獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

遊園地の終わりに

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 千里眼と神託を覚えた三巳は、一仕事終えて肩の荷を降ろしていました。

 「これでロン達はロウ村長が拾ってくれる」
 「そうだね。僕達も安心して戻れるよ」

 問題は帰り道です。千里眼で一本道なのは確認していますが、ワンダーな世界は一方通行だったので進むしかありませんでした。

 「三巳達は帰り道を楽しめば良い♪」
 「空飛ぶ馬車なんて、リリと乗りたかったけどね」

 そうです。三巳とロダは空飛ぶ馬車に乗って次のエリアに向かっているのです。
 馬車は綿菓子の様なふわふわの雲に乗って月目掛けて飛んでいます。その姿はまるでかぐや姫のラストシーンです。

 「うふー♪羽衣着た綺麗なお姉さんはいないけど、ウサニャんとジーニャんと乗れて楽しいんだよ!」

 ニコーと無邪気に笑えば、兎も魔女神も悪い気はしません。お兄さんお姉さんな気分で和みます。
 因みに宰相は留守番です。代わりにロダがティーポットを持っています。

 「三巳も持ちたかったなー」
 「絶対に嫌じゃ」

 魔女神としては、三巳の破天荒な動きで割れ物を持たれたくありません。断固拒否の姿勢でロダに一任していました。

 「うわー!月!近い!凄い!顔があるー!」

 目の前いっぱいに広がる月は満月です。そしてニッコリ笑顔の顔がありました。

 「やあ、ようこそ月の世界へ」
 「!喋った!」

 そして会話が出来ました。
 空飛ぶ馬車というアトラクションに乗って月と会話するなんて夢のようです。三巳の尻尾は興奮ではち切れました。

 「わっぷ!やめんか!」
 「これだから犬科はー!」
 「落ち着いて三巳!」

 狭い馬車の中で三巳の大きな尻尾がはち切れれば、そりゃ周囲なんて埋もれるに決まっています。モフモフで気持ち良いのがせめてもの救いでしょう。

 「こんばんは!三巳、月の世界で遊びたいんだよ!」

 馬車から身を乗り出して元気よく言うと、月は大きな口を開けて笑います。

 「わっはっは!存分に楽しんでおいで!」
 「きゃ―――♪」

 笑う月に誘われて、喜びの声を上げる三巳の馬車は月へと吸い込まれて行きました。

 (あんなに良く笑う月の上って、地震大丈夫かな)

 ロダだけは冷静に分析しましたが要らぬ心配でした。降り立った月の上は全く揺れていません。それどころか顔っぽさが何処にも無くなっています。

 「おおっ、明るい」

 足元は月らしいゴツゴツとしたものでしたが、とても明るく輝いています。お陰で街灯なしでも昼の様に周囲が良く見えています。
 キョロキョロと見渡した三巳は、兎に振り返りました。

 「連れてきてくれてありがとーな。兎の女王には挨拶行った方が良いのか?」
 「どっちでも良いさ。このまま付いて来ても良いし、それは次回のお楽しみにして出口に行っても良い。って言っても出口があるのは城の迷宮ガーデンの何処かなんだけどな」

 つまり必ず立ち寄る必要が有りそうです。

 「んー。勝手に入って良いのか?」

 一応社会神としてマナーを気にしますが、兎は片耳をピョコンと立てて首を傾げました。

 「?大抵勝手に入って勝手に出てくもんだろ?」

 ダンジョンは確かにそういうものかもしれません。ロウ村長なら気にしなかったかもしれません。
 けれども三巳もロダもダンジョン初心者です。村でも流石に他所の家で好き勝手はしません。キチンと声は掛けています。
 三巳とロダは顔を合わせてお互いの認識を確認しました。

 「まあ。良いなら良いか」

 そして深く考えない三巳が頷きます。
 ロダとしても三巳が良いなら良いのでどうするのか相談します。

 「魔女神様は兎の女王様に呼ばれて来たんだよね。なら僕達は邪魔しない方が良いんじゃない?」

 ロダが最もな意見を述べると、三巳は「うぐ」と喉を詰まらせ目を泳がせました。だってワンダーな兎と女王とくれば見てみたいものがあります。

 (カードの人……)

 モワモワと頭に浮かぶのは楽しそうに遊ぶ黒と赤のトランプな体の人達です。そこに自分も登場させれば絶対に楽しいに違いないと思い、煮え切らなくなったのです。
 けれども先にアポを取った人を押し除けるのはマナーに反するでしょう。

 「そいじゃあ、三巳は先にお土産物色するんだよ」

 だから渋々不参加を決めました。

 「そうかい?」

 一番参加しそうな三巳が辞退したので兎は不思議そうです。

 「それじゃこれ渡しておくよ。出口の鍵になってるから帰る時に使って。使い終わったら出口の取手に掛けといてくれれば良いさ」

 そう言って兎が渡してくれたのは、兎がずっと首に掛けていた魔法陣でした。実は兎と海の世界や魔女神の世界に行けていたのは魔法陣のお陰だったのです。
 つまり初めに兎を捕まえられないと次に進めなかった訳です。
 その事に気付いたロダは念の為に日記に書いておこうと決意します。その日記は後に攻略本の先駆けとなるのですが、ロダは知りもせず、リリに楽しい話をする事で頭がいっぱいになるのでした。
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