獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

春はウズウズする季節なんだよ

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 寒い冬が終わりを告げて春がやって来ました。

 「蕗のとうもコゴメもゼンマイもワラビも美味しかった」

 毎年恒例の山菜取りも、移住して来た子達に喜ばれたので三巳は大満足です。
 強いて言うなら取った山菜の天ぷらや佃煮は嫌われてしまったのですが、それはお子様あるあるなので微笑ましいで終わりました。尤もその後出された山菜蕎麦は普通に受け入れられたので、大人になるにつれて食べられる様になるのでしょう。

 「今年は暖かくなるの早かったし、竹の子もそろそろかなー」

 春は命が芽吹く季節です。
 次から次にやってくる美味しい気配に、三巳は自然と涎を垂らします。
 最近はモンスター達も人との共存を意識し始めたのか、三巳が居なくとも山の民を襲わなくなっているそうです。それはそれで戦闘能力面での成長が為されないので最近のロウ村長の悩み草になっているのですが。

 「んー。オリンピックみたく腕試し大会でも提案してみようか」

 それで勝ち上がった上位数名を竹の子狩り隊に任命するのも面白そうです。
 楽しいの気配に三巳の耳はピピクピクと揺れ動きます。

 「んふー♪」

 鼻歌混じりの鼻息に、尻尾までワサリ、ワサ。と揺れ動きます。
 思い立ったが吉日だと、三巳はイソイソと縁側から立ち上がります。そして調子っ外れな鼻歌奏でてロウ村長の元へ向かうのでした。

 「ロウ村長ー♪」

 匂いを辿って着いたのはギルドです。如何やら運動がてら依頼をこなしている様です。
 中へ入るとオーウェンギルド長と何やら楽し気に話しています。三巳は聞き耳を立てないように耳を伏せてお邪魔しました。

 「よう、獣神娘。大した事ぁ話してねえから気にすんな」

 いち早く気付いたオーウェンギルド長が片手を上げて招いてくれます。
 ロウ村長もカウンターに肩肘つけたまま振り向いて手を振ってくれます。
 三巳は嬉しくて尻尾をワサリワサリと振りながら近寄りました。勿論伏せていた耳はピンと立てています。

 「如何かしたか」

 ギルドにまでロウ村長を探しに来たのです。ロウ村長が察しない訳がありません。楽しそうな予感にニカリと歯を剥き出しにして豪快な笑みを見せています。

 「うにゅ。最近な、皆訛ってるってボヤいてるだろ。そんでな、三巳オリンピックやったら楽しいと思ったんだよ」

 カウンターに爪先立ちで上体を乗り出した三巳は、同じように犬歯を剥き出しにして楽しそうにニカリと笑いました。
 ロウ村長もオーウェンギルド長も知らない名称にキョトリとします。そしてお互いに視線だけで知っているか尋ねます。
 お互いに首を横に振ると三巳に向き直りました。

 「で。そのおりんぴっくってのは何なんだ?」

 尋ねられたならば答えようと、三巳は身振り手振りで知ってるだけ全て話します。

 「成る程な。スキーってのは冬にロスカがやってたヤツだろう。あれはまだ浸透していないから今は出来んな」
 「速度を競うってのは単純過ぎだが、障害物を織り交ぜれば難易度は上がるだろ」

 話を聞いたロウ村長は勿論、一緒に聞いていたオーウェンギルド長もノリノリです。

 「からてやじゅうどうは武闘と捉えれば良いんだな。剣道に弓道は良いとして、魔法は無いのか」

 オーウェンギルド長の言葉で三巳は「はっ!」としました。何せ地球には魔法は競技どころか存在すらしなかったのです。

 「ま、魔法も!」

 慌てて三巳が言えば2人はそうだろうと頷きます。
 楽しい予感にロウ村長は手続き中の依頼書もそっちの気で次々と案を出して行きます。
 同じく闘技大会に似て非なる予感に、オーウェンギルド長も受理中の依頼書そっちの気で案を出して行きます。
 こうしてオリンピックなのか天下一な武闘をする会なのかわからない会を、三巳達は楽し気に話し合うのでした。

 因みに、構想を練り過ぎて竹の子狩りの時期が先に来てしまうのはご愛嬌です。
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