68 / 121
レッスン65「オークの集落 (7/8)」
しおりを挟む
「お、お師匠様!」
「分かってる! 【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎――万物解析】!」
西の森上空を真っ赤な魔方陣が覆い、
「…………見つけたッ!! が」
お師匠様が顔色を悪くする。
「マズイさね。ノティア、魔力は大丈夫かい?」
「いけますわ!」
こちらに駆け寄ってきたノティアが、力強くうなずく。
「十二時方向2.4キロ先だ!」
ノティアが僕とお師匠様の腕をつかんで、
「行きます――【瞬間移動】!」
■ ◆ ■ ◆
「――あっ、クリスさん!?」
転移した先は森の中。
目の前にいたエンゾが、驚きながらも声を潜めて言う。
「この向こうがオークの集落だね?」
お師匠様の問いかけに、エンゾがうなずく。
「は、はい! その通りです! 難民の子をさらったオークの集団を追ってここまで来たんですけど、やつらあの奥に入っていって……まさか集落が出来てるなんて思ってもみなくて……ッ!」
見れば原始的な馬防柵があり、木々の間に鳴子が張り巡らされている。
その奥にはいくつかの天幕が見える。
「あれ、そういえばドナは!?」
この場にはエンゾとクロエしかいない。
「マズイと言ったろう? あの小僧は――」
「そ、そうなんです! ドナがひとりで集落の中へ突っ走っちまって!」
「そんな――…」
「大丈夫だ。クリス、オークの集落ごと【収納】する。気を失うかもしれないが、気張るんだよ!」
「わ、分かりました!!」
「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎――万物解析】! からのぉ【視覚共有】」
お師匠様経由の視線の先で、いくつもの巨体が光となって蠢いているのが見える。
数十体? いや、もっと居るかも――
しかも、中にはさっきのオーク・ジェネラルのような巨体の影も見える!
……やれるのか、僕に?
相手は一角兎とは違う、道具を使うだけの知能を持った魔物だ……つまり【精神力】を持った、魔法に抵抗する力を持った相手だ。
しかもジェネラルと言えば、Bランクパーティーが損害を覚悟しながら挑むレベルの怪物だ。
さっき、フェンリス氏とノティアが軽々と屠っていたのは、彼らがAランク冒険者であり、トップクラスの実力者だから。
――いや、いまは迷っているヒマなんてない!
何よりお師匠様がやれと言ったんだ。
お師匠様がやれと言ったということは、いまの僕ならやれるということ!
――よし!
「【無制限収納空間】ッ!!」
■ ◆ ■ ◆
「――っ」
ひどい頭痛で目覚めた。
さらには猛烈な吐き気。
僕は飛び起きて、【収納空間】の中へ嘔吐する。
「はぁっ、はぁっ……うっ」
続く吐しゃ物の中には血の味が。
「【大治癒】……大丈夫かい?」
僕に膝枕をしてくれていたらしいお師匠様が、背中を撫でてくれる。
治癒魔法が効いて、途端に楽になった。
「はぁ……はい、大丈夫です」
言いつつも、吐血したのはショックだった。
「百数十体ものオークだ。中にはジェネラルも居た。それを一気に【収納】したんだ……だいぶ無理させちまったね。丹田が傷ついちまったんだ」
「いえ……それよりドナと難民の子は……?」
「無事だよ。ほら――」
どうもここは集落の広場か何からしい。
周囲には、あれほどうじゃうじゃいたはずのオークの姿がまったくない。
すべて、僕の【収納空間】の中に【収納】されてしまったのだろう……我ながら、本当に恐ろしい威力を持った魔法だ。
「そこにいるだろう」
お師匠様が、そんな広場の一角を指さす。
見れば、ボロボロの装備をまとったドナと、そんなドナにすがりついて泣いている難民の女の子がいた。
お師匠様が治したのだろう……怪我はなさそうだ。
「あはは……すごいやドナ、好きな子をちゃんと守り切れたんだね」
ドナに笑いかけると、
「うっす……クリスさんのおかげで命拾いしました。ありがとうございます」
「僕はそんな……ひとりでオークの集落に飛び込むなんて、カッコいい――」
言いかけて、気づいた。
女の子が、ドナにすがりついて一向に泣き止まないことに。
ドナの……………………利き腕が、肘から先が無くなっていることに。
「ど、ドナ、その腕……」
「いやぁ、ちょっとヘマして、豚どもに喰われちまいまして……あ、でもアリスさんに治してもらったから、もう大丈夫っすよ!」
「だ、大丈夫って言ったって、それ……」
「わ、私の所為なんです!」
女の子が泣いている。
「ドナくんが、私をかばって――…」
「お師匠様……?」
お師匠様が首を横に振る。
「残念だが、【大治癒】では部位欠損は治せない」
「そ、そんな――…」
「だが、奥の手がある」
お師匠様がニヤリと微笑む。
「な、何ですか奥の手って……?」
「決まっているだろう? 【無制限収納空間】さ」
***********************
次回、【収納空間】で腕の治療?
アリス・アインス師匠「【収納空間】使いは外科医」
「分かってる! 【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎――万物解析】!」
西の森上空を真っ赤な魔方陣が覆い、
「…………見つけたッ!! が」
お師匠様が顔色を悪くする。
「マズイさね。ノティア、魔力は大丈夫かい?」
「いけますわ!」
こちらに駆け寄ってきたノティアが、力強くうなずく。
「十二時方向2.4キロ先だ!」
ノティアが僕とお師匠様の腕をつかんで、
「行きます――【瞬間移動】!」
■ ◆ ■ ◆
「――あっ、クリスさん!?」
転移した先は森の中。
目の前にいたエンゾが、驚きながらも声を潜めて言う。
「この向こうがオークの集落だね?」
お師匠様の問いかけに、エンゾがうなずく。
「は、はい! その通りです! 難民の子をさらったオークの集団を追ってここまで来たんですけど、やつらあの奥に入っていって……まさか集落が出来てるなんて思ってもみなくて……ッ!」
見れば原始的な馬防柵があり、木々の間に鳴子が張り巡らされている。
その奥にはいくつかの天幕が見える。
「あれ、そういえばドナは!?」
この場にはエンゾとクロエしかいない。
「マズイと言ったろう? あの小僧は――」
「そ、そうなんです! ドナがひとりで集落の中へ突っ走っちまって!」
「そんな――…」
「大丈夫だ。クリス、オークの集落ごと【収納】する。気を失うかもしれないが、気張るんだよ!」
「わ、分かりました!!」
「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎――万物解析】! からのぉ【視覚共有】」
お師匠様経由の視線の先で、いくつもの巨体が光となって蠢いているのが見える。
数十体? いや、もっと居るかも――
しかも、中にはさっきのオーク・ジェネラルのような巨体の影も見える!
……やれるのか、僕に?
相手は一角兎とは違う、道具を使うだけの知能を持った魔物だ……つまり【精神力】を持った、魔法に抵抗する力を持った相手だ。
しかもジェネラルと言えば、Bランクパーティーが損害を覚悟しながら挑むレベルの怪物だ。
さっき、フェンリス氏とノティアが軽々と屠っていたのは、彼らがAランク冒険者であり、トップクラスの実力者だから。
――いや、いまは迷っているヒマなんてない!
何よりお師匠様がやれと言ったんだ。
お師匠様がやれと言ったということは、いまの僕ならやれるということ!
――よし!
「【無制限収納空間】ッ!!」
■ ◆ ■ ◆
「――っ」
ひどい頭痛で目覚めた。
さらには猛烈な吐き気。
僕は飛び起きて、【収納空間】の中へ嘔吐する。
「はぁっ、はぁっ……うっ」
続く吐しゃ物の中には血の味が。
「【大治癒】……大丈夫かい?」
僕に膝枕をしてくれていたらしいお師匠様が、背中を撫でてくれる。
治癒魔法が効いて、途端に楽になった。
「はぁ……はい、大丈夫です」
言いつつも、吐血したのはショックだった。
「百数十体ものオークだ。中にはジェネラルも居た。それを一気に【収納】したんだ……だいぶ無理させちまったね。丹田が傷ついちまったんだ」
「いえ……それよりドナと難民の子は……?」
「無事だよ。ほら――」
どうもここは集落の広場か何からしい。
周囲には、あれほどうじゃうじゃいたはずのオークの姿がまったくない。
すべて、僕の【収納空間】の中に【収納】されてしまったのだろう……我ながら、本当に恐ろしい威力を持った魔法だ。
「そこにいるだろう」
お師匠様が、そんな広場の一角を指さす。
見れば、ボロボロの装備をまとったドナと、そんなドナにすがりついて泣いている難民の女の子がいた。
お師匠様が治したのだろう……怪我はなさそうだ。
「あはは……すごいやドナ、好きな子をちゃんと守り切れたんだね」
ドナに笑いかけると、
「うっす……クリスさんのおかげで命拾いしました。ありがとうございます」
「僕はそんな……ひとりでオークの集落に飛び込むなんて、カッコいい――」
言いかけて、気づいた。
女の子が、ドナにすがりついて一向に泣き止まないことに。
ドナの……………………利き腕が、肘から先が無くなっていることに。
「ど、ドナ、その腕……」
「いやぁ、ちょっとヘマして、豚どもに喰われちまいまして……あ、でもアリスさんに治してもらったから、もう大丈夫っすよ!」
「だ、大丈夫って言ったって、それ……」
「わ、私の所為なんです!」
女の子が泣いている。
「ドナくんが、私をかばって――…」
「お師匠様……?」
お師匠様が首を横に振る。
「残念だが、【大治癒】では部位欠損は治せない」
「そ、そんな――…」
「だが、奥の手がある」
お師匠様がニヤリと微笑む。
「な、何ですか奥の手って……?」
「決まっているだろう? 【無制限収納空間】さ」
***********************
次回、【収納空間】で腕の治療?
アリス・アインス師匠「【収納空間】使いは外科医」
78
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
英雄転生~今世こそのんびり旅?~
Mew
ファンタジー
魔王の手によって蝕まれていた世界を救いだした“英雄”は“魔王”との戦いで相討ちに終わってしまう。
だが更なる高みの『異界』に行く為に力を振り絞って己の身に〈転生〉の魔法を掛けて息絶えた。
数百年が経ったある日“英雄”は田舎で暮らす家庭に生まれる。
世界の変化に驚きつつ、前世では出来なかった自由な旅をしたいと夢を見る。
だが元英雄だけあり力がそのままどころか更に規格外の力が宿っていた。
魔法学園でもその力に注目を置かれ、現代の“英雄”の父親にも幼いにも関わらず勝利してしまう程に。
彼は元“英雄”だと果たしてバレずに旅を満喫できるのだろうか……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
不定期更新になるかもしれませんが、お気に入りにして頂けると嬉しいです。
コメントもお待ちしています。
作者の都合により更新できる時間がなかったので打ちきりになります。ごめんなさい。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
異世界帰りの最強勇者、久しぶりに会ったいじめっ子を泣かせる
枯井戸
ファンタジー
学校でイジメを受けて死んだ〝高橋誠〟は異世界〝カイゼルフィール〟にて転生を果たした。
艱難辛苦、七転八倒、鬼哭啾啾の日々を経てカイゼルフィールの危機を救った誠であったが、事件の元凶であった〝サターン〟が誠の元いた世界へと逃げ果せる。
誠はそれを追って元いた世界へと戻るのだが、そこで待っていたのは自身のトラウマと言うべき存在いじめっ子たちであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる