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魔界の章
38 ベルフェゴールの招集(パブロの視点)
しおりを挟む「くまさん、ここで一休みしよう」
と、ベルフェゴールが声をかければ、彼女がまたがる巨大熊は座った。
その振動で地面が揺れ、俺も蜘蛛の糸の中で上下に揺らされた。
(ベルフェゴール……この子も7つの大罪か?)
只者じゃないオーラを感じるのは、彼女が平然と乗りこなしている熊のせいだろうか。
常に牙をむき出しにする様は凶暴そのもので、とても「くまさん」と呼びかける気にはならないんですけど……。
「君が外に出るなんて珍しいね」
アスモデウスが驚いたような声を上げる。
ベルフェゴールはまた眠たそうに欠伸をすると、一息ついてゆっくりと話し始めた。
「ルシファー様から呼び出し。パンデモニウムに来てって…ふう」
それだけ話すと、彼女は疲れたみたいだ。
こてんと首を垂れて休んでいた。
「ちょっとぉ!まさか、ルシファーが例の指輪を手に入れたの?
ま、まあどうでもいいけどさあ!」
マモンが欲しいおもちゃを逃した子供みたいに、足をバタバタと動かす。
「僕らを呼びつけるってことは。
そうなんじゃない」
アスモデウスは「やれやれ」といった感じだ。
(……例の指輪?)
7つの大罪にとって重要なアイテムらしい。
俺は頭にメモしながら、彼らの様子の観察を続けた。
「それと。ルシファー様からもう一つ伝令。
勇者はこれ以上、生かしておくな。だってさ」
(……ん?)
ベルフェゴールのゆるーい口調で、今とんでもない発言が聞こえたきがした。
「せめて彼の魂を堕としてからじゃだめ?」
と、アスモデウスが駄々をこね始める。
「そうだよ。私だって勇者くんと遊びたい」
マモンも駄々をこね始める。
「でも……新しい魔王様の命令だから……」
と、ベルフェゴールは面倒くさそうに首を傾けた。
「それに。魔王の軍隊も……来ちゃってるし」
と、彼女が言ったとおり。
「……!!」
(あ、あれは……!!)
俺は、俺めがけて進軍してくるヤバい大群をみた。
パンデモニウムでも戦った、骸骨の戦士たちだ。ざっと百体はいる。
(あいつら……!パンデモニウムから出張してきたのか!?)
俺はもう二度と見たくもなかった骸骨の大群を、忌々しい思いで睨みつける。
「そういうわけだから。
そこの勇者の人は、生存不可能。……ふああ」
と、ベルフェゴールが呑気に欠伸をした。
よくそのテンションで俺に死刑宣告できるな!
「~んっ!!~ん!!」
俺は、蜘蛛の糸の中で必死にもがくが、当然の様にこの糸は解けようとしてくれない。
「じゃあ。私は伝えたからね。
……すぐにパンデモニウムに集まるように」
そう言い残してベルフェゴールは消えた。
マモンとアスモデウスは、ベルフェゴールの伝令に抵抗する様もなく「仕方ない」という感じで応じていた。
「あれを動かせるってことは。ほんとにルシファーが例の指輪をね。
なら逆らうのも面倒だ。魔王なんてめんどくさい立場になりたい気持ち、僕にはわからないんだけど」
アスモデウスが溜息をつく。
「ごめんね、勇者くん。そういうわけだから。
君のうぶな反応見るのは結構、楽しかったよ」
アスモデウスはそう言い残して、「ヘアメイクをしないと~」とか言いながら、サキュバスのお姉さんたちとイチャイチャして消えていった。
(え……!?俺の魂欲しいんじゃないのかよ!!)
アスモデウスの変わり身の早さに驚愕していると、マモンはマモンで大蜘蛛に命じて俺をあっさりと道端に頬り投げた。
「ん!?」
蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにされたままで、俺は声を上げることもままならない。
「そうだな~。ちょうど勇者君にも飽きてきたし。もういいや」
とか言ってる。
(飽きるのはやっ……!!)
状況が変われば、要らなくなった駒なんて直ぐにポイっと捨てるってことか。
「オレもこいつを糸で縛りあげられたので満足っす」
と、大蜘蛛がうっとりとした声をだした。
(あの蜘蛛…俺に一回やられたの根に持ってんのかよ……)
と、俺は呆れ顔になる。
そしてマモンは、元気に「バイバーイ!!」と手を振りながら、蜘蛛と共にそのまま消えた。
「おい~~!」
俺は悔しさのあまり、口元の糸を食いちぎる。
(……っ!!やばいぞ)
蜘蛛の糸に縛られたまま放置された俺は、迫り来る骸骨の戦士たちに対してなす術もない。
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