大聖女エルサーシアの遺言~とんでもヒロインの異世界漫遊記

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第五部 第一章 若草物語

69話 売られた喧嘩は、その場で買取!

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ふにゃらふにゃりこうららかな春の日差しがもごもげら心地よいムフゥ~
あぐあぐむにょむにょこの目出度き日をごにょごにょり皆様と共にアフゥ~」

ねぇなんておっしゃっているのうむうむうもふにゃふにゃ?)
式次第のしおりに書いてありますわよごもごもりんうにゃうにゃりん
裏面ですわよ裏面ごにょりごにょハァ~
あ!在りましたわむにょりむにょハァ~

総本山精霊院入学式。
新入生代表
サラアーミア・レイサン・カイエント辺境伯公女

拡声の魔法を使ってもなお、何を言っているのか?
さっぱり分からない。
吐息とうめき声の様なものが聞こえるだけだ。

妙にエロい・・・

カルアンが小刻みに震えている。
まったく仕様が無い奴だ。

”人見知りスイッチ”が入った状態のサラアーミアの言葉を理解できるのは
精霊遺伝子の発現率が一定以上に高い者に限られる。
何故なら彼女が発しているのは人間の言語では無いからである。
上位の上級精霊が発する精霊音声。
それと同等の事をしているのだ。

実を言うとシオンは暫くの間、サラアーミアが何を言っているのか分からなかった。
「多分こうだべな・・・」
と、かんで会話をしていた。

では精霊音声とは何か?
それをここで詳しく説明するのは、とぉ~~~っても長くなるので止めておこう。

簡単に例えると”中間言語”である。
今のネット環境はスマホにせよPCにせよデジタル接続になっている。
しかし一昔前はアナログ電話回線を使っていた。

デジタル機器であるPCとサーバーの間をアナログ回線で繋ぐ為に
音の周波数を細かく変動させてデジタル信号を表現したのだ。
モデムにスピーカーが付いていて、電話の受話器をそこへ乗せる。
ネット接続を開始すると、先ずサーバーへ電話を掛ける。

「ピッポッパッポピッポピッポパ」
「トゥルルルルルルル
  トゥルルルルルルル
   トゥルルルルルルル」

「カチャッ!」

「ピィ~~~ヒョロロ~~~ピィ~~~ガァ~~~」
「ザァ~~~~~~~~~」
「ビコンビコンッ!」

接続中はずぅ~~~っと音がしている。
精霊音声はこれと似ている。
サラアーミアも同じことをしているのだ。
精霊遺伝子は翻訳装置の様なものだ。
発現率が高いと精霊音声を言語として認識し、理解する事が出来る。

結局は長くなってしまった・・・

入学式も終わり、それぞれのクラスへと移動する。
当然ながらサラアーミアと双子は高位貴族の集まるクラスに入る。

「まだ人見知りが治らないの?」
「何が怖いのかしら?」
もごもごごにょそんな事いわれても
「大丈夫よ!」
「私達が付いているから!」
ふにゃふにゃむにゃ~お願い放っておいてぇ~

「やぁ!聖女殿!同じクラスで嬉しいよ!」

声を掛けて来たのはターラム大公の孫、アーノルド・ターラムだ。
彼は今、大変に無礼な振る舞いをした。
聖女であるサラアーミアはこの中で最も高い地位に在る。
そして大公家公女の双子はその次に高い。
大公家と言えども孫であるアーノルドが彼女達と対等に接する事は許されない。
しかも双子を無視したのだ!

「相変わらずねアーノルド」
「礼儀知らずねアーノルド」

双子とは顔見知りである。

「ふん!まがい物に礼儀などいらぬ!」
「なんですって!」
「もう一度、言ってみなさい!」

フリーデルが前国王シルベストの実子で無い事は、関係者の間で秘匿されている。
だが、人の口に戸は立てられない。
内々では何かの拍子に話してしまう。

「言われて困るのはそちらだが良いのか?」
「なっ!」
「っ!」

彼女達もそれとなくは知っていたのだ。
だがそれを二人は禁句としていた。

「何も言い返せまい、恥を知るのなら今からでも遅くはないぞ。
サバンナで野獣と共に暮らすが良い。あっはっはっは!」

「『ズドン!』」

いきなりだった!
サラアーミアの放った衝撃波がアーノルドを吹き飛ばした!


捨てられた人形の様にキリキリと回転しながら壁に叩きつけられて止まった。
誰もが唖然として声も出ない。

ごもらごもうにゃうにゃごにょ我らを侮辱する者は許さない

双子の母タチアーナは親族であり、フリーデルの後見人はダモンの頭領だ。
双子への侮辱はダモン一族への侮辱である。
決して見過ごすわけにはいかない。
だけど、決めセリフくらいはちゃんとしゃべろうね、アーミア・・・

***

オバルト王国大法院
要するに貴族間の揉め事を処理する裁判所である。
裁判官は元老院議員と場合によっては国王、あるいはその代理が出席する。
今回は国王が自ら出張でばって来た。

なにせ被告は大聖女エルサーシアだ。
原告はターラム大公家。
現国王アンドリアはすっかり当惑していた。

(頭が痛い・・・勘弁してくれよぉ~俺にどうしろと?聖女に王権なんて
通用しないよぉ~)

肋骨4本、左腕上腕、左ひざの骨折。
前歯3本破損、鼻骨陥没、むちうち。
全身打撲だぼく
全治120日、リハビリも合わせて半年間の休学。
それが今のアーノルドの状態だ。

(なんで聖女に喧嘩売るかなぁ。ヤバイんだってあいつらは~
 サーシアなんか11歳で何十人も人を殺してんだよぉ。
 戦争でも大暴れしたしぃ。その娘だよ?まともなわけ無いじゃん~)

今回の審理に於いて審判長を務めるナーバル選帝侯が開始を告げる。
やはり同じく気まずそうだ。

「ゴホンッ!あ~、ではこれよりターラム大公家より告訴のあった、
傷害事件に関する審理を行う。
原告側の出席はターラム大公ルイスールに相違ないか?」
「相違御座いませぬ」
「被告側の出席はエルサーシア・ダモン・レイサン・カイエント辺境伯夫人に相違ないか?」
「御座いませんわ、閣下かっか

オバルト王国では10歳で降霊の儀を終えると成人として扱われるが、
女性は14歳、男性は15歳に成るまで後見人が監督責任を負う。

「あ~、なおターラム大公家の代理人を王太子ナコルキン殿下が務められるが、
被告側に異存があらば、今この場で申し立てよ」
「御座いませんわ、閣下」

(あぁ~なんで出しゃばるんだよぉ~このバカ息子がぁ~
 これじゃぁ王家と聖女が対立してるみたいじゃん!
 マズいんだよぉそれはぁ~聞いて無いよぉ~)
 
元々ダモン家や聖女一家を良く思って居なかったナコルキンが、
事件の報告を聞いて憤慨ふんがいしたのだ。
事前に相談もせずに審判の当日、代理人を申し出たのである。
ナコルキンが訴状を読み上げる。

「・・・であるからして、原告は被告に対して謝罪と賠償を要求するものである!」
「被告に反論があらば------」
「お断り致しますわ」
「あぁ~えぇ~・・・っと」
「なんと不遜ふそんなっ!罪を認めぬと申すかっ!」

王太子の威光を軽くあしらわれたナコルキンが額に青筋を立てて声を荒げる。


「売られた喧嘩はその場で買えと娘達に教えてありますの。
日が立つと鮮度が落ちるでしょう?
特に、ダモンを侮辱されたら言い値の倍を払えと」

「何を言っているのだ!こちらは大怪我をしたのだぞっ!」

ナコルキンは分かっていない。
エルサーシアには罪悪感と言うものが無いのだ。
ましてや娘に非が有るなどとは、欠片も思いはしない。

「まだ生きているのでしょう?」

ほらね?
殺さなかったのだから、むしろ感謝して欲しいくらいに思って居る。

「き、貴様!馬鹿にしておるのか!」

馬鹿にしているのでは無いのだよ。
関心が全く無いのだよ、ナコルキン。

(駄目だ!このままでは決裂する!)

「もう良い、其方そなたは下がっておれ」
「父上!」
「此処は公の場である、控えよ」
「ち!・・・はい、陛下・・・」

「のうサーシアよ、私の頼みを聞いて呉れぬか?」
公の場と言いながら、まるでお茶会であるかの様に笑みをたたえて話し掛ける。

「何で御座いましょう?陛下」
こちらもニッコリと答える。

「元はと言えばアーノルドの無礼が発端であろう。謝罪はせずとも良い」
「陛下っ!」
「下がれと申したであろう、太子よ」
「・・・・・・」

「だが私は怪我をしたアーノルドが不憫ふびんだ。
見舞いの品なと送ろうと思う。
其方そなたも娘の同級生をはげましてやって呉れぬか?」

見舞金の名目で良いから賠償金を出せと言う事だ。

「承知致しましたわ、陛下」
「それとな、半年も休学すれば随分と後れを取るであろう?
復学の暁には遺恨を水に流して彼に聖女の秘術を授けて欲しいのだ」

これにはターラム大公が驚いた!

「陛下!それは!」
「不服か?」
「いえ、滅相も御座いませんが・・・」

不服どころか大歓迎だ!
孫が聖人になるかも知れない。
奴らは気に入らないが、それとこれは別だ。

「どうであろうか?サーシアよ」
(頼む!うんと言って呉れ!)

「宜しゅう御座いますわ、陛下」

(助かったぁ~~~~~~!)
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