ダンタリオンと勇者

小栗とま

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魔界の章

40 クロムの力(パブロの視点)

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「ふぐっ!!」

 骸骨の戦士から逃げだした俺は、行く手に立っていた巨漢に体当たりした。

「な…?」

 と、見上げれば。
 そこには、羊骨の仮面の悪魔がいた。

「ダ、ダンタリオン――!!」

 俺は巨大なダンタリオンの図体を見上げて、彼の顔を見た。
 なんだか久しぶりの再会だ。

「クロムから大体の状況は聞いた」

 そう言うダンタリオンの手には、確かにクロムが握られている。

「大丈夫か?兄ちゃん。血だらけじゃん」

 と、クロムが胴体を傾げる。

「え…?」

 自分じゃ気がつかなかったけど、固い蜘蛛の糸の中でもがいたせいで頬や体のあちこちに擦り傷ができ、そこから血が滲んで流れていたらしい。

「また治療しないとな」

 と、ダンタリオンが俺の頬を指で撫でた。

「……あ、いや今はそれより、あの骸骨!」

 俺が骸骨の戦士の方を慌てて指さす。

「そうだな。これを預かってくれ」

 ダンタリオンは骸骨の戦士を一瞥すると、持っていたトランクを俺に渡した。

「え」
 
 ダンタリオンは逃げる気配もなく、骸骨の戦士の前に立ちはだかった。
 そしてクロムは剣先を長く伸ばして戦闘モードに入る。

「何してんの!早く逃げようぜ!」

 俺が引き留めるが、ダンタリオンには響いていない。
 
「すぐ終わらせる」

 ダンタリオンは俺にそう言って、クロムを手に骸骨の軍団の中へ消えた。

「ダンタリオン……!!」

 それからはもう早かった。
 ダンタリオンが豪快にクロムを振り回し、次々と骸骨の戦士をなぎ倒していく。そこに風が巻き起こり、砂が舞い上がり、まるで天地をつくりかえる精霊がそこにいるようだ。

「す、すげえ……」

 息をのむ俺の横に、小さな真っ黒い悪魔が現れる。
 可愛いらしいマスコットのような姿のその悪魔を、俺は初めて見た。

「えっと……誰?」
 
 と、困惑する俺をスルーして、小さな悪魔は話し続ける。
 
「あの骸骨たちは、指輪の命令を執行するまで止まらない。
 つまり、お前を殺すまで追いかけて来る」

「……!!」

「ダンタリオンの剣は、
 ――骸骨の戦士を止める唯一無二の剣だ」

 と、小さな悪魔は言った。

 そしてその通り、クロムの剣先にやられた骸骨たちは、復活することなくその場に崩れ落ちていく。
 かつてパンデモニウムで俺を救ったときもそうだった。

(クロムには、骸骨の戦士を止める力がある……)

 俺はその能力に感心しながら、ダンタリオンとクロムの戦いを見守っていた。
 


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