君の物語

崑崙

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第1章

Ⅴ 対岸に咲く花

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「ねぇ、君の名前は?」


リンクの少し後ろを歩く少女が問いかけてきた。


「僕はの名前はリンクだよ。リンク・ロット」

リンクは足元を探しながら答えた。
ネムの花探しを再開し、最初は日当たりの良い場所を中心に探していたが今度はそのような考えは捨て、足下をくまなく探しながら先に進んでいた。


「リンクか、、、私はアルル・ノントス。アルルて呼んでね。君の服装、変わってるよね、なんていうか前時代的というかさ。」


それを言われてリンクは「え?」と驚いた。
リンクは村から出たことがなかったので、自分の格好が変わっているとは思ったことがなかったのだ。
しかし、言われてみると目の前の少女の格好と比べるとだいぶ雰囲気が異なる。


アルルは真っ黒な髪をしていた。
前の横の髪だけを長く伸ばしており、後ろは短く、首が見えている状態であった。
リンクの村では女性は髪が長いのが当たり前だったので、アルルのような髪型は生まれて初めてみたのであった。

また服装もコトナ村では見たことがない形状と色合いをしており、まるで異世界の人間に見えていた。


「僕からしたら、君の格好の方が不思議でならないよ」


リンクは、はははっと困ったように笑いアルルに話しかけた。


「あー、確かにそうかもね。私チャムカ出身だから。」


コトナ村からでたことのないリンクからするとアルルとの会話は新鮮なものばかりで森の外に広がる世界はとてと興味が湧いた。

この世界は四つの国と一つの島からできていて、この森はウォーフォリア国とアルギニス国との間にあり、意志のある木が生息するため迷いの森と呼ばれ外部の人は一切立ち寄らないということ。
太古の植物が生息しているこの森は多くの人間が狙い侵入を試みるが、戻ったものは1人もいないということ。

アルルの出身地であるチャムカはアルギニス国にあり、アルギニス国の民は主に魔法を使い生活をしている為、他国からは魔法国家と言われていること。


リンクは自分の知らない広い世界が森の外に広がっていることを知り、胸を高鳴らせていた。


そんな会話をしながら歩いていると2人は森の先に川が流れているのを見つけた。
川に近づくと、川岸で見たことのない生き物が丸くなって寝息をたてながら寝ていた。


犬のような垂れ下がった大きな耳にトカゲのような尻尾が生えた黄色い小さな竜のような生き物はスヤスヤと眠っている。

あれはなんなんだと、リンクが固まっていると後ろにいたアルルが声をかけた。



「ココ!こんなところにいたの!」


アルルが川岸で眠る竜に近づくと、声に反応してココは目を覚ました。


「ふわー、、、アルル、遅かったね。魔法失敗して吹っ飛んでったから心配したよ」

目を擦りながら大きな欠伸をするココの口からは立派な牙が顔を見せていた。
その言葉に少し怒っている様子のアルルとそれをみてケタケタ笑うココを呆然とみるリンクは、今日は変わった人達と出会う日だなと思うと同時に、彼らに興味が湧く自分がいるのも確かであった。

「アルル、ネムの花をみつけたから早く摘んで森の中の村へ向かおう」


ココの言葉を聞いてリンクは「えっ!!」
と大きな声を出してしまった。
リンクの声にアルルとココがこちらを向いた。


「あれ、、、君は、、、、。ふーん、そっか、アルルをここまで連れてきてくれたんだ」


ココの言葉を聞いてアルルが「そうだよ!森で迷ってて、て話をしたらついてくればあの変な木が動くこともないから、て一緒に連れてきてくれたの」


アルルの話を聞いてココが近づいてきた。
羽根はないが浮いているこの生き物はリンクの常識から外れた生態をしており、理解が追いついていなかった。
飛んでリンクの顔の近くまで来たココはリンクのことをジロジロと上から下まで舐め回すようにみて「あんた、この森の住人?」と聞いてきた。

リンクが無言で首を勢いよく縦に何回も頷くとココはニヤリと笑って、川に目を向けた。


「あんたもネムの花探してたんじゃないのか?あそこ、向こう岸にネムの花が咲いてるから」


ココの言葉を聞き川の向こう岸に目をやると、紫色の花が咲く一画が目に入った。
陽の光を浴びて、花が輝いているのを感じ見惚れているとアルルが動き出した。

「よっしゃ!この花があればこの森を抜けられるって訳ね!」


花を摘みに向こう岸に渡ろうとするアルルをココは急いで止めに入った。


「待て待て待て!川をよく見て、ここにいるのはただの魚じゃない。」


「え?」とリンクも一緒になりアルルと川を覗き込んだ。


川の中を泳いでいたのは黒い蛇のように細長い魚だった。


「げー、なにこれ気持ち悪い。」


アルルが眉間に皺を寄せ舌を出しながら嫌悪感を表していた。


「これって、、、ルパ?」


リンクが同じように川の覗き込みココに質問した。
リンクはこの魚に見覚えがあった。
そう、今朝この魚のスープを飲んできたのだ。
ルパはコトナ村の食事によく出される魚で、スープにしたり丸焼きにしたりとリンクには身近な魚であった。
しかし泳いでいるルパを見るのは初めてであり少し戸惑っていた。
なぜならば、コトナ村では狩人の仕事をする男性陣が森へ行き村人全員分の食材の調達をしてくることになっている。
リンクの父親もその一人であった。
父達、村の狩人がとってきた魚や鳥、動物を使って村の女性陣は食事をつくる。

成人したばかりのリンクは狩りに出た経験もなければ、女性ではないので調理に携わることもない為、生きているルパを見るのはこれが初めてであった。

「そう、この魚はルパ。もう何百年も前に絶滅したと言われている牙に猛毒を仕込んだ肉食の魚だよ。この森でしかもう生息してないだろうね。」


ココからの話を聞いて二人は耳を疑った。

猛毒、、、?肉食、、、?



リンクは今朝なにも考えず食べていた魚のスープが実はそんな危険な魚だったとは露知らず、どうやって川を渡るか頭を悩ませていた。


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