気弱だと思っていたαに分からされてしまったんですけど

ちょろぎ

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 作り物のお城の前で「律さん、結婚してください」とプロポーズされた。

 同じくプロポーズに成功した人達が期待に満ちた顔でこちらを見てくる。
 驚愕し、口に手を当てた俺は周りの奴には感極まったように映るだろう。
 小さく頷きそのまま顔が上げられない。

「嬉しい!幸せにするからね」

 抱き上げられてキスされた。
 周りからは歓声と拍手が鳴り止まない。

「お幸せに」
 なんて無責任な祝福。


 帰り道。
「もう帰りたい」と言った俺の言葉を都合よく捉えた男はいそいそと車にエスコートした。

 車内には静かなBGMが流れている。
 夢の国を出てしばらくすると風景も現実的な物になってきた。

「何、さっきの。俺、ああいうの嫌なんだけど分かんないの?」

 座席を最大限まで後ろに引き、広々とした助手席で足を組む。

 ふざけんな、あんな所でプロポーズされて断れるわけねぇだろ。
 あー最悪。もう別れるわ。楽しい気分が台無し。

「ごめん、律くん」
「はー⋯、俺の性格分かってくれてなかったんだ。傷ついたな。プロポーズしてもらって何だけど、これからちょっと忙しくなりそうだし、しばらく会えないかも」

 俺に屈辱を味わわせたんだから思い切り罵って捨てたいけど、二人きりなのは怖いから今はあまり刺激はしないように。遠回しな拒絶だけで勘弁してやる。
 罪悪感からか、何も言い返してこない。

 このまま連絡する頻度を減らして自然消滅に持ち込めたらラッキー。
 駄目でも別れ話は人の目がある所で行うのが鉄則だ。

 渡された花束はこのまま車に置いて行こう。
 貴金属だったら換金出来たのに、何だよ花束って。
 本当気が利かねぇな。


 一度嫌なところが目に付くと全てが嫌いになって冷めた。

「本当にごめんね律くん。あ、喉渇いてない?新作の飲みたいって言ってたよね?寄ろうか」

 ドライブスルーが併設されたコーヒーショップは車で混雑していた。

「律くん待たせたくないし、中で買ってくるね」

 やっと一人になって安堵の溜息を吐く。

「どこに行きたい」とか「何食べたい」とか、いつも俺に任せるような流されの癖に、俺が嫌がる事だけはやらかす空気の読めない所が嫌。
 どこか出掛けても自分の感情を口にしない所が一緒にいても楽しくない。
 ⋯何で俺、こんなのと付き合ってたんだ。

「お待たせ」

 手渡されたコーヒーを無言で受け取る。
 まあ、早く気付いて良かったよ。
 これ以上時間を無駄にしたくねえし。
 つうかこのコーヒー、変なフレーバー入ってね?なんてカスタムオーダーしたんだよ。
 最後まで俺の好みすら把握できないとか終わってんな。

 若い内にもっといいαを捕まえたい。
 大学院生なんかじゃなく高収入の奴。親に車を買ってもらうような甘ちゃんじゃない、自立した大人。

 ⋯なんか疲れた。
 明日から婚活するか。
 Ω仲間にオススメのマッチングアプリを訊いて⋯⋯

 突然眠気に襲われてコーヒーが手から滑り落ちた。
 蓋から零れ、マットの上に染みを作る。

「眠くなってきたの?」

 返事するのも怠い。
 最後に視界に映ったのは車の振動に合わせて揺れるコーヒーカップだった。

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