてる味」
「そうね。普通は薄めて飲んだり、1滴2滴垂らして使うものだから」
水筒を渡してくれたのとは別の女性が苦笑を漏らして言います。格好からしてこの女性も冒険者だとわかります。
「ありがとう、もう大丈夫なんだよ。えっと……」
「ふふ。そう言えば名乗って無かったわね。私はエイミーで、こっちは仲間のクレイン」
「宜しくね」
「三巳は三巳。宜しくなんだよ」
エイミーが自己紹介を始めたので残りの人達も集まり自己紹介をします。
三巳の元に集まったのは冒険者のエイミー、クレイン。他の冒険者のシャーリー。商人のトワイニー。吟遊詩人兼踊り子のコリアンナです。
「吟遊詩人で踊り子!三巳!三巳もな!踊り教わったし歌うの好きなんだよ!」
「あらぁステキねぇ。あたし達趣味が合うわぁ」
言いながらクルン。クルンと体をしならせ踊るコリアンナに、三巳が拍手喝采を浴びせます。そして三巳も一緒にグランで習った踊りを踊ってみせました。
(リファラだとつい気を抜いちゃったからな。今度は神気漏らさないように気を付けないと)
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