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第2章 「私が領主になって無双する話」

75(1,417歳)「新領主の初仕事」

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「以上の功績をもって、アリス・フォン・ロンダキルアを女辺境伯に叙す!」

 謁見の間にて。小一時間にも及ぶ私の功績読み上げの間、ドレス姿の私はカーテシーし続けた。レベル2000の足腰で良かったよホント。

 陛下がエクスカリバーを私の肩に添えると、謁見の間からはまばらな拍手が。
 まぁそりゃそうだ。前世では5年間の冒険者生活で各領の無理難題をさんざん解決してきたからこその支持者たちだったわけで、いくら陛下が『類まれなる【鑑定】の力』とか『魔族の計略を破った』とか言っても、実感がわかないんだろう。

 ま、せいぜい領を発展させ、度肝を抜いてやるとしよう。
 冒険者としての活動も継続させるので、前世同様指名依頼は受けるしね。


    ◇  ◆  ◇  ◆


 ToDoリストはデートの合間に作っておいた。
 だって同衾どうきん禁止の上に【睡眠耐性】LV10カンストの私は、フェッテン様が寝ちゃったあとはヒマだったので。
 1歳の時、『アイリス』としてショタ・フェッテン様を抱きしめてた時は、ショタ・フェッテン様を無限に吸うことができて、まったく退屈しなかったけどねぇ。
 いやぁ、あれは実に甘美な香りだった! チビには悪いけど、比較にならない。【おもいだす】に永久保管しているよ。

 何の話だったっけ、フェッテン様の匂い……じゃなかったToDoだ!

 まずは治水。
 今は春の中頃。夏手前の雨季が近づくこの季節、建築ギルドが川辺の街だけはなんとか治水を完成させたものの、他の川周辺の街・村は放置状態。時間もあまりないし、これは私が魔法でなんとかするとしよう。

 次にスラム解体と農民量産。軍人さんたちには訓練に専念してもらうので、領都や各街のスラムから攫ってきた浮浪者さんたちを、軍人さんたちが耕してた畑にご案内し、城塞都市の建築ギルドに大金を支払って速攻で家を建ててもらおう。
 浮浪児ちゃんたちには前世同様『アリス学校』を建ててそこに放り込み、読み書き算術を覚えたら新産業の工房や店舗の丁稚に出す。

 お次がさらなる農民の誘致。
 人が増えるから畑も広げる。城塞都市の壁を取っ払い、都市の面積をがばっと広げて壁を作り直し、家を増やす。
 幸い陛下からは、『どうせどんどん人口は増えるから、王国直轄領からは好きなだけ引き抜いて良いぞ』との言を頂いている。『好きなだけ』とは太っ腹だな!
 城塞都市の準備が整ったら、王都と直轄領各街の冒険者ギルドと各農村に公示を出してもらうとしよう。『開墾済の畑と家アリマス。今なら1年間無税!』とかなんとか。

 あとは流れで……。
 ホントは川辺の街以東も開墾開拓したいんだけど、魔物が強くてね……。


    ◇  ◆  ◇  ◆


「というわけでギルマスさん、あとの治水はこっちでやらせてもらいますね」

 ロンダキルア辺境伯領城塞都市の建築ギルドにて、おなじみのギルマスさんにそう告げる。

「は、ははは……さすがはロンダキルア卿」

「いやだなぁ私とギルマスさんの仲じゃないですか。嬢ちゃん呼びでいいですよぉ」

「いや、さすがにそれは……騎士爵家ご令嬢ならともかく、辺境伯家ご当主様であらせられるのですから」

 うーん……ちょっと寂しい気もするけど仕方ないか。

「もしかして、川辺の街の治水工事も、出過ぎたマネ――」

「スターップ! それ以上いけない!」

「そ、そうですな。失言でした」

 ギルマスさん、私がギルド職員のお給金のためにわざと魔法を使わなかったことを理解した模様。

「で、とりあえず畑は今の100倍にするつもりなので、それを前提とした都市の設計とスケジュール立案、人員確保をお願いできますか? もちろん壁の取り壊しと生成は私がやりますので。こちら、当座の資金100億ゼニス」

 虚空からどどんと取り出す白金貨入り革袋。

畏まりました、イエス・マイ・閣下ロード!」


    ◇  ◆  ◇  ◆


「初めまして。アリス・フォン・ロンダキルア女辺境伯と申します。このたび、川の治水工事のことでご相談に伺いました」

 というわけで1つめの街の町長さん宅へ突撃隣の昼ごはん。あ、もちろん実際のメシ時を狙ったわけじゃないからね。

「はぁ? ……はて、どこかでお会いしたような? 先日、街に大量のお金を落としてくれた観光客にどことなく似ているような……娘さん、でしょうか?」

 子供相手にも丁寧に対応してくれる町長さんが、首をかしげている。
 あと『女辺境伯』という自己紹介はスルーされた模様。

「さ、さぁ……その人のことはよく知りませんが、近日中に、できれば明日にでも工事がしたいので、街に公示を出して頂けませんでしょうか? 工事期間は1時間程度です」

 公示の工事を……じゃなかった工事の公示を!(異世界語ギャグ)

「は? 1時間? お嬢さん、何を言って……というかお嬢さんはそもそもいったいどなた? ――あっ」

 町長さん、ハッとした顔になって、

「先月起こったという川辺の街での奇跡のような工事のウワサ……アリス……アリス……城塞都市でいつも浮いている子供の?」

 あはは、ここでも私の定義は『浮いている子供』なのか。
 まぁ確かに、周りから浮いている自覚はある。良くも悪くも。

「昨日届いた、新領主着任の知らせ……し、失礼!」

 町長さん、応接間から出ていき、どったんばったんと音がしたのちに戻って来て、その手には1通の手紙が。これは王家の紋章だな。

「『アリス・フォン・ロンダキルア女辺境伯を新領主として封ず。なお、女辺境伯は大層幼いため、驚かぬように』……ま、ま、まさかあなたが」

「えへへ……その女辺境伯です」

「失礼致しました! はは~っ!」

 言って平伏する町長さんを慌てて起き上がらせる。

「い、いえいえ! 先ぶれもなしにいきなり訪問した私も非常識でしたので」

「川辺の街での奇跡のような魔法の話は聞き及んでおります。しかし、あの時でも工事に数日かかったとお聞きしておりますが……?」

「あの時は建築ギルドの方々がいたので、魔力を節約させてもらっていたのです。でもそれだと川沿いの街や村全てを治水するには間に合わないので……」

「な、なんと……いやしかし、お体のご負担にはならないのですか!?」

 優しい人だねぇ。

「領民の皆さんの生活を思えば、何ほどのものでもありませんよ」

 実際、川辺の街での時は、建築ギルドの仕事を奪わないためにあえてそうしただけで、10億以上ある私のMPなら、まさしく『何ほどのものでもない』。

「め、女神様だ……」

 あー……今世でも始まっちゃう? 女神様呼び。
『新・女神転生』なんちゃって。

「あはは……それに領主ですからお金はあります。MPポーション使いたい放題ですよ」

 ……まぁMPポーションが必要ってのは嘘だけど。

「というわけで、工事日の選定と町民への公示をお願いします。あと、ちょっと今から私の従魔を呼んでもいいですか? 可愛い小鳥なのでご安心を」

「もちろんですとも」

「では失礼して」

 窓を開けさせてもらうと、すぐに1羽のブルーバードちゃんがやってくる。

「工事日が決まったら、この子に『アリス』と告げてください。私の手が空いていれば、ほどなくして【瞬間移動】で来ますので。あと何か困ったことがあったり、魔物や盗賊やなんかの緊急時には強めに呼びかけてもらえれば、すぐに駆けつけます。私、こう見えてSランク冒険者で、竜種も屠れるくらい強いんですよ?」

「な、ななな……」

『アフレガルド王国対魔物警戒網』の構築も忘れない。

「エサは別にやらなくて大丈夫です。この子も【瞬間移動】が使えるので、さくっと移動してさくっと捕食して、すぐまたここに戻って来ますので。あ、ただ、私はこの子の視界を借りることができるので、見られたくないものがあるプライベート空間には置かない方がいいかもです」

「城塞都市でのロンダキルア卿のおウワサはかねがね伺っておりましたが、ご本人様の口から聞かされますと、改めて驚かされますな……」


    ◇  ◆  ◇  ◆


 ってことで、計13個ある川沿いの村や街の長へ挨拶して回る。
 そしてそれは、とある街での昼下がりに起こった。

「いやぁぁあああああッ!!」

 裏路地の方から、声。
【探査】で位置を確認し、声の上空へ【瞬間移動】からの、地上を目視からの地上へ【瞬間移動】。
 年若い女性が組みしかれ、男3人に今まさに乱暴されようとしているところだった。

 ほほぅ……? 私の領内で婦女暴行とか、度胸あるねチミタチ?

「ねぇおじさんたち、何してるのかな?」

 まだ女性が決定的な被害には遭っていないのは【探査】済なので、とりま話しかけてみる。

「「「なっ!?」」」

 いきなり背後に現れた幼児にビビる男3人。

「なんだこのガキゃ!」

「オイ、静かにしろ。てめぇはさっさとその女の口を塞げ。見たところいいとこの嬢ちゃんの様だ。とっ捕まえて売っぱらえばいい」

 なんか妙に冷静なリーダー各っぽい男のひとりが、懐から猿ぐつわを取り出し、私に向かってやってくる。慣れてるなぁ……。
 男が私に掴みかかろうとしたので、一本背負いしてやった。

「「なぁっ!?」」

 息もできない男と、ビビる残り2人。
 ビビりながらも私に襲いかかろうとする残り2人も順番に一本背負い。
 男3人がごっちゃになってるところを【アイアンウォール】製の牢で覆う。

「お姉さん、大丈夫ですか?」

「――ひっ!?」

 ありゃりゃ、ビビられちゃった。そりゃまぁ幼女が男3人投げ飛ばしゃビビられるのも当然か。とりま無詠唱で【リラクゼーション】。

「初めまして、お姉さん。私、アリス・フォン・ロンダキルアと申します。ご存じありません? 城塞都市を守る【竜殺し】の子で、私自身も【竜殺し】の」

「そ、そういえば聞いたことが……なんでも、魔法が物凄く得意だとか」

「そうですそうです! 今のも魔法で投げたんです」

 まぁ嘘だけど。

「なのでそう怯えないで頂けると」

「そ、そうよね……助けてもらったのだし。このたびは、危ないところを助けてくれて、本当にありがとう!!」

「いえいえ。あ、服汚れちゃってますね……魔法で綺麗にさせて頂いても?」

「え? は、はい」

「汚れを【アイテムボックス】! からのぉ【ホットシャワー】からのぉ――」


    ◇  ◆  ◇  ◆


 強姦魔たちは【アイテムボックス】に収納し、領都の牢屋にぶち込んだ。とりま事情聴取してもらうことにする。
 初犯なら検討の余地ありだけど、リーダー格の手慣れた感じからして常習犯だろうねぇ……どころか人身売買っぽい発言もしてたし。もしそうなら犯罪奴隷として【隷属契約】して、鉱山産業のあるどこぞの領に売っぱらうか。
 あ、ちなみにウチの領に鉱山はない。そりゃ魔の森北の大山脈にはいろいろ眠ってるのは【探査】済だけど、風竜ウィンドドラゴンの群れに見守られながら鉱山なんか掘れますかいなー。

 ちなみに、人を捕まえる警察権も、人を裁く裁判権も領主である私にある。
 どころか立法権も行政権も司法権も全部私にある。この世界に3権分立なんて言葉はない。

 はぁ~……しっかし、自領内でこんなベタな犯罪現場を目にすることになるとは。まぁそりゃそうだよね、領民全員が善良なわけじゃあない。
 ってことで、街・村への挨拶と治水のかたわら、ゴミ掃除といきますか!


    ◇  ◆  ◇  ◆


 というわけで、治水工事のない日にはナイスバデーな18歳相当に【エイジング】し、小洒落た町娘風の格好をして、裏通りやスラム街をひとり歩きする毎日。なお、この作戦はフェッテン様とパパンには極秘にしてある。心配されるし、特にフェッテン様は私が自分と私の家族以外の男性に触れられるのを嫌がるから。
 愛が重いわぁ……ウフフ。

 逆に、ママン始め女性陣はあまり心配はしていない模様。まぁ彼女ら自身、強姦魔だろうが通り魔だろうが指先ひとつでダウンできるもの。

 歩くのは昼。さすがに夜は歩かない。夜に女性ひとりがそんな場所を無警戒に歩くのは、さすがに度が過ぎるから。人目がある昼ならまだ自制できても、人目のない夜なら魔が差すってこともあるだろう……。
 そういう人はいつか昼間でもやるようになるって? うーん……線引きが難しいんだよねぇ。少なくとも私は、自分を『魔が差す製造機』にして、いたずらに犯罪者を増産するつもりはない。
『魔が差す製造機』……なんか必殺技っぽい響き。『マガサス流星拳』! みたいな。

 なんてアホなことを考えながら薄暗い路地裏をプラプラしていると、暗がりからいきなり手が伸び、腕をひっ掴まれた! そのまま路地裏のさらに裏へ引きずり込まれる。

「へっへっへっ……上玉じゃねぇか」

 そりゃどうも。

 袋小路になったその場所にいるのは男5人。えっ5人!? 多くない!?
 5人相手とか、心壊れるわ! ファンタジー世界、女性に厳しすぎィ!

 で、私は私を引きずり込んだ男に壁ドンされる。壁際に追い詰められてドンされるのではなく、強く突き飛ばされて壁に背中をドンっと打ちつける。痛いっての。

 汚い猿ぐつわを噛まされ、寝転ばされ、両手を掴まれ、強引に服をはぎ取られ、スカートの中に手を突っ込まれたところでR戦規OEクリア。

はんふぇんふぇふぃはざんねんでしたー。はいへふふぉっふふ【アイテムボックス】!」

 男たちの姿と猿ぐつわが消える。

 しっかしなんでわざわざ破くかなぁ服……まぁ私の魔法裁縫も劣化アラクネさんバリに成長してきてるので、【アイアンニードル】製針とタンパク質製糸でついついっと直せるけどさ。
 というか、今のはさすがにガマンのしすぎか。壁ドンの時点で収納しても良かったかも。というか今のことはフェッテン様には何が何でもナイショだな……。バレたらさっきの男たち皆殺しにされるわ。


    ◇  ◆  ◇  ◆


 そんな感じで、領内の主だった強姦魔どもを一掃した。
 治安維持も領主の大事な仕事だよね!?

 しっかしこれじゃイタチごっこなんだよねぇ……いたいけな女性たちを強姦魔の魔の手(魔重複)から守るにはどうすれば……。

 ――あっ、そうだ!!





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追記回数:19,993回  通算年数:1,417年  レベル:2,200

次回、強姦魔撲滅のための、アリスの斜め上な解決策とは!?
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