ダンタリオンと勇者

小栗とま

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魔界の章

14 パンデモ二ウムの密談

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 「魔王の指輪」を手に入れたレヴィアタンは、魔界の王宮であるパンデモニウムにやってきていた。

 空席の王座と、その前に倒れている無数の骸骨の戦士たち。
 サタンが勇者に封印されて間もないそこに、レヴィアタンと、他に2人の悪魔――いずれも、7つの大罪に属する上級悪魔である――が集っている。

「計画通り、ことは進んでいるようね」

 そう言って、薄紫色の長い髪をかきあげたのは、悪魔ルシファー。
 ルシファーは、人間の欲望のうち「傲慢」を好む悪魔であり、7つの大罪のなかでもサタンに次ぐ実力者である。
 人間の美しい女性の姿をしており、背中には漆黒色の4対の羽を持つ。

「はい。ルシファー様。魔王の指輪をお持ちしました」

 レヴィアタンは、ルシファーの前で頭を垂れ、魔王の指輪を差し出す。

「よくやりましたね、レヴィアタン。
 勇者を使ってサタンを封印し、そしてこの指輪までも回収した。
 あなたの功績は賞賛に値します」

 ルシファーは、レヴィアタンが差し出した魔王の指輪を手に取り、目を細めて眺めていた。

「光栄です、ルシファー様」

 ルシファーを魔王に推薦してきたレヴィアタンは、光悦の表情を浮かべる。

「ルシファー様。お気をつけくだせえ。本物かどうか、わかったもんじゃねえ」

 そう横槍を指すのは、同じくルシファーを魔王に推す、悪魔ベルゼブブである。

  人間の欲望のうち「暴食」を愛している彼は、豚の耳とワニの尻尾を持つ人間の男の姿をしていて、ふくよかなお腹を揺らしながらレヴィアタンをあざけわらう。
  身長5メートルに及ぶ巨体であり、でっぷりと床に座りこんでいてもその迫力は凄まじい。

「はあ?脂汗でも目に入ったか?どう見てもサタンが指に着けていた指輪じゃないか!」

 自身も巨大な蛇の下半身を持つレヴィアタンは、負けじとベルゼブブに言い返す。

「なんだと?!」

 ベルゼブブは唾を飛ばしてレヴィアタンに食らいつくが、レヴィアタンは、蛇のように長い舌をチロチロと出して煽る。

「嫉妬はなしにしてほしいナァ?」

 人間の欲望のうち「嫉妬」を司るレヴィアタンは、悪魔であろうと嫉妬しているものを見るのは愉快らしい。

「静かになさい」

 圧のあるルシファーの声が響き、ベルゼブブとレヴィアタンはおずおずと争いを止めた。

「私たちが、嫌悪するべき相手は?
 ――愚かな劣等種である人間です」

 ルシファーの言葉に、レヴィアタンとベルゼブブは興奮を露わにする。

「けけ、おっしゃるとおりでさ!
 不気味な骸骨の人形たちを使って、人間を征服した暁にゃあ…。
 人間の魂を、たらふく喰らうことができる!」

 ベルゼブブは、決して満たされることのない、ふくよかな腹を撫でながら、満腹になる瞬間を夢見てうっとりとする。

「ふふ。もとよりルシファー様は、魔界に収まるお方ではないのだ。
 そしてルシファー様の隣には私が居る!!」

 レヴィアタンは、崇拝するルシファーの片腕たる自分を誇り、光悦に浸るのだった。

「フフ…それでは、新たな魔界の誕生を祝いましょう」

 ルシファーは魔王の指輪をゆっくりと指にはめる。
 そして、彫刻の様に美しい顔に怪しげな笑みを浮かべ、その手を高く上げた。

 それは、パンデモニウムの地下に控える大群――魔王の指輪に従う骸骨の戦士たちへの、新たな魔王の君臨を告げる合図だった。

「魔王様、万歳!」

 レヴィアタンとベルゼブブの賞賛を受けながら。
 ここに、新たな魔王が君臨した。


 その時。
 力を封印されたせいで小さく小さく「手のりサイズ」にまで縮んだ魔王サタンが、その短足でよちよちとパンデモニウムを出ていっていた。

 その見た目は、白くて丸い目がふたつ浮かんでいる以外には全身真っ黒であり、ちょこんとした角が生えている。
 縫いぐるみのような可愛らしいフォルムだ。

 ちびすぎて、ルシファーたちの目にはとまっていない。
 見られたとして、まさかあの魔王の本体がコレとは思わないのだろう。

 そんな「ちびサタン」はパンデモニウムをこっそりと後にした。
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