満月綺想曲(ルナ・リェーナ・カプリチオ)

小桜けい

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本編

4 庭の獣

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 朝日と小鳥の鳴き声に目を覚ますと、ラヴィは見慣れない部屋で眠っていたのに気付いた。
 飛び起きて、古い壁紙の張られた簡素な室内を見渡す。
 懐かしい自分の部屋とも、奴隷市場の牢獄とも違う……。
 記憶を手繰り寄せ、ようやく昨夜の事を思い出した。

 どうやらルーディは、あのまま眠ってしまったラヴィの身体を綺麗に拭いて、部屋まで連れて行ってくれたらしい。

「う……わぁ……」

 一体、どんな顔をして会えば良いのか、検討もつかない。
 顔を真っ赤にして、しばらくジタバタと布団でのたうっていたが、いつまでもこうしているわけにもいかなかった。
 壁際の小さな戸棚に替えの衣類が入っていたから、着替えてそっと部屋を出る。
 踏み板のきしむ狭い階段を降りる途中、ちょうど階下の扉があき、暗灰色の頭がひょいと現れた。

「きゃぁぁ!」

 驚いた拍子に、階段を踏み外した。
 したたかに腰を打ち付けずに済んだのは、獣のような俊敏さで飛んできたルーディに支えられたからだ。

「あ、ありがとう……」

「いや。この階段、古いし滑りやすいから…………それより、本っ当―――に、ごめん!!」

 ラヴィ以上に顔を赤くして、ルーディが長身をすくめる。

「あ!誓うけど、もちろん最後まではしてない!気絶しちゃったから、不安かもしれないけど、そこは信じてくれると嬉しいな……って、そうじゃなくて!!」

 あわあわ動揺しまくっている様子から、どうやら彼の方が、もっと気まずいと思っていたようだった。

「で、でも……あれは、私が薬を割っちゃったせいで……」

「うー……でもなぁ、俺もなし崩しに手を出しちゃったみたいで気がひける……」

 結局あれは事故だったという事で、互いに落ち着いた。

「とにかくまぁ、媚薬は成功だったんだけど……ラヴィ。もし良ければ……中和剤をもう一度つくるまで、ここに居てくれるかな?」

「え?」

「もちろん、嫌なら断ってくれ。君は約束を果たしてくれたわけなんだから。必要なら、どこか適当な勤め先も紹介する」

 気まずそうに琥珀の目を泳がせるルーディを、ラヴィは改めて見上げた。

「本気で自由にしてくれるつもりだったの?」

「そう約束した」

 今度は、ちょっと心外だといわんばかりの口調だった。

「え、ええ。ごめんなさい……」

「君には焼印もついていないんだから、もう一般市民として生活できる。……それで、どうしたい?」

「……えっと」

 奴隷の身分なんてまっぴらで、本当に自由にしてもらえるなら、すぐにでも出て行くつもりだった。
 さらに勤め先まで紹介してくれるのなら、ここを出ても問題はないはずだ……。
 それでも、なぜかルーディともう少し一緒にいたかった。

 だが、こんな傷痕つきの醜い娘から、そう言われてもルーディは気味悪がるだけだろう……。
 そう思い、無難な口実を作り上げる。

「中和剤が出来るまでいるわ。そのために買われたんだから、最後まで付き合うべきよ。どのくらいで出来るの?」

「えっと、二週間か……薬草の育ち具合では一ヶ月先になるかもしれない」

 良かった。と、つい思ってしまった事に気付いて、驚いた。
 明日には出来ると言われたら、さぞかし落胆していたに違いない。

「それじゃ……フロッケンベルクの焼き菓子を作る時間もあるかしら?」

「え?」

「レシピと材料を用意してくれるんでしょう?」

 一瞬、ルーディはポカンと口を開け、それからものすごく嬉しそうに笑った。
 市場で見た時よりも、さらにさらに素敵な顔で。

 ああ、変わり者には違いないけど、この笑顔を見れば誰だって彼を好きになるに違いない。
 心から、そう思った。
 それなのに、女性の知り合いはいるらしいが、恋人や世話してくれる相手もいないようなのが不思議だ。
 しかし、ラヴィはそれについて尋ねようとは思わなかった。
 どのみち自分には関係のない事だ。
 ここにいるのは、長くてあと一ヶ月なのだし、出て行ってしまえば、ルーディはすぐラヴィのことなど忘れてしまうだろう……。

***

「はい。君のお守り」

 次の日、ルーディから胡椒入りの小瓶を渡されて、面食らった。
 まさか本当にくれるなんて……驚きながら、やっと礼を言った。小瓶は大切にポケットにしまう。
 こんな都会に狼が出るわけないけれど……それ以上に大事なお守りになった。

 それからルーディは、約束したとおりにラヴィの靴も買ってくれた。
 中和剤はまだでも、媚薬だけは出来たと客に報告したら、報酬の半額を早めにくれたそうだ。

 子牛革の靴には、濃い紫のリボンが飾られていて、足にぴったり合った。
 靴屋の店主が、リボンの残りをおまけにくれたので、それで髪を結んでみた。
 傷のある右半面は、あいかわらず前髪で隠してあるが、傷の無い側を横に避けて結ぶと、視界がとても明るくなった。

「すごく似合うよ」

 眼を細めて、ルーディが褒めてくれる。
 小声で礼を言い、そっと足元の靴を眺めた。これもそう安くはなかった。
 せっかく稼いだ報酬を、ルーディはどうしてラヴィのためになんか使ってしまうのだろう?

 ……きっと、彼がとても優しいからだ。

 そう自分を納得させた。

「ルーディ。いつまでも一人身かと思ってたら、可愛い嫁さんを見つけたじゃないか」

 ルーディと馴染みらしい靴屋の主人が、にやにやと彼の肩を叩く。

「違うよ。ちょっとの間、家にいてもらってるだけだ」

 ルーディが苦笑し、ラヴィも黙って頷く。
 わかっていたはずなのに……ズキリと心臓の奥が痛んだ。

 フリーの錬金術師の仕事がどういうものか詳しく知らないが、ルーディは机の前にいるよりも、外出している事が多い。
 ふらっと出かけては、いつの間にか帰ってくる。夜中に出かけている事もあるようだ。
 それと、夜中には決して研究室に入らないでくれと言われた。
 わざわざ念をおされなくと、そんなつもりはない。
 夢物語のヒロインなら、そういったバカな行動から王子様との結婚に発展するだろうが、現実はろくな結果にならないだけだ。
 だからラヴィは、とりたててルーディの仕事に質問したりしなかったし、夜中に部屋を覗くような真似もしなかった。

 代わりに居候の身として、家中の掃除や洗濯にはげみ、熱心に食事を作った。
 一緒に生活し始めてすぐ、ルーディは今までよく生きていたものだと、呆れたからだ。
 忙しいのもわかるが、食事にも睡眠にも無頓着で、聞いてみれば、空腹で倒れたのもあれが初めてではなかったらしい。

 本来、ラヴィは「お嬢様」の部類に入る育ちで、育った家にはメイドもコックもいた。
 しかし、『人を使う立場の人間は、使う相手の苦労もきちんと知っているべきです。』というのが、親代わりだった老婦人の意見で、幸いにも一通りの家事は仕込まれていた。

 人生は何があるかわからないと、しみじみ思いながら、今日の夕食は得意のふわふわオムレツを作る。

「うわ!俺の大好物だ!」

 皿にふんわり鎮座した黄色い山に、ルーディが子どものように目を輝かせた。
 実際のところ、『大好物』がルーディには多い。というより、好き嫌いがあまりないようだ。
 香辛料がキツイものは少々苦手なようだが、それ以外はなんでも美味しそうに食べる。
 北国風の焼き菓子を作った時も、フロッケンベルクで食べたのよりもずっと美味しいと褒められ、顔が赤くなった。

 食卓に向かい合わせに腰かけ、談笑しながら食事をとっていると、金で買われた身だというのを、時折忘れそうになる。
 ルーディはとても親切で、優しい。
 市場へ食材の買出しに一緒にいった時も、小柄なラヴィが人ごみに押しつぶされないよう、さりげなく庇ってくれるなど、買われた奴隷と、買った主人の関係なのに、まるで恋人みたいに接してくれる。
 それに、あの夜以来、一度も「そういう事」をルーディは強要したりしなかった。
 必要以上にラヴィに触れる事も無い。
 それでもほんの時折、指先がかすめたりするたびに、心臓が跳ね上がりそうになるのを、ラヴィは必死で隠す。
 その鼓動は、一日一日と誤魔化すのが難しくなっていく。

***

――そのケンカは、朝の新聞が運んできた。
 ラヴィがルーディに買われてから、すでに二週間が経過していた。

「ふぅん、ソフィア姫……シシリーナ女王の帰国が、もう少し延びるんだって」

 新聞を読んでいたルーディが声をあげる。
 田舎では新聞など金持ちの嗜好品だが、イスパニラ王都では庶民の間でも気軽に読まれているらしい。
 家庭教師に一通りの教育は受けたから、ラヴィも読み書きは出来る。
 新聞にはでかでかと、『シシリーナ国のソフィア女王 静養のため帰国を延期』という見出しが書かれていた。
 イスパニラ王の末娘ソフィアは、いまや国で一番有名な女性だ。
 数年前、南西の富裕なシシリーナ国王の元に嫁いだが、今年の夏に夫が死去すると、そのままシシリーナの女王にとなったのだ。
 そして一週間後に、父王に挨拶と会談をするために帰国する予定だった。
 市場も店も、その話題でもちきりだ。

 イスパニラの王には、男女合わせて四人の子がいる。
 妾腹のソフィアは王位継承権からは遠いが、いまや一大国の女王だ。
 王位を継ぐ長兄に匹敵する大出世だった。

 彼女が帰国するのは、嫁いでから初めてで、王都をあげての帰国祝いが開かれる事になっている。
 だが、それも先延ばしになるのだろう。

「そうそう、ソフィア女王の帰国祝いのお祭り、良かったら一緒に見物に行かないか?」

 とても魅力的な誘いだった。
 もう少しで、喜んで行くと返事をしそうになった。

 だが……

「遠慮するわ」

 お祭りも昔は大好きで、田舎の小さな収穫祭ですら、わくわくして待ち遠しかった。
 しかし、このご面相では、物笑いの種になるだけだ。
 それに……

「あんな野蛮で残酷な女を、喜んで出迎える気にはなれないもの」

 つい、刺々しい言葉が口をついて出た。
 ルーディが新聞から目をあげ、少し驚いたような顔をした。

「女王と面識があるの?」

「え?ないわよ」

「まるで、本人を知ってるみたいな口ぶりだった。口を聞いた事もないのに、どうして彼女が野蛮で残酷だってわかるのさ」

 言葉につまり、思わず弁明した。

「だって……みんながそう言ってるわ……夫が死んだらこれ幸いとシシリーナ国を乗っ取った悪賢い女よ。きっとシシリーナの国民は酷い目に会ってるわ」

 イスパニラに武力で植民地化されたラヴィの故郷では、ソフィアの評判は宜しくなかった。
 残忍なイスパニラ王の性質を一番濃く継いでいる、無慈悲な鉄の姫。
 目的の為には手段を選ばぬ女だと、もっぱら噂されていた。
 シシリーナ女王になった件についても、かの国民が異国の姫を女王にしたのは、イスパニラの軍力を笠にきて国民を脅したのだろう。という噂だ。
 ラヴィはその憶測をもっともだと思ったし、疑問を抱こうともしなかった。

 ルーディの口元に、初めて見る皮肉な笑みが浮かんだ。

「その『みんな』に聞いてみたら?ソフィア女王と個人的にお話をした事がありますか?って」

「……」

 きまり悪くてたまらない。
 自分が赤面してるのが判ったが、ムキになってラヴィは言い返した。

「あなたこそ、彼女と面会でもした事あるの?」

「無いよ」

「じゃぁ、偉そうに言わないで!!」

 震える両手で、エプロンを握り締めた。

「野蛮なイスパニラ王の娘よ。野蛮な悪女に決まってるわ!」

「噂や先入観だけで判断して、相手を理解しようともしない事こそが、野蛮だと俺は思う」

 ルーディの口元から皮肉そうな笑みが消え、やはり初めて聞くような、限りなく冷ややかな声音が発される。

「あっ、貴方は何の被害も受けなかったから、そんな事が言えるんだわ! 私みたいに家族を殺されて奴隷に売られてみれば、意見も変わるよ!!」

「え……」

 八つ当たりとわかっても、収まらない怒りが口をついて出る。

「イスパニラの軍は高潔なんて、嘘ばっかり! あちこちの国に手を出して、殺しまわって! 王都は規律を厳しくしてても、兵達は地方でやりたい放題じゃない!」

 イスパニラは確かに軍事国家だが、王都では軍の規律が特に厳しい。
 いくら位の高い将軍といえども、むやみな横暴は許されない。
 イスパニラ軍は、最強にして最高に気高い騎士団であるというのが、この国の誇りであり主張だった。

 それを知ったとき、腹の底からわきあがった怒りを隠すのに、ひどく苦労したものだ。
 大陸各地につくった植民地で、規律のたがが外れた兵士達がやっている事を、少しでも知っているのか!!

「私の実家はね、そこそこ裕福な貿易商だったの。国はイスパニラに占拠されたけど、税金を払って商売を続けていたわ。でも……アイツ等は、反逆者なんて言いがかりをつけて、襲い掛かってきた! お父様を殺して財産を取り上げるためにね!」

 今までなるべく考えないようにして堪えていた涙が、せきを切って溢れ出した。

「姉さまは、何人もの兵に犯されて殺されたわ!私も奴隷市場行きよ!」

「ラヴィ……」

 そこで、止めておけばよかったのだ。
 けれど、止らなかった。

 ルーディが、よりによってイスパニラ王の娘を庇うだなんて!

 いや、他の人がソフィアを庇おうとけなそうと、ここまで動揺したりはしなかっただろう。ルーディだからこそ、嫌だった。
 ひどく醜い焦げ付いた感情のまま、押し殺した声で悪態が口から飛び出る。

「誰が相手でも公平に判断しようとするなんて、ルーディはとってもいい人だわ。世界が貴方のような人ばかりなら、きっと不幸な争いはなくなるでしょうけど……貴方みたいにはなれない人だっているの。自分の理想を、私にまで押し付けないで」

 一瞬、部屋の中がシンと静まりかえった。

「……ぁ」

 こんなに怒りを露にしたルーディの顔を、ラヴィは初めて見た。
 彼がゆっくり立ち上がって、ラヴィに近づく。
 殴られると思い、思わず身をすくめた。
 しかし、ルーディは手を上げたりはせず、黙ってラヴィの横を通り過ぎ、部屋を出て行った。
 一人残された居間で、ラヴィは呆然と立ち尽くす。

“疫病神!!”

 耳奥に、亡き姉の声が鋭く突き刺さった。
 何百回となくリフレインしていたその声が、いつのまにかこの数日は聞えていなかった事に気付く。
 ルーディのそばにいて、たわいない会話をして笑いあっているうちに、いつのまにか聞えなくなっていた。

“全部あなたのせいよ!!”

 しかし、舞い戻ってきた呪い声は、容赦なくラヴィを嬲り罵り打ちのめす。

「あ……」

 膝から力が抜け、床に崩れ落ちた。ガクガクと身体中が震える。

「ごめ……んなさ……ごめん……なさい…………」

 ただ、ひたすら繰り返した。
 私に出来る事なんか、もうそれくらいしかないのだから……


 それから一日、二人は口を聞かなかった。
 ルーディは部屋に籠もったまま出てこなかったから、ラヴィは作った食事をテーブルに置き、部屋の扉をノックしてから急いで自室に逃げ込んだ。
 しばらくして食堂に行ったら、皿は空になっていて、なんとなくほっとして片づけをした。

 やがて夜になり、ベッドに入ったが、寝付けなかった。
 いつもなら、柔らかい布団に入ればすぐに気持ちよく眠ってしまうのに。
 時折、夜中にルーディの研究室と庭をつなぐ窓の開閉する音が聞こえるが、それも夢うつつでまどろみながら聞くくらいだ。
 けれど、今夜は妙にそれが気になった。
 寝室の窓から外を見ると、満月に近い月が庭を照らしていた。

「ひっ!」

 大きな四足の獣の影が、薬草園に映っていた。
 金色の瞳が月光にぎらつく。
 窓から飛びのいた拍子に転び、盛大に尻餅をついた。その痛みさえ気にならないほど、恐怖の奔流が背骨を這い登る。

「あ……あ……」

 右頬の古傷から、まだ真っ赤な血がしたたりおちているような気がする。
 床を這いずってベッドに飛び込み、必死で頭から布団にくるまった。
 こんな都会に狼がいるはずがない。あれはきっと、ただの野犬だ。
 しかし、一度わきあがってしまった恐怖は膨らむ一方だ。

「……ディ……」

 無意識に、叫んでいた。

「ルーディ!!!ルーディーーーッ!!!!」

 返事はなかった。
 あんなに怒らせてしまったのだ。来てくれるはずなどない……
 しかし数分後、階段を駆け上がる音がし、勢いよく扉がひらかれた。

「ラヴィ!?どうした!?」

 ルーディは眠っていたのだろうか。
 シャツは羽織っただけでボタンも留めておらず、靴も履いていない。
 震えながらラヴィは駆け寄り、訴える。

「お、狼……狼が……庭に……」

「……見間違えたんじゃないかな?庭に狼なんかいなかったよ」

 優しく宥められたが、首を振った。

「いたの!絶対に!!」

 ルーディが小さくため息をついたのがわかった。
 また怒らせてしまったかと思った瞬間、抱き寄せられた。

「じゃぁ、ここにいるよ。それなら怖くない?」

 驚いて頬が熱くなったけど、逞しい胸板から伝わる体温と鼓動が、恐怖を拭い去ってくれる。
 必死でコクコク頷いた。

「――昼間はごめん」

 頭上から、ポツリとルーディの呟きが降ってきた。

「……え?」
「君の事情も知らないで、偉そうに説教なんかして……」

 窓から差し込む月光が、ルーディの寂しげな顔を照らし出している。

「言われた通りだ。俺の悪いくせだよ。自分の理想や価値観を押し付けようとしてしまう」

「ルーディ……?」

「昔、それでなにもかもぶち壊したんだ。自分の考えを皆が理解してくれるはずだと決めつけて、状況を良くするどころか、結局は大勢の人を不幸にしたのに……俺は、まだ懲りてなかったみたいだ」

 見上げたルーディの顔には、深い苦悩が浮かんでいた。
 二週間、同じ家に住んでいながら、ラヴィはルーディの事を殆ど何もしらない。
 
 どうして錬金術師になったのか?
 家族はいるのか?
 今まで、どんな人生を送ってきたのか……?

「その時、ラヴィに言われたのと、同じ事を言われたなぁって思い出して……八つ当たりだったんだ。……本当にごめん」

「……ちがうの」

 ぽろぽろと涙が溢れてきた。

「私こそ……全部……八つ当たり……だったの……ごめんなさい……」

 気づけば、泣きながら告白していた。

「本当は……私のせいだったの……呪われてるの……凶星に……」

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