309 / 372
本編
恋バナというより嫁に出したくない飼い主の話だった
しおりを挟む
すっかり元通りの猫耳崖に戻っている場所で、レジャーシートを広げて寛ぐ三巳がいます。
お弁当を食べ終えて、おやつ片手にクロから母獣との出逢いを聞いていたのです。
「島神のじっちゃもやんちゃだった」
地面をモミモミトントンとマッサージをしてみれば、島からゴロゴロと喉を鳴らす声が聞こえて来ます。
ちょっと前まで成神出来ずにいた三巳は、何となく腑に落ちません。
(何で島神のじっちゃはその時既に成神出来てて、三巳は出来てなかったん?)
三巳の場合は社会神になる事を拒んでいたからですが、島神は猫至上主義だっただけで、社会神ではあったのです。
その違いに気付かない三巳は若干もやもやしていましたが、母獣から圧の有る視線を感じてその思考を遠くに投げ捨てました。
三巳はマッサージの手を止めずにクロを見ます。
「父ちゃんと母ちゃんは一目惚れ同士って事?」
話を恋バナに戻そうと出したパスは、ちゃんと母獣が受け取ってくれました。
母獣は胡乱な目を愛しいものに変えてクロを見ます。そして鼻先をクロの頬に摺り合わせます。
『正確には見る前に惚れ合った同士じゃの』
クロは頬をずらして母獣の鼻先と自分の鼻先をチョンと合わせてペロリと舐めます。
「そうだねぇ。キチンとお付き合い出来たのは神災から島に帰って、そこに愛しいひとも住み始めて、アッシュ達とも良く話し合った上で島神様の許可を貰ってからだけれどね」
その許可が中々下りなかった事は母獣を見れば容易にわかります。
「どうやって許可されたん?」
『眷属化する事でずっと同じ時を生きられると説得したり。色々じゃな』
「そうそう。自分達を覚えている仲間がいると嬉しいと、応援してくれたのは嬉しかったな」
『クロとの間に子が出来ればそれは孫みたいなものだと、何処ぞの眩しい神族が言うて一気にグラついていたの』
「じゃあ島神のじっちゃはやっぱし三巳のじっちゃで合ってるんだな!」
三巳がパァッと顔を輝かせて言えば、島神もパァッと島を輝かせて光る花のエフェクトを降らせました。触れないけれど手の平に落ちては消えていく花を、三巳はキャッキャと捕まえて遊び始めます。
『尤もそこまで行くのに随分年月が掛かったがのう』
爺馬鹿を繰り広げる島神との足元の攻防を繰り広げながら母獣が呟いています。
その横でクロも懐かしさに浸りながらクスクス笑っています。
「中々に骨が折れたねぇ。最後はアッシュ達がこっそり島から出そうとまでしてくれて」
『クックック。そうであったの』
いっその事アッシュ達も島を出てみようかなどと話しまで跳んで、慌てふためく島神を思い出した母獣がさぞ愉快そうにお腹を揺らして笑います。
「ふうん?それって他にも島を出た猫獣人がいたりするん?」
遊びながらもちゃんと話が聞こえていた三巳が戻って来て素朴な疑問を言いました。
三巳の疑問は、島神がどよ~んと昏く沈んで重力が重くなった気がした事で答えがわかります。
クロもその空気に苦笑を漏らしながらも、仲間の子孫達の明るい未来に嬉しそうです。
「集会で聞いた話だと最近は冒険者を目指す若者が増えているらしいよ」
「じゃあいつか三巳の山にも来るかもしれないんだよ!楽しみなんだよ!」
喜ぶ三巳に島神も文句を言えません。孫には良い爺ちゃんでいたいらしいです。代わりに三巳の前にポンと花を一つ咲かせました。
大きな花弁の黒と白の花で、それは輝きと共に種子へと姿を変えます。大きさは殻付きの胡桃程です。
「ぬ?くれるのか?」
三巳が手を差し出すと種子はポロリと落ちて三巳の手に収まります。
それをクンクンと匂いを嗅いで確かめると、仄かに島神の神気を感じました。
『それを山に植えて花が咲けば離れていても会話が出来る。ほんに相変わらずの気持ち悪さじゃ』
要はトランシーバーみたいなものかと三巳は納得しました。
バシバシと島を叩く母獣には目もくれず種子を見ています。何処に植えようかと考えているのです。
『世界樹のなりかけがあったであろう。そこに植えれば良い』
「あの子かー。そうだな、そうしよ。そしたらあの子もきっと寂しくない」
出来るだけ遠く、さりとてわざとらしい遠さではない所を示した母獣に三巳は気付いていません。むしろ納得顔です。トランシーバー位なら影響力も少なそうだと思っています。
勿論世界樹の場所などわからない島神は、植えて貰えそうで安心しています。
「島神のじっちゃ、山に帰ってもお話ししよーな」
にゃーん♪
こうして母獣の思惑を他所に、島神との交流も終え、両親の恋バナも聞けた三巳は大満足で島での観光を終えて帰宅の途へと付くのでした。
お弁当を食べ終えて、おやつ片手にクロから母獣との出逢いを聞いていたのです。
「島神のじっちゃもやんちゃだった」
地面をモミモミトントンとマッサージをしてみれば、島からゴロゴロと喉を鳴らす声が聞こえて来ます。
ちょっと前まで成神出来ずにいた三巳は、何となく腑に落ちません。
(何で島神のじっちゃはその時既に成神出来てて、三巳は出来てなかったん?)
三巳の場合は社会神になる事を拒んでいたからですが、島神は猫至上主義だっただけで、社会神ではあったのです。
その違いに気付かない三巳は若干もやもやしていましたが、母獣から圧の有る視線を感じてその思考を遠くに投げ捨てました。
三巳はマッサージの手を止めずにクロを見ます。
「父ちゃんと母ちゃんは一目惚れ同士って事?」
話を恋バナに戻そうと出したパスは、ちゃんと母獣が受け取ってくれました。
母獣は胡乱な目を愛しいものに変えてクロを見ます。そして鼻先をクロの頬に摺り合わせます。
『正確には見る前に惚れ合った同士じゃの』
クロは頬をずらして母獣の鼻先と自分の鼻先をチョンと合わせてペロリと舐めます。
「そうだねぇ。キチンとお付き合い出来たのは神災から島に帰って、そこに愛しいひとも住み始めて、アッシュ達とも良く話し合った上で島神様の許可を貰ってからだけれどね」
その許可が中々下りなかった事は母獣を見れば容易にわかります。
「どうやって許可されたん?」
『眷属化する事でずっと同じ時を生きられると説得したり。色々じゃな』
「そうそう。自分達を覚えている仲間がいると嬉しいと、応援してくれたのは嬉しかったな」
『クロとの間に子が出来ればそれは孫みたいなものだと、何処ぞの眩しい神族が言うて一気にグラついていたの』
「じゃあ島神のじっちゃはやっぱし三巳のじっちゃで合ってるんだな!」
三巳がパァッと顔を輝かせて言えば、島神もパァッと島を輝かせて光る花のエフェクトを降らせました。触れないけれど手の平に落ちては消えていく花を、三巳はキャッキャと捕まえて遊び始めます。
『尤もそこまで行くのに随分年月が掛かったがのう』
爺馬鹿を繰り広げる島神との足元の攻防を繰り広げながら母獣が呟いています。
その横でクロも懐かしさに浸りながらクスクス笑っています。
「中々に骨が折れたねぇ。最後はアッシュ達がこっそり島から出そうとまでしてくれて」
『クックック。そうであったの』
いっその事アッシュ達も島を出てみようかなどと話しまで跳んで、慌てふためく島神を思い出した母獣がさぞ愉快そうにお腹を揺らして笑います。
「ふうん?それって他にも島を出た猫獣人がいたりするん?」
遊びながらもちゃんと話が聞こえていた三巳が戻って来て素朴な疑問を言いました。
三巳の疑問は、島神がどよ~んと昏く沈んで重力が重くなった気がした事で答えがわかります。
クロもその空気に苦笑を漏らしながらも、仲間の子孫達の明るい未来に嬉しそうです。
「集会で聞いた話だと最近は冒険者を目指す若者が増えているらしいよ」
「じゃあいつか三巳の山にも来るかもしれないんだよ!楽しみなんだよ!」
喜ぶ三巳に島神も文句を言えません。孫には良い爺ちゃんでいたいらしいです。代わりに三巳の前にポンと花を一つ咲かせました。
大きな花弁の黒と白の花で、それは輝きと共に種子へと姿を変えます。大きさは殻付きの胡桃程です。
「ぬ?くれるのか?」
三巳が手を差し出すと種子はポロリと落ちて三巳の手に収まります。
それをクンクンと匂いを嗅いで確かめると、仄かに島神の神気を感じました。
『それを山に植えて花が咲けば離れていても会話が出来る。ほんに相変わらずの気持ち悪さじゃ』
要はトランシーバーみたいなものかと三巳は納得しました。
バシバシと島を叩く母獣には目もくれず種子を見ています。何処に植えようかと考えているのです。
『世界樹のなりかけがあったであろう。そこに植えれば良い』
「あの子かー。そうだな、そうしよ。そしたらあの子もきっと寂しくない」
出来るだけ遠く、さりとてわざとらしい遠さではない所を示した母獣に三巳は気付いていません。むしろ納得顔です。トランシーバー位なら影響力も少なそうだと思っています。
勿論世界樹の場所などわからない島神は、植えて貰えそうで安心しています。
「島神のじっちゃ、山に帰ってもお話ししよーな」
にゃーん♪
こうして母獣の思惑を他所に、島神との交流も終え、両親の恋バナも聞けた三巳は大満足で島での観光を終えて帰宅の途へと付くのでした。
10
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
『まて』をやめました【完結】
かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。
朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。
時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの?
超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌!
恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。
貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。
だから、もう縋って来ないでね。
本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます
※小説になろうさんにも、別名で載せています
【完結】悪役令嬢はご病弱!溺愛されても断罪後は引き篭もりますわよ?
鏑木 うりこ
恋愛
アリシアは6歳でどハマりした乙女ゲームの悪役令嬢になったことに気がついた。
楽しみながらゆるっと断罪、ゆるっと領地で引き篭もりを目標に邁進するも一家揃って病弱設定だった。
皆、寝込んでるから入学式も来れなかったんだー納得!
ゲームの裏設定に一々納得しながら進んで行くも攻略対象者が仲間になりたそうにこちらを見ている……。
聖女はあちらでしてよ!皆様!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる