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30「呪いの主」

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   💭   🔁   ❤×?381



「…………え?」僕は隣を見て、そこで俯いている星狩さんの姿を認めて、「いや、居るじゃないですか、ここに」思わず、半笑いになる。が、困惑はすぐさま、どす黒い怒りに変わる。「まさか、頼子さんまで無視シカトに加わって――」

「かるたくん!!」

 頼子さんに、肩を掴まれる。

「触んなや!!」

「違うの。落ち着いて、かるたくん。――そうだ!」頼子さんがスマホを取り出して、星狩さんと僕のツーショットを撮影する。「ほら、見てごらん」

「一体何を――」

 絶句した。
 そのカメラ画像には、星狩さんが映っていなかった。

「こ、こんな悪質な画像まで用意して――」

「ほら、撮影日時を見てみなさい。これは私が、たった今撮影したものよ」

「信じられるもんか!」

「かるたくん、信じたくないのは分かるけど――」

「う、うるさいうるさいうるさい!!」

 心がぐちゃぐちゃになる。頼子さんは――頼々子さんは僕の唯一の味方だった。だったはずだ。けど、そんな頼々子さんまでもが星狩さんをのけ者扱いする。何を信じればいいのか分からない。何が本当なんだ? だって星狩さんは、ここに居るじゃないか!!

「はぁ……ねぇ、君たち!」頼子さんがクラスの連中に呼び掛ける。「君たちのスマホ、ちょっとだけ貸してもらえないかな?」

 最初に、興味津々といった様子でこちらを伺っていた『インスタ女子組』が寄ってきた。

【セミプロダンサー】舞姫「えっと、どうぞ」

「ありがとう」スマホを受け取った頼子さんが、僕と星狩さんを撮影し、「ほら」

 見せつけられるカメラ画像には、やはり星狩さんの姿が無い。

【映えの権化】蝿塚「なになに、何の話? 映える話?」

【セミプロダンサー】舞姫「なんか、みんなのスマホでコイツの事撮影しろってさ」

【映えの権化】蝿塚「どういう話?」

 頼子さんが、痛ましそうな目で僕を見てから、「みんなも協力してくれるかな? 『呪い』を解く手掛かりになるかもしれないの」

 クラスの連中が、僕に向かって一斉にスマホを掲げる。
 クラスの連中が僕と星狩さんを撮影し、次々と、その画像を僕に見せつけてくる。
 様々なアングルの、十数枚の写真。

 ……そのすべてに、星狩さんの姿は無かった。
 僕は、隣を見る。星狩さんが、俯いたまま佇んでいる。居る。確かに、ここに、居るんだ。!!

「し、信じへん!」言いながら、僕は泣きそうになっている。世界全部に裏切られたような、何が現実で何がウソなのかが分からなくなってしまったような感覚。「こいつらみんなグルなんや! だってそうやろ? こいつらは星狩さんの事を無視シカトしてて――」

【セミプロダンサー】舞姫「また言ってるよ、コイツ」

【映えの権化】蝿塚「いつもの事でしょ。それより映える物は――」

 頼子さんが、ぱんっ、と手を叩いた。
 クラスの意識が、一斉に頼子さんに集まる。

「みんな、ホシカリさんって子に心当たりはある?」

【犬可愛がり】犬飼「心当たりも何も――」

【陽キャリーダー】蹴鞠「クラスメイトです……でした。けど、それが何か?」

「そのホシカリさんって子が、『呪い』に関わっている可能性があるのよ」

【猫可愛がり】猫目「じゃあやっぱりこれって、スターハンターの呪いなの!?」

【陽キャリーダー】蹴鞠「猫目、だからそういうのは止めろって――」

【猫可愛がり】猫目「だってそうじゃない! あの子があんな――――……、入れ替わるみたいに気味悪い転校生がやって来て!」『陽キャ男子組』の方を指差して、「米里! 何もかもアンタの所為よ!!」

【お料理YouTober】米里「ち、違う! 誰の所為って言うならみんなの所為だろ!? 自分の所為にされたくないからって、いい加減な事言うな!!」猫目さんに掴み掛ろうとするも、蹴鞠くんに押し留められる。

【陽キャリーダー】蹴鞠「おい、落ち着けってリョーリ」

【お料理YouTober】米里「俺をそのあだ名で呼ぶな!!」絶叫する。

【陽キャリーダー】蹴鞠「な、なんだよ。気に入ってたんじゃないのか?」

【お料理YouTober】米里「あぁ、気に入ってたよ。親がトチ狂って付けた王斗ってDQNネームだったけど、それがきっかけで料理の楽しさに目覚めて、YouTobeでもそこそこ成功出来た」

【陽キャリーダー】蹴鞠「だったら――」

【お料理YouTober】米里「だけど、あいつが、!?」泣き叫ぶ。「あいつが、よりにもよってあの配信で『リョーリくん』って呼んだんだ。ウチの制服姿で!! 俺は配信する度に、特定されやしないかってハラハラしてるんだ。呪われたあだ名だよ」

 スターハンター?
『あの配信』?
 リョーリくん?

 何か、何かが繋がりそうな気がする。
 ずっとずっと、気が付きそうで気が付かない振りをし続けてきた大切な何かが、目の前に現れようとしている……そんな気がする。

【お料理YouTober】米里「それに俺は、ちゃんと毎朝星狩の席に花を置いてるんだぞ!? なのに、いつもいつも誰かが花を隠しやがって――」





「――お前が犯人かぁあああああああああッ!!」





 僕は思わず絶叫していた。
 憎き敵が、この1ヵ月の間、探し続けていた犯人が今、目の前にいる!!
 米里に掴み掛る。が、ケンカなんて一度もした事が無い僕は、米里に簡単に払いのけられてしまう。

「毎朝毎朝毎朝毎朝!! 星狩さんの席に花なんて置きやがって、何様のつもりや!?」

【お料理YouTober】米里「やっぱりお前だったのか……お前こそ、何様のつもりだ!? 供養の為に用意した花を隠すなんて真似――」

「は? 供養? クラス全員で無視シカトして、その上座席に花まで置いて、陰湿なイジメを『供養』やって!? 頭湧いとるんとちゃうか!?」

【お料理YouTober】米里「頭おかしいのはお前の方――」





 ――ぱんっ





 と、頼子さんが手を叩いた。途端、場が静まり返る。

「かるたくん」頼子さんが、僕を見詰めてくる。「ホシカリさんの、声を聞いた事は?」

「な、無い。けどそれは、イジメによるストレスで――」

「ホシカリさんの匂いを嗅いだ事は?」

「か、嗅ぐわけないやん、そんなん!」

「ホシカリさんに――――……触れた事は?」

「な、無いよ!」クソ雑魚DT陰キャを舐めないで欲しい。

「……そういう事、か」頼子さんが、僕の手首を掴む。「ほら」

 女性らしからぬ強い力で、ぐいっと引っ張られる。

「え、ちょっ――」

「触ってみなさい」

 頼子さんが、僕の手を星狩さんの居る方へ引っ張り、
 ぼ、僕の手が、星狩さんの胸の辺りに当たりそうになって――














































 ――――――――――――――――すり抜けた。

 ばつんっ、という音とともに、眼帯の紐が切れた。
 左目に映る、その光景は。
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