ダンタリオンと勇者

小栗とま

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オズワルド王国の章

62 勇者の罪(パブロの視点)

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「吾輩、こいつら成敗していい?」

 ちびサタンが虚ろな目でそんなことを言うので、俺は慌てて首を横に振った。

「陛下、これはどういう……」

 カイザー国王陛下に尋ねれば、陛下は目を伏せた。

「君たちのお陰で王国は救われた。しかし、君が悪魔と魂の契約をむすんだ罪は別に裁かれなくてはならないというのが、伯爵会議の結論でな」

(伯爵会議……)
 
 まずいものを敵に回した。
 「伯爵会議」――オズワルド王国の領地を分け合う6つの伯爵家が集い、王家の中から誰を国王に選ぶかなどの国家の重要事項を決め、裁判も執り行う。王国の最高機関だ。
 フルーム伯爵位を持つ父は遠征中で空席だ。だから今、俺を擁護してくれる人はいないに等しかったのだろう。

「すまないが――」
「勇者パブロ・フルーム。ごちゃごちゃと無駄口を叩くな」

 陛下の言葉を遮るように、王宮から現れた中年の男はニコ・マクスーンだ。

「マクスーン団長……」

 ニコ・マクスーン。
 王国の第1魔法騎士団団長であり、国王直轄領よりも広大な領地を持つマクスーン伯爵でもある。
 ……いつも意地悪なニタニタを浮かべているから、俺はこのおっさんが苦手だ。

「貴様は、悪魔と魂の契約を結んだ罪で拘束され、そして伯爵会議で罰を下される」
「――っ!」

 俺の周りも、マクスーンの側近である兵士たちが取り囲み、身動きが取れない。

 彼らは第1魔法騎士団の中でも選び抜かれた戦士で、特別な腕章を身に着けている。団長であるマクスーンへの忠誠を誓っているらしい。
 いかにも屈強なマッチョで、できれば敵に回したくないランキング一位の騎士たちだ。

「待ってください…!」

 声を上げたのは、エレナだった。

「あなたが王宮に隠れている間に、兄とダンタリオンたちはオルオンと勇敢に戦いました。彼らに対して不敬を働くことは許されません!」

 真のある声でそう言い放ったエレナは、凛としていて聖女の風格を感じた。

「エレナ……」

 妹のかっこよさに感心していた俺だけど、同時にマッチョたちがエレナを睨みつけたので、冷や冷やして堪らなかった。

「これはこれは……どこかの小さな伯爵家のお嬢さんでしたかな?
 失敬、私は些末なことは記憶にとどめない質でしてね」

 マクスーンはいつもの嫌みなニタニタを浮かべて、エレナをジロジロとみてそう言った。

「……っ!」

(相変わらず感じの悪い奴だ)

 これ以上エレナに失礼なことをするようなら許せないと思っていると、カイザー国王がマクスーンを制した。
 
「エレナ嬢の言う通り、彼らの功績は大いに称えられるべきものだ。
 疑いを晴らすための取り調べは必要だとしても、あくまで丁重に扱ってくれ給え」
 
 国王陛下の言葉を皮切りに、周囲にいた聖職者たちや第1騎士団員たちが同調を示した。

「そうだそうだ……!」
「ダンタリオンがいなきゃ、俺たちは死んでた!!」
「勇者パブロ様、万歳!!」

 初めは遠慮がちに挙げられた声が、次第にまとまり大きくなる。

「今、私を批判した奴は……」
「記録しました」
「よろしい……」

 マクスーンは側近とそんなやり取りをした後、俺たちの拘束を解いて「丁重に」王宮へと連れて行こうとする。

「ちっ。お飾りの国王が偉そうに……」

 マクスーンがそう言っているのが俺の耳に届いた。

(なんか……色々とヤバい伯爵だ)

 と俺は警戒心を固める。
 エレナに何か危害を食えるつもりなら、伯爵だろうと許す気はない。

「お兄ちゃん……!」

 エレナが心配そうにこちらを見た。

「後ろめたいことは何もない。大丈夫さ」

 ダンタリオンたちも一緒に居る。
 俺は大丈夫だけど――。

「それより、ユリウスやオルオンの残党に気をつけろ。
 まだ戦いは終わってないんだ」
 
 俺がそう言えば、エレナと国王はそれを受け止めて頷いた。

(くそっ、こんな大事な時に……)

「ほら、歩け」

 兵士に引っ張られて、俺とダンタリオンたちは王宮へと向かった。

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