4 / 23
本編
4 庭の獣
しおりを挟む
朝日と小鳥の鳴き声に目を覚ますと、ラヴィは見慣れない部屋で眠っていたのに気付いた。
飛び起きて、古い壁紙の張られた簡素な室内を見渡す。
懐かしい自分の部屋とも、奴隷市場の牢獄とも違う……。
記憶を手繰り寄せ、ようやく昨夜の事を思い出した。
どうやらルーディは、あのまま眠ってしまったラヴィの身体を綺麗に拭いて、部屋まで連れて行ってくれたらしい。
「う……わぁ……」
一体、どんな顔をして会えば良いのか、検討もつかない。
顔を真っ赤にして、しばらくジタバタと布団でのたうっていたが、いつまでもこうしているわけにもいかなかった。
壁際の小さな戸棚に替えの衣類が入っていたから、着替えてそっと部屋を出る。
踏み板のきしむ狭い階段を降りる途中、ちょうど階下の扉があき、暗灰色の頭がひょいと現れた。
「きゃぁぁ!」
驚いた拍子に、階段を踏み外した。
したたかに腰を打ち付けずに済んだのは、獣のような俊敏さで飛んできたルーディに支えられたからだ。
「あ、ありがとう……」
「いや。この階段、古いし滑りやすいから…………それより、本っ当―――に、ごめん!!」
ラヴィ以上に顔を赤くして、ルーディが長身をすくめる。
「あ!誓うけど、もちろん最後まではしてない!気絶しちゃったから、不安かもしれないけど、そこは信じてくれると嬉しいな……って、そうじゃなくて!!」
あわあわ動揺しまくっている様子から、どうやら彼の方が、もっと気まずいと思っていたようだった。
「で、でも……あれは、私が薬を割っちゃったせいで……」
「うー……でもなぁ、俺もなし崩しに手を出しちゃったみたいで気がひける……」
結局あれは事故だったという事で、互いに落ち着いた。
「とにかくまぁ、媚薬は成功だったんだけど……ラヴィ。もし良ければ……中和剤をもう一度つくるまで、ここに居てくれるかな?」
「え?」
「もちろん、嫌なら断ってくれ。君は約束を果たしてくれたわけなんだから。必要なら、どこか適当な勤め先も紹介する」
気まずそうに琥珀の目を泳がせるルーディを、ラヴィは改めて見上げた。
「本気で自由にしてくれるつもりだったの?」
「そう約束した」
今度は、ちょっと心外だといわんばかりの口調だった。
「え、ええ。ごめんなさい……」
「君には焼印もついていないんだから、もう一般市民として生活できる。……それで、どうしたい?」
「……えっと」
奴隷の身分なんてまっぴらで、本当に自由にしてもらえるなら、すぐにでも出て行くつもりだった。
さらに勤め先まで紹介してくれるのなら、ここを出ても問題はないはずだ……。
それでも、なぜかルーディともう少し一緒にいたかった。
だが、こんな傷痕つきの醜い娘から、そう言われてもルーディは気味悪がるだけだろう……。
そう思い、無難な口実を作り上げる。
「中和剤が出来るまでいるわ。そのために買われたんだから、最後まで付き合うべきよ。どのくらいで出来るの?」
「えっと、二週間か……薬草の育ち具合では一ヶ月先になるかもしれない」
良かった。と、つい思ってしまった事に気付いて、驚いた。
明日には出来ると言われたら、さぞかし落胆していたに違いない。
「それじゃ……フロッケンベルクの焼き菓子を作る時間もあるかしら?」
「え?」
「レシピと材料を用意してくれるんでしょう?」
一瞬、ルーディはポカンと口を開け、それからものすごく嬉しそうに笑った。
市場で見た時よりも、さらにさらに素敵な顔で。
ああ、変わり者には違いないけど、この笑顔を見れば誰だって彼を好きになるに違いない。
心から、そう思った。
それなのに、女性の知り合いはいるらしいが、恋人や世話してくれる相手もいないようなのが不思議だ。
しかし、ラヴィはそれについて尋ねようとは思わなかった。
どのみち自分には関係のない事だ。
ここにいるのは、長くてあと一ヶ月なのだし、出て行ってしまえば、ルーディはすぐラヴィのことなど忘れてしまうだろう……。
***
「はい。君のお守り」
次の日、ルーディから胡椒入りの小瓶を渡されて、面食らった。
まさか本当にくれるなんて……驚きながら、やっと礼を言った。小瓶は大切にポケットにしまう。
こんな都会に狼が出るわけないけれど……それ以上に大事なお守りになった。
それからルーディは、約束したとおりにラヴィの靴も買ってくれた。
中和剤はまだでも、媚薬だけは出来たと客に報告したら、報酬の半額を早めにくれたそうだ。
子牛革の靴には、濃い紫のリボンが飾られていて、足にぴったり合った。
靴屋の店主が、リボンの残りをおまけにくれたので、それで髪を結んでみた。
傷のある右半面は、あいかわらず前髪で隠してあるが、傷の無い側を横に避けて結ぶと、視界がとても明るくなった。
「すごく似合うよ」
眼を細めて、ルーディが褒めてくれる。
小声で礼を言い、そっと足元の靴を眺めた。これもそう安くはなかった。
せっかく稼いだ報酬を、ルーディはどうしてラヴィのためになんか使ってしまうのだろう?
……きっと、彼がとても優しいからだ。
そう自分を納得させた。
「ルーディ。いつまでも一人身かと思ってたら、可愛い嫁さんを見つけたじゃないか」
ルーディと馴染みらしい靴屋の主人が、にやにやと彼の肩を叩く。
「違うよ。ちょっとの間、家にいてもらってるだけだ」
ルーディが苦笑し、ラヴィも黙って頷く。
わかっていたはずなのに……ズキリと心臓の奥が痛んだ。
フリーの錬金術師の仕事がどういうものか詳しく知らないが、ルーディは机の前にいるよりも、外出している事が多い。
ふらっと出かけては、いつの間にか帰ってくる。夜中に出かけている事もあるようだ。
それと、夜中には決して研究室に入らないでくれと言われた。
わざわざ念をおされなくと、そんなつもりはない。
夢物語のヒロインなら、そういったバカな行動から王子様との結婚に発展するだろうが、現実はろくな結果にならないだけだ。
だからラヴィは、とりたててルーディの仕事に質問したりしなかったし、夜中に部屋を覗くような真似もしなかった。
代わりに居候の身として、家中の掃除や洗濯にはげみ、熱心に食事を作った。
一緒に生活し始めてすぐ、ルーディは今までよく生きていたものだと、呆れたからだ。
忙しいのもわかるが、食事にも睡眠にも無頓着で、聞いてみれば、空腹で倒れたのもあれが初めてではなかったらしい。
本来、ラヴィは「お嬢様」の部類に入る育ちで、育った家にはメイドもコックもいた。
しかし、『人を使う立場の人間は、使う相手の苦労もきちんと知っているべきです。』というのが、親代わりだった老婦人の意見で、幸いにも一通りの家事は仕込まれていた。
人生は何があるかわからないと、しみじみ思いながら、今日の夕食は得意のふわふわオムレツを作る。
「うわ!俺の大好物だ!」
皿にふんわり鎮座した黄色い山に、ルーディが子どものように目を輝かせた。
実際のところ、『大好物』がルーディには多い。というより、好き嫌いがあまりないようだ。
香辛料がキツイものは少々苦手なようだが、それ以外はなんでも美味しそうに食べる。
北国風の焼き菓子を作った時も、フロッケンベルクで食べたのよりもずっと美味しいと褒められ、顔が赤くなった。
食卓に向かい合わせに腰かけ、談笑しながら食事をとっていると、金で買われた身だというのを、時折忘れそうになる。
ルーディはとても親切で、優しい。
市場へ食材の買出しに一緒にいった時も、小柄なラヴィが人ごみに押しつぶされないよう、さりげなく庇ってくれるなど、買われた奴隷と、買った主人の関係なのに、まるで恋人みたいに接してくれる。
それに、あの夜以来、一度も「そういう事」をルーディは強要したりしなかった。
必要以上にラヴィに触れる事も無い。
それでもほんの時折、指先がかすめたりするたびに、心臓が跳ね上がりそうになるのを、ラヴィは必死で隠す。
その鼓動は、一日一日と誤魔化すのが難しくなっていく。
***
――そのケンカは、朝の新聞が運んできた。
ラヴィがルーディに買われてから、すでに二週間が経過していた。
「ふぅん、ソフィア姫……シシリーナ女王の帰国が、もう少し延びるんだって」
新聞を読んでいたルーディが声をあげる。
田舎では新聞など金持ちの嗜好品だが、イスパニラ王都では庶民の間でも気軽に読まれているらしい。
家庭教師に一通りの教育は受けたから、ラヴィも読み書きは出来る。
新聞にはでかでかと、『シシリーナ国のソフィア女王 静養のため帰国を延期』という見出しが書かれていた。
イスパニラ王の末娘ソフィアは、いまや国で一番有名な女性だ。
数年前、南西の富裕なシシリーナ国王の元に嫁いだが、今年の夏に夫が死去すると、そのままシシリーナの女王にとなったのだ。
そして一週間後に、父王に挨拶と会談をするために帰国する予定だった。
市場も店も、その話題でもちきりだ。
イスパニラの王には、男女合わせて四人の子がいる。
妾腹のソフィアは王位継承権からは遠いが、いまや一大国の女王だ。
王位を継ぐ長兄に匹敵する大出世だった。
彼女が帰国するのは、嫁いでから初めてで、王都をあげての帰国祝いが開かれる事になっている。
だが、それも先延ばしになるのだろう。
「そうそう、ソフィア女王の帰国祝いのお祭り、良かったら一緒に見物に行かないか?」
とても魅力的な誘いだった。
もう少しで、喜んで行くと返事をしそうになった。
だが……
「遠慮するわ」
お祭りも昔は大好きで、田舎の小さな収穫祭ですら、わくわくして待ち遠しかった。
しかし、このご面相では、物笑いの種になるだけだ。
それに……
「あんな野蛮で残酷な女を、喜んで出迎える気にはなれないもの」
つい、刺々しい言葉が口をついて出た。
ルーディが新聞から目をあげ、少し驚いたような顔をした。
「女王と面識があるの?」
「え?ないわよ」
「まるで、本人を知ってるみたいな口ぶりだった。口を聞いた事もないのに、どうして彼女が野蛮で残酷だってわかるのさ」
言葉につまり、思わず弁明した。
「だって……みんながそう言ってるわ……夫が死んだらこれ幸いとシシリーナ国を乗っ取った悪賢い女よ。きっとシシリーナの国民は酷い目に会ってるわ」
イスパニラに武力で植民地化されたラヴィの故郷では、ソフィアの評判は宜しくなかった。
残忍なイスパニラ王の性質を一番濃く継いでいる、無慈悲な鉄の姫。
目的の為には手段を選ばぬ女だと、もっぱら噂されていた。
シシリーナ女王になった件についても、かの国民が異国の姫を女王にしたのは、イスパニラの軍力を笠にきて国民を脅したのだろう。という噂だ。
ラヴィはその憶測をもっともだと思ったし、疑問を抱こうともしなかった。
ルーディの口元に、初めて見る皮肉な笑みが浮かんだ。
「その『みんな』に聞いてみたら?ソフィア女王と個人的にお話をした事がありますか?って」
「……」
きまり悪くてたまらない。
自分が赤面してるのが判ったが、ムキになってラヴィは言い返した。
「あなたこそ、彼女と面会でもした事あるの?」
「無いよ」
「じゃぁ、偉そうに言わないで!!」
震える両手で、エプロンを握り締めた。
「野蛮なイスパニラ王の娘よ。野蛮な悪女に決まってるわ!」
「噂や先入観だけで判断して、相手を理解しようともしない事こそが、野蛮だと俺は思う」
ルーディの口元から皮肉そうな笑みが消え、やはり初めて聞くような、限りなく冷ややかな声音が発される。
「あっ、貴方は何の被害も受けなかったから、そんな事が言えるんだわ! 私みたいに家族を殺されて奴隷に売られてみれば、意見も変わるよ!!」
「え……」
八つ当たりとわかっても、収まらない怒りが口をついて出る。
「イスパニラの軍は高潔なんて、嘘ばっかり! あちこちの国に手を出して、殺しまわって! 王都は規律を厳しくしてても、兵達は地方でやりたい放題じゃない!」
イスパニラは確かに軍事国家だが、王都では軍の規律が特に厳しい。
いくら位の高い将軍といえども、むやみな横暴は許されない。
イスパニラ軍は、最強にして最高に気高い騎士団であるというのが、この国の誇りであり主張だった。
それを知ったとき、腹の底からわきあがった怒りを隠すのに、ひどく苦労したものだ。
大陸各地につくった植民地で、規律のたがが外れた兵士達がやっている事を、少しでも知っているのか!!
「私の実家はね、そこそこ裕福な貿易商だったの。国はイスパニラに占拠されたけど、税金を払って商売を続けていたわ。でも……アイツ等は、反逆者なんて言いがかりをつけて、襲い掛かってきた! お父様を殺して財産を取り上げるためにね!」
今までなるべく考えないようにして堪えていた涙が、せきを切って溢れ出した。
「姉さまは、何人もの兵に犯されて殺されたわ!私も奴隷市場行きよ!」
「ラヴィ……」
そこで、止めておけばよかったのだ。
けれど、止らなかった。
ルーディが、よりによってイスパニラ王の娘を庇うだなんて!
いや、他の人がソフィアを庇おうとけなそうと、ここまで動揺したりはしなかっただろう。ルーディだからこそ、嫌だった。
ひどく醜い焦げ付いた感情のまま、押し殺した声で悪態が口から飛び出る。
「誰が相手でも公平に判断しようとするなんて、ルーディはとってもいい人だわ。世界が貴方のような人ばかりなら、きっと不幸な争いはなくなるでしょうけど……貴方みたいにはなれない人だっているの。自分の理想を、私にまで押し付けないで」
一瞬、部屋の中がシンと静まりかえった。
「……ぁ」
こんなに怒りを露にしたルーディの顔を、ラヴィは初めて見た。
彼がゆっくり立ち上がって、ラヴィに近づく。
殴られると思い、思わず身をすくめた。
しかし、ルーディは手を上げたりはせず、黙ってラヴィの横を通り過ぎ、部屋を出て行った。
一人残された居間で、ラヴィは呆然と立ち尽くす。
“疫病神!!”
耳奥に、亡き姉の声が鋭く突き刺さった。
何百回となくリフレインしていたその声が、いつのまにかこの数日は聞えていなかった事に気付く。
ルーディのそばにいて、たわいない会話をして笑いあっているうちに、いつのまにか聞えなくなっていた。
“全部あなたのせいよ!!”
しかし、舞い戻ってきた呪い声は、容赦なくラヴィを嬲り罵り打ちのめす。
「あ……」
膝から力が抜け、床に崩れ落ちた。ガクガクと身体中が震える。
「ごめ……んなさ……ごめん……なさい…………」
ただ、ひたすら繰り返した。
私に出来る事なんか、もうそれくらいしかないのだから……
それから一日、二人は口を聞かなかった。
ルーディは部屋に籠もったまま出てこなかったから、ラヴィは作った食事をテーブルに置き、部屋の扉をノックしてから急いで自室に逃げ込んだ。
しばらくして食堂に行ったら、皿は空になっていて、なんとなくほっとして片づけをした。
やがて夜になり、ベッドに入ったが、寝付けなかった。
いつもなら、柔らかい布団に入ればすぐに気持ちよく眠ってしまうのに。
時折、夜中にルーディの研究室と庭をつなぐ窓の開閉する音が聞こえるが、それも夢うつつでまどろみながら聞くくらいだ。
けれど、今夜は妙にそれが気になった。
寝室の窓から外を見ると、満月に近い月が庭を照らしていた。
「ひっ!」
大きな四足の獣の影が、薬草園に映っていた。
金色の瞳が月光にぎらつく。
窓から飛びのいた拍子に転び、盛大に尻餅をついた。その痛みさえ気にならないほど、恐怖の奔流が背骨を這い登る。
「あ……あ……」
右頬の古傷から、まだ真っ赤な血がしたたりおちているような気がする。
床を這いずってベッドに飛び込み、必死で頭から布団にくるまった。
こんな都会に狼がいるはずがない。あれはきっと、ただの野犬だ。
しかし、一度わきあがってしまった恐怖は膨らむ一方だ。
「……ディ……」
無意識に、叫んでいた。
「ルーディ!!!ルーディーーーッ!!!!」
返事はなかった。
あんなに怒らせてしまったのだ。来てくれるはずなどない……
しかし数分後、階段を駆け上がる音がし、勢いよく扉がひらかれた。
「ラヴィ!?どうした!?」
ルーディは眠っていたのだろうか。
シャツは羽織っただけでボタンも留めておらず、靴も履いていない。
震えながらラヴィは駆け寄り、訴える。
「お、狼……狼が……庭に……」
「……見間違えたんじゃないかな?庭に狼なんかいなかったよ」
優しく宥められたが、首を振った。
「いたの!絶対に!!」
ルーディが小さくため息をついたのがわかった。
また怒らせてしまったかと思った瞬間、抱き寄せられた。
「じゃぁ、ここにいるよ。それなら怖くない?」
驚いて頬が熱くなったけど、逞しい胸板から伝わる体温と鼓動が、恐怖を拭い去ってくれる。
必死でコクコク頷いた。
「――昼間はごめん」
頭上から、ポツリとルーディの呟きが降ってきた。
「……え?」
「君の事情も知らないで、偉そうに説教なんかして……」
窓から差し込む月光が、ルーディの寂しげな顔を照らし出している。
「言われた通りだ。俺の悪いくせだよ。自分の理想や価値観を押し付けようとしてしまう」
「ルーディ……?」
「昔、それでなにもかもぶち壊したんだ。自分の考えを皆が理解してくれるはずだと決めつけて、状況を良くするどころか、結局は大勢の人を不幸にしたのに……俺は、まだ懲りてなかったみたいだ」
見上げたルーディの顔には、深い苦悩が浮かんでいた。
二週間、同じ家に住んでいながら、ラヴィはルーディの事を殆ど何もしらない。
どうして錬金術師になったのか?
家族はいるのか?
今まで、どんな人生を送ってきたのか……?
「その時、ラヴィに言われたのと、同じ事を言われたなぁって思い出して……八つ当たりだったんだ。……本当にごめん」
「……ちがうの」
ぽろぽろと涙が溢れてきた。
「私こそ……全部……八つ当たり……だったの……ごめんなさい……」
気づけば、泣きながら告白していた。
「本当は……私のせいだったの……呪われてるの……凶星に……」
飛び起きて、古い壁紙の張られた簡素な室内を見渡す。
懐かしい自分の部屋とも、奴隷市場の牢獄とも違う……。
記憶を手繰り寄せ、ようやく昨夜の事を思い出した。
どうやらルーディは、あのまま眠ってしまったラヴィの身体を綺麗に拭いて、部屋まで連れて行ってくれたらしい。
「う……わぁ……」
一体、どんな顔をして会えば良いのか、検討もつかない。
顔を真っ赤にして、しばらくジタバタと布団でのたうっていたが、いつまでもこうしているわけにもいかなかった。
壁際の小さな戸棚に替えの衣類が入っていたから、着替えてそっと部屋を出る。
踏み板のきしむ狭い階段を降りる途中、ちょうど階下の扉があき、暗灰色の頭がひょいと現れた。
「きゃぁぁ!」
驚いた拍子に、階段を踏み外した。
したたかに腰を打ち付けずに済んだのは、獣のような俊敏さで飛んできたルーディに支えられたからだ。
「あ、ありがとう……」
「いや。この階段、古いし滑りやすいから…………それより、本っ当―――に、ごめん!!」
ラヴィ以上に顔を赤くして、ルーディが長身をすくめる。
「あ!誓うけど、もちろん最後まではしてない!気絶しちゃったから、不安かもしれないけど、そこは信じてくれると嬉しいな……って、そうじゃなくて!!」
あわあわ動揺しまくっている様子から、どうやら彼の方が、もっと気まずいと思っていたようだった。
「で、でも……あれは、私が薬を割っちゃったせいで……」
「うー……でもなぁ、俺もなし崩しに手を出しちゃったみたいで気がひける……」
結局あれは事故だったという事で、互いに落ち着いた。
「とにかくまぁ、媚薬は成功だったんだけど……ラヴィ。もし良ければ……中和剤をもう一度つくるまで、ここに居てくれるかな?」
「え?」
「もちろん、嫌なら断ってくれ。君は約束を果たしてくれたわけなんだから。必要なら、どこか適当な勤め先も紹介する」
気まずそうに琥珀の目を泳がせるルーディを、ラヴィは改めて見上げた。
「本気で自由にしてくれるつもりだったの?」
「そう約束した」
今度は、ちょっと心外だといわんばかりの口調だった。
「え、ええ。ごめんなさい……」
「君には焼印もついていないんだから、もう一般市民として生活できる。……それで、どうしたい?」
「……えっと」
奴隷の身分なんてまっぴらで、本当に自由にしてもらえるなら、すぐにでも出て行くつもりだった。
さらに勤め先まで紹介してくれるのなら、ここを出ても問題はないはずだ……。
それでも、なぜかルーディともう少し一緒にいたかった。
だが、こんな傷痕つきの醜い娘から、そう言われてもルーディは気味悪がるだけだろう……。
そう思い、無難な口実を作り上げる。
「中和剤が出来るまでいるわ。そのために買われたんだから、最後まで付き合うべきよ。どのくらいで出来るの?」
「えっと、二週間か……薬草の育ち具合では一ヶ月先になるかもしれない」
良かった。と、つい思ってしまった事に気付いて、驚いた。
明日には出来ると言われたら、さぞかし落胆していたに違いない。
「それじゃ……フロッケンベルクの焼き菓子を作る時間もあるかしら?」
「え?」
「レシピと材料を用意してくれるんでしょう?」
一瞬、ルーディはポカンと口を開け、それからものすごく嬉しそうに笑った。
市場で見た時よりも、さらにさらに素敵な顔で。
ああ、変わり者には違いないけど、この笑顔を見れば誰だって彼を好きになるに違いない。
心から、そう思った。
それなのに、女性の知り合いはいるらしいが、恋人や世話してくれる相手もいないようなのが不思議だ。
しかし、ラヴィはそれについて尋ねようとは思わなかった。
どのみち自分には関係のない事だ。
ここにいるのは、長くてあと一ヶ月なのだし、出て行ってしまえば、ルーディはすぐラヴィのことなど忘れてしまうだろう……。
***
「はい。君のお守り」
次の日、ルーディから胡椒入りの小瓶を渡されて、面食らった。
まさか本当にくれるなんて……驚きながら、やっと礼を言った。小瓶は大切にポケットにしまう。
こんな都会に狼が出るわけないけれど……それ以上に大事なお守りになった。
それからルーディは、約束したとおりにラヴィの靴も買ってくれた。
中和剤はまだでも、媚薬だけは出来たと客に報告したら、報酬の半額を早めにくれたそうだ。
子牛革の靴には、濃い紫のリボンが飾られていて、足にぴったり合った。
靴屋の店主が、リボンの残りをおまけにくれたので、それで髪を結んでみた。
傷のある右半面は、あいかわらず前髪で隠してあるが、傷の無い側を横に避けて結ぶと、視界がとても明るくなった。
「すごく似合うよ」
眼を細めて、ルーディが褒めてくれる。
小声で礼を言い、そっと足元の靴を眺めた。これもそう安くはなかった。
せっかく稼いだ報酬を、ルーディはどうしてラヴィのためになんか使ってしまうのだろう?
……きっと、彼がとても優しいからだ。
そう自分を納得させた。
「ルーディ。いつまでも一人身かと思ってたら、可愛い嫁さんを見つけたじゃないか」
ルーディと馴染みらしい靴屋の主人が、にやにやと彼の肩を叩く。
「違うよ。ちょっとの間、家にいてもらってるだけだ」
ルーディが苦笑し、ラヴィも黙って頷く。
わかっていたはずなのに……ズキリと心臓の奥が痛んだ。
フリーの錬金術師の仕事がどういうものか詳しく知らないが、ルーディは机の前にいるよりも、外出している事が多い。
ふらっと出かけては、いつの間にか帰ってくる。夜中に出かけている事もあるようだ。
それと、夜中には決して研究室に入らないでくれと言われた。
わざわざ念をおされなくと、そんなつもりはない。
夢物語のヒロインなら、そういったバカな行動から王子様との結婚に発展するだろうが、現実はろくな結果にならないだけだ。
だからラヴィは、とりたててルーディの仕事に質問したりしなかったし、夜中に部屋を覗くような真似もしなかった。
代わりに居候の身として、家中の掃除や洗濯にはげみ、熱心に食事を作った。
一緒に生活し始めてすぐ、ルーディは今までよく生きていたものだと、呆れたからだ。
忙しいのもわかるが、食事にも睡眠にも無頓着で、聞いてみれば、空腹で倒れたのもあれが初めてではなかったらしい。
本来、ラヴィは「お嬢様」の部類に入る育ちで、育った家にはメイドもコックもいた。
しかし、『人を使う立場の人間は、使う相手の苦労もきちんと知っているべきです。』というのが、親代わりだった老婦人の意見で、幸いにも一通りの家事は仕込まれていた。
人生は何があるかわからないと、しみじみ思いながら、今日の夕食は得意のふわふわオムレツを作る。
「うわ!俺の大好物だ!」
皿にふんわり鎮座した黄色い山に、ルーディが子どものように目を輝かせた。
実際のところ、『大好物』がルーディには多い。というより、好き嫌いがあまりないようだ。
香辛料がキツイものは少々苦手なようだが、それ以外はなんでも美味しそうに食べる。
北国風の焼き菓子を作った時も、フロッケンベルクで食べたのよりもずっと美味しいと褒められ、顔が赤くなった。
食卓に向かい合わせに腰かけ、談笑しながら食事をとっていると、金で買われた身だというのを、時折忘れそうになる。
ルーディはとても親切で、優しい。
市場へ食材の買出しに一緒にいった時も、小柄なラヴィが人ごみに押しつぶされないよう、さりげなく庇ってくれるなど、買われた奴隷と、買った主人の関係なのに、まるで恋人みたいに接してくれる。
それに、あの夜以来、一度も「そういう事」をルーディは強要したりしなかった。
必要以上にラヴィに触れる事も無い。
それでもほんの時折、指先がかすめたりするたびに、心臓が跳ね上がりそうになるのを、ラヴィは必死で隠す。
その鼓動は、一日一日と誤魔化すのが難しくなっていく。
***
――そのケンカは、朝の新聞が運んできた。
ラヴィがルーディに買われてから、すでに二週間が経過していた。
「ふぅん、ソフィア姫……シシリーナ女王の帰国が、もう少し延びるんだって」
新聞を読んでいたルーディが声をあげる。
田舎では新聞など金持ちの嗜好品だが、イスパニラ王都では庶民の間でも気軽に読まれているらしい。
家庭教師に一通りの教育は受けたから、ラヴィも読み書きは出来る。
新聞にはでかでかと、『シシリーナ国のソフィア女王 静養のため帰国を延期』という見出しが書かれていた。
イスパニラ王の末娘ソフィアは、いまや国で一番有名な女性だ。
数年前、南西の富裕なシシリーナ国王の元に嫁いだが、今年の夏に夫が死去すると、そのままシシリーナの女王にとなったのだ。
そして一週間後に、父王に挨拶と会談をするために帰国する予定だった。
市場も店も、その話題でもちきりだ。
イスパニラの王には、男女合わせて四人の子がいる。
妾腹のソフィアは王位継承権からは遠いが、いまや一大国の女王だ。
王位を継ぐ長兄に匹敵する大出世だった。
彼女が帰国するのは、嫁いでから初めてで、王都をあげての帰国祝いが開かれる事になっている。
だが、それも先延ばしになるのだろう。
「そうそう、ソフィア女王の帰国祝いのお祭り、良かったら一緒に見物に行かないか?」
とても魅力的な誘いだった。
もう少しで、喜んで行くと返事をしそうになった。
だが……
「遠慮するわ」
お祭りも昔は大好きで、田舎の小さな収穫祭ですら、わくわくして待ち遠しかった。
しかし、このご面相では、物笑いの種になるだけだ。
それに……
「あんな野蛮で残酷な女を、喜んで出迎える気にはなれないもの」
つい、刺々しい言葉が口をついて出た。
ルーディが新聞から目をあげ、少し驚いたような顔をした。
「女王と面識があるの?」
「え?ないわよ」
「まるで、本人を知ってるみたいな口ぶりだった。口を聞いた事もないのに、どうして彼女が野蛮で残酷だってわかるのさ」
言葉につまり、思わず弁明した。
「だって……みんながそう言ってるわ……夫が死んだらこれ幸いとシシリーナ国を乗っ取った悪賢い女よ。きっとシシリーナの国民は酷い目に会ってるわ」
イスパニラに武力で植民地化されたラヴィの故郷では、ソフィアの評判は宜しくなかった。
残忍なイスパニラ王の性質を一番濃く継いでいる、無慈悲な鉄の姫。
目的の為には手段を選ばぬ女だと、もっぱら噂されていた。
シシリーナ女王になった件についても、かの国民が異国の姫を女王にしたのは、イスパニラの軍力を笠にきて国民を脅したのだろう。という噂だ。
ラヴィはその憶測をもっともだと思ったし、疑問を抱こうともしなかった。
ルーディの口元に、初めて見る皮肉な笑みが浮かんだ。
「その『みんな』に聞いてみたら?ソフィア女王と個人的にお話をした事がありますか?って」
「……」
きまり悪くてたまらない。
自分が赤面してるのが判ったが、ムキになってラヴィは言い返した。
「あなたこそ、彼女と面会でもした事あるの?」
「無いよ」
「じゃぁ、偉そうに言わないで!!」
震える両手で、エプロンを握り締めた。
「野蛮なイスパニラ王の娘よ。野蛮な悪女に決まってるわ!」
「噂や先入観だけで判断して、相手を理解しようともしない事こそが、野蛮だと俺は思う」
ルーディの口元から皮肉そうな笑みが消え、やはり初めて聞くような、限りなく冷ややかな声音が発される。
「あっ、貴方は何の被害も受けなかったから、そんな事が言えるんだわ! 私みたいに家族を殺されて奴隷に売られてみれば、意見も変わるよ!!」
「え……」
八つ当たりとわかっても、収まらない怒りが口をついて出る。
「イスパニラの軍は高潔なんて、嘘ばっかり! あちこちの国に手を出して、殺しまわって! 王都は規律を厳しくしてても、兵達は地方でやりたい放題じゃない!」
イスパニラは確かに軍事国家だが、王都では軍の規律が特に厳しい。
いくら位の高い将軍といえども、むやみな横暴は許されない。
イスパニラ軍は、最強にして最高に気高い騎士団であるというのが、この国の誇りであり主張だった。
それを知ったとき、腹の底からわきあがった怒りを隠すのに、ひどく苦労したものだ。
大陸各地につくった植民地で、規律のたがが外れた兵士達がやっている事を、少しでも知っているのか!!
「私の実家はね、そこそこ裕福な貿易商だったの。国はイスパニラに占拠されたけど、税金を払って商売を続けていたわ。でも……アイツ等は、反逆者なんて言いがかりをつけて、襲い掛かってきた! お父様を殺して財産を取り上げるためにね!」
今までなるべく考えないようにして堪えていた涙が、せきを切って溢れ出した。
「姉さまは、何人もの兵に犯されて殺されたわ!私も奴隷市場行きよ!」
「ラヴィ……」
そこで、止めておけばよかったのだ。
けれど、止らなかった。
ルーディが、よりによってイスパニラ王の娘を庇うだなんて!
いや、他の人がソフィアを庇おうとけなそうと、ここまで動揺したりはしなかっただろう。ルーディだからこそ、嫌だった。
ひどく醜い焦げ付いた感情のまま、押し殺した声で悪態が口から飛び出る。
「誰が相手でも公平に判断しようとするなんて、ルーディはとってもいい人だわ。世界が貴方のような人ばかりなら、きっと不幸な争いはなくなるでしょうけど……貴方みたいにはなれない人だっているの。自分の理想を、私にまで押し付けないで」
一瞬、部屋の中がシンと静まりかえった。
「……ぁ」
こんなに怒りを露にしたルーディの顔を、ラヴィは初めて見た。
彼がゆっくり立ち上がって、ラヴィに近づく。
殴られると思い、思わず身をすくめた。
しかし、ルーディは手を上げたりはせず、黙ってラヴィの横を通り過ぎ、部屋を出て行った。
一人残された居間で、ラヴィは呆然と立ち尽くす。
“疫病神!!”
耳奥に、亡き姉の声が鋭く突き刺さった。
何百回となくリフレインしていたその声が、いつのまにかこの数日は聞えていなかった事に気付く。
ルーディのそばにいて、たわいない会話をして笑いあっているうちに、いつのまにか聞えなくなっていた。
“全部あなたのせいよ!!”
しかし、舞い戻ってきた呪い声は、容赦なくラヴィを嬲り罵り打ちのめす。
「あ……」
膝から力が抜け、床に崩れ落ちた。ガクガクと身体中が震える。
「ごめ……んなさ……ごめん……なさい…………」
ただ、ひたすら繰り返した。
私に出来る事なんか、もうそれくらいしかないのだから……
それから一日、二人は口を聞かなかった。
ルーディは部屋に籠もったまま出てこなかったから、ラヴィは作った食事をテーブルに置き、部屋の扉をノックしてから急いで自室に逃げ込んだ。
しばらくして食堂に行ったら、皿は空になっていて、なんとなくほっとして片づけをした。
やがて夜になり、ベッドに入ったが、寝付けなかった。
いつもなら、柔らかい布団に入ればすぐに気持ちよく眠ってしまうのに。
時折、夜中にルーディの研究室と庭をつなぐ窓の開閉する音が聞こえるが、それも夢うつつでまどろみながら聞くくらいだ。
けれど、今夜は妙にそれが気になった。
寝室の窓から外を見ると、満月に近い月が庭を照らしていた。
「ひっ!」
大きな四足の獣の影が、薬草園に映っていた。
金色の瞳が月光にぎらつく。
窓から飛びのいた拍子に転び、盛大に尻餅をついた。その痛みさえ気にならないほど、恐怖の奔流が背骨を這い登る。
「あ……あ……」
右頬の古傷から、まだ真っ赤な血がしたたりおちているような気がする。
床を這いずってベッドに飛び込み、必死で頭から布団にくるまった。
こんな都会に狼がいるはずがない。あれはきっと、ただの野犬だ。
しかし、一度わきあがってしまった恐怖は膨らむ一方だ。
「……ディ……」
無意識に、叫んでいた。
「ルーディ!!!ルーディーーーッ!!!!」
返事はなかった。
あんなに怒らせてしまったのだ。来てくれるはずなどない……
しかし数分後、階段を駆け上がる音がし、勢いよく扉がひらかれた。
「ラヴィ!?どうした!?」
ルーディは眠っていたのだろうか。
シャツは羽織っただけでボタンも留めておらず、靴も履いていない。
震えながらラヴィは駆け寄り、訴える。
「お、狼……狼が……庭に……」
「……見間違えたんじゃないかな?庭に狼なんかいなかったよ」
優しく宥められたが、首を振った。
「いたの!絶対に!!」
ルーディが小さくため息をついたのがわかった。
また怒らせてしまったかと思った瞬間、抱き寄せられた。
「じゃぁ、ここにいるよ。それなら怖くない?」
驚いて頬が熱くなったけど、逞しい胸板から伝わる体温と鼓動が、恐怖を拭い去ってくれる。
必死でコクコク頷いた。
「――昼間はごめん」
頭上から、ポツリとルーディの呟きが降ってきた。
「……え?」
「君の事情も知らないで、偉そうに説教なんかして……」
窓から差し込む月光が、ルーディの寂しげな顔を照らし出している。
「言われた通りだ。俺の悪いくせだよ。自分の理想や価値観を押し付けようとしてしまう」
「ルーディ……?」
「昔、それでなにもかもぶち壊したんだ。自分の考えを皆が理解してくれるはずだと決めつけて、状況を良くするどころか、結局は大勢の人を不幸にしたのに……俺は、まだ懲りてなかったみたいだ」
見上げたルーディの顔には、深い苦悩が浮かんでいた。
二週間、同じ家に住んでいながら、ラヴィはルーディの事を殆ど何もしらない。
どうして錬金術師になったのか?
家族はいるのか?
今まで、どんな人生を送ってきたのか……?
「その時、ラヴィに言われたのと、同じ事を言われたなぁって思い出して……八つ当たりだったんだ。……本当にごめん」
「……ちがうの」
ぽろぽろと涙が溢れてきた。
「私こそ……全部……八つ当たり……だったの……ごめんなさい……」
気づけば、泣きながら告白していた。
「本当は……私のせいだったの……呪われてるの……凶星に……」
0
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
2月15日付で、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。
ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。
引き続きよろしくお願いいたします。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる