338 / 372
本編
レオと母獣
しおりを挟む
「ただいまなんだよ、父ちゃん!今日から暫くレオの分もご飯作って!」
可愛い可愛い目に入れても痛くない愛娘が、家に男を連れ込みました。
家で今日の献立を手際良く準備していたクロの心境は複雑です。
「いらっしゃい。良く来たね」
雷雲が轟く嵐な心境を抑え込み、クロはニッコリと笑みを貼り付けて出迎えます。
三巳が元気溌剌笑顔満面でクロにギュッと抱き付いてお願いするものだから、最早天国絵図と地獄絵図が共演しています。それ程迄に心の中が複雑怪奇に入り乱れていたのです。
「邪魔して悪いな」
親心を正確に読み取ったレオが苦笑気味に挨拶を返します。悪いとは思うけれど、帰れと言われて無いのでお邪魔しちゃいます。
「いや良いよ。三巳がこんなにも喜んでいるからね」
クロはそう言ってニコヤカにレオに近付きその肩に手をポンと置きます。そして顔を耳元に近付けると、
「三巳を悲しませないでね」
黒い笑顔でそう呟きました。
肩に置いた手はちょっぴし力が入っています。
レオは両手を肩まで上げてお手上げポーズを取りました。
「心配症だなアンタも。安心しな、今のとこ妹みたく思ってるだけだぜ」
クロの暗に「嫁にはやらん」発言を正確に把握したのです。
三巳はそんな男2人のやり取りを目をパチクリさせて見ています。男同士の話に首突っ込んじゃダメだと耳を伏せてウッカリ聞いちゃわない様に配慮もしています。
「父ちゃん。男同士の挨拶終わったー?」
何となく近付き難いので大きめに聞きます。
そうすればクロはとっても優しい微笑みで
「ごめんね。待たせちゃったかな」
と直ぐに三巳の元へ戻ってくれました。
「んーん、待つって程じゃなかったよ。それよかレオの分もご飯間に合いそう?三巳手伝う?」
「そうかい?ありがとう」
お礼を言ったクロはチラリとレオを見て、直ぐに三巳に視線を戻します。
「それじゃお願いしようかな」
だってパパだもの。彼氏候補に娘はまだ盗られたくないんです。
そりゃ出て行った時と違った可愛らしい服に着替えて男を連れて来たら警戒もするってものかもしれません。
「ん!任せろ!」
そんな訳で晩御飯が出来るまでレオは暇になりました。
三巳が料理している姿を見ていても良いのですが、今はクロを刺激しない方が良いでしょう。
さてどうしたものかと視線を動かせば、パチリ。と窓辺に伏せていた母獣と目が合いました。しかも何故か呼ばれている気がしています。
クロは内心で嘆息して母獣の横に腰を下ろして片膝を立てる形で座りました。
母獣はそれに満足そうに目を細めると、一度だけパサリと尻尾を揺らします。
『良く来たのう。魔物の脚にはちと遠かったじゃろうに』
「如何なんだろうな。地元から出たの初めてだったから、話には聞いていたがこんなもんかとは思ったか。飛ばせるとこは飛ばして来て、3日ってとこだったぜ」
『ほう。それは良い脚を持っておる。流石彼奴に育てられただけはあるというものよの』
「ん?知ってたか」
『くっくっく!それはのう。他所の子を拾って育てる物好きは、神族にはそう多くないのじゃ。暇を持て余した風神共がピーチクパーチク話しておったわ』
「そりゃ、まあそうか。あの神は特に気まぐれだったからな。今でも元気にしてるんだろうな」
『そうさのう。我も然程やり取りはせぬ相手じゃが、まあ風神共の話の種には困っておらぬ様じゃぞ』
「ははっ!そりゃ何よりだ」
育ての親の話が出た事で、レオは少し昔を思い出しました。
まだ赤子と言って良い時期に、独りぼっちになったレオを時に子煩悩に育て、殆どが鬼教官もダッシュで逃げ出す鍛錬で鍛え上げてくれた神族の養父。お陰で母獣相手にも怯まずに相手を出来ているのかもしれません。
レオは養父を今でも慕っているのです。
『クロは良い男じゃ。内心は複雑であろうが、其方に不利益な事はせぬよ。安心すると良い』
「そこは何も心配してねえな。三巳の父親だから」
『くっくっく!そうか、レオも良い男よのう。将来が楽しみじゃ』
母獣は暗に三巳の婿候補として言いました。
そしてレオはそれに察した様で察していない事にするのでした。
可愛い可愛い目に入れても痛くない愛娘が、家に男を連れ込みました。
家で今日の献立を手際良く準備していたクロの心境は複雑です。
「いらっしゃい。良く来たね」
雷雲が轟く嵐な心境を抑え込み、クロはニッコリと笑みを貼り付けて出迎えます。
三巳が元気溌剌笑顔満面でクロにギュッと抱き付いてお願いするものだから、最早天国絵図と地獄絵図が共演しています。それ程迄に心の中が複雑怪奇に入り乱れていたのです。
「邪魔して悪いな」
親心を正確に読み取ったレオが苦笑気味に挨拶を返します。悪いとは思うけれど、帰れと言われて無いのでお邪魔しちゃいます。
「いや良いよ。三巳がこんなにも喜んでいるからね」
クロはそう言ってニコヤカにレオに近付きその肩に手をポンと置きます。そして顔を耳元に近付けると、
「三巳を悲しませないでね」
黒い笑顔でそう呟きました。
肩に置いた手はちょっぴし力が入っています。
レオは両手を肩まで上げてお手上げポーズを取りました。
「心配症だなアンタも。安心しな、今のとこ妹みたく思ってるだけだぜ」
クロの暗に「嫁にはやらん」発言を正確に把握したのです。
三巳はそんな男2人のやり取りを目をパチクリさせて見ています。男同士の話に首突っ込んじゃダメだと耳を伏せてウッカリ聞いちゃわない様に配慮もしています。
「父ちゃん。男同士の挨拶終わったー?」
何となく近付き難いので大きめに聞きます。
そうすればクロはとっても優しい微笑みで
「ごめんね。待たせちゃったかな」
と直ぐに三巳の元へ戻ってくれました。
「んーん、待つって程じゃなかったよ。それよかレオの分もご飯間に合いそう?三巳手伝う?」
「そうかい?ありがとう」
お礼を言ったクロはチラリとレオを見て、直ぐに三巳に視線を戻します。
「それじゃお願いしようかな」
だってパパだもの。彼氏候補に娘はまだ盗られたくないんです。
そりゃ出て行った時と違った可愛らしい服に着替えて男を連れて来たら警戒もするってものかもしれません。
「ん!任せろ!」
そんな訳で晩御飯が出来るまでレオは暇になりました。
三巳が料理している姿を見ていても良いのですが、今はクロを刺激しない方が良いでしょう。
さてどうしたものかと視線を動かせば、パチリ。と窓辺に伏せていた母獣と目が合いました。しかも何故か呼ばれている気がしています。
クロは内心で嘆息して母獣の横に腰を下ろして片膝を立てる形で座りました。
母獣はそれに満足そうに目を細めると、一度だけパサリと尻尾を揺らします。
『良く来たのう。魔物の脚にはちと遠かったじゃろうに』
「如何なんだろうな。地元から出たの初めてだったから、話には聞いていたがこんなもんかとは思ったか。飛ばせるとこは飛ばして来て、3日ってとこだったぜ」
『ほう。それは良い脚を持っておる。流石彼奴に育てられただけはあるというものよの』
「ん?知ってたか」
『くっくっく!それはのう。他所の子を拾って育てる物好きは、神族にはそう多くないのじゃ。暇を持て余した風神共がピーチクパーチク話しておったわ』
「そりゃ、まあそうか。あの神は特に気まぐれだったからな。今でも元気にしてるんだろうな」
『そうさのう。我も然程やり取りはせぬ相手じゃが、まあ風神共の話の種には困っておらぬ様じゃぞ』
「ははっ!そりゃ何よりだ」
育ての親の話が出た事で、レオは少し昔を思い出しました。
まだ赤子と言って良い時期に、独りぼっちになったレオを時に子煩悩に育て、殆どが鬼教官もダッシュで逃げ出す鍛錬で鍛え上げてくれた神族の養父。お陰で母獣相手にも怯まずに相手を出来ているのかもしれません。
レオは養父を今でも慕っているのです。
『クロは良い男じゃ。内心は複雑であろうが、其方に不利益な事はせぬよ。安心すると良い』
「そこは何も心配してねえな。三巳の父親だから」
『くっくっく!そうか、レオも良い男よのう。将来が楽しみじゃ』
母獣は暗に三巳の婿候補として言いました。
そしてレオはそれに察した様で察していない事にするのでした。
10
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
あなたの幸せを祈ってる
あんど もあ
ファンタジー
ルイーゼは、双子の妹ローゼリアが病弱に生まれたために、「お前は丈夫だから」と15年間あらゆる事を我慢させられて来た。……のだが、本人は我慢させられていると言う自覚が全く無い。とうとう我慢のしすぎで命の危機となってしまい、意図せぬざまぁを招くのだった。
ドアマットだと自覚してないドアマット令嬢のお話。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
錬金術士の使い魔は最悪の未来がこないよう、今日もご主人様の為に頑張ります!
たぬきち
ファンタジー
かつて――錬金術士リリルーナは、必ず斬首刑に処される運命にあった。
その未来を知るのは、彼女に仕える小さな使い魔シロだけ。
主の死を変えるため、彼女は何度も命を落とし、何度も同じ時間へと“死に戻り”を繰り返してきた。
しかし、どれだけ足掻いても結末は変わらない。
王国兵の裁き、歪んだ陰謀、すれ違う選択――すべてが彼女を破滅へ導いていく。
そして迎えた、ある死に戻り。
目覚めたシロは、人間の姿へと変わっていた。
人間に転生した時、新たに得た特殊能力『因果の微修正』。
それは、世界の流れを大きく変えることはできない代わりに、ほんのわずかな“ズレ”を生み出す力だった。
使い魔ではなく、ひとりの人間として。
友人として彼女の隣に立つことを選んだシロは、これまでの世界線では存在しなかった出会いを重ねていく。
誇り高き騎士団、現実主義の冒険者ギルド、そして運命に翻弄される人々――。
小さな選択の積み重ねが、やがて未来の形を変えていくと信じて。
駆け出し錬金術士は、いつしか冒険者としても名を知られる存在へ。
だが、どれほど日常が輝いても、処刑の日は確実に近づいていた。
これは、何度失敗しても諦めない使い魔と、まだ運命を知らない錬金術士の物語。
最悪の未来を書き換えるための、錬金術士の使い魔が紡ぐやり直しファンタジーです。
イラストは全て生成AIです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる