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第一章:大迷宮の探索 -ロウリー-

第11話「十三歳たち」

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「あたしとおんなじ十三歳の異能持ちが、ギルドに登録しに来たって噂で聞いてさ、ちょっと気になったから、情報探ってみたんだ」

 金色のショートヘアーをかきあげて、こともなげにそう言ったロウリーは、ニッと笑った。
 アミノは複雑そうな表情でこっちを見る。
 俺もアミノと目配せをして、ロウリーの意図を読み取ろうと質問を続けてみた。

「探ってみたなんて簡単に言うけど、俺たちは誰にも情報を漏らしていないつもりだぞ」

「はっは、甘いよ兄ちゃんたち! そいつの見た目はギルド周辺じゃ目立つしさ、そこに絡んできたのが噂の【運び屋】とあっちゃあ、情報をたどるのも簡単だぜ! あんたら酒場で騒ぎ起こしたの忘れたわけじゃないだろ?」

 確かに。不本意ではあるが、【銀翼ぎんよく】アルシンに絡まれたせいで、酒場で悪目立ちしてしまった。
 アミノを探しているものとすれば、俺の行動を監視するくらいは簡単なのかもしれない。

「で? どうやって第五層に来た?」

「どうやってって、兄ちゃんボケてんのか? 一緒に昇降カゴに乗ったろ?」

「そういう意味じゃない。第五層の探索許可を得ているどころか、ギルドに登録もしていないお前が、どうやってカゴに潜り込んだのかって聞いてる」

 ロウリーは「あぁ~」とうなずくと、不意に「ん?」と暗闇の向こうへ目を凝らす。思わず振り向いた俺たちが視線を戻すと、そこにロウリーの姿はなくなっていた。
 俺とアミノは慌てて立ち上がり、周囲を探す。
 しかし、一瞬前までたしかにそこに居たはずのロウリーの姿は、こつ然と消えていた。

「――とまぁこんな感じだ」

 突然腰のあたりからロウリーの声が聞こえる。視線を下げると、そこには俺を見上げるロウリーの姿があった。
 先程は気配を感じ取ることのできたアミノも、今回は俺と同じ様に驚いている。
 その表情を見て、ロウリーは可愛らしい八重歯を見せて破顔はがんした。

「へっへー、どうよ?」

「どうって……すごいな」

「……すごいです」

「これがあたしの異能ギフトだ! 第五層のモンスターにだって見つかったことないんだからな! あんな緊張感のない迷宮管理官なんかに見つかったりしねぇよ!」

 第五層のモンスターにすら見つからない気配遮断。アミノのギフトもそうだが、ロウリーのギフトもかなりすごい。俺のハズれギフトとは雲泥の差というやつだ。また落ち込みそうになった俺は、しかし、アミノの不安げな表情を見て、気を取り直した。

「そのすごいロウリーが、こんなとこまで俺たちをつけてきた理由を聞かせてもらってもいいか?」

 結局の所、俺たちの疑問はこの質問につきる。
 今までの会話でロウリーに敵意はないだろうと結論づけた俺は、遠回しな質問はやめて、いきなり核心をついた。
 アミノも真剣な目でコクコクと首を振る。ロウリーは首をかしげると、右目の下の泣きぼくろを指先でこりこりとかいた。

「ん~……なんでって聞かれてもなぁ。まぁあれか、面白そうだったからかな」

「なにも面白いことなどありませんよ」

 アミノは即答する。
 ロウリーは「はぁ?」と片眉を上げ、アミノに詰め寄った。

「おまえ! 冒険者でもない異能者が、ちまたで噂の【運び屋】と第五層へ潜ろうってんだぞ!? しかもあたしと同じ十三歳だ! これが面白くなくて何が面白いんだよ!?」

 腰に手を当て、額がぶつかりそうなくらいにまで顔を近づける。
 アミノはその場から動くこともできず、ロウリーの瞳を見つめ返した。
 ロウリーの「面白い」の基準がどこにあるのかは知らないが、確かにそれは興味をそそる事態であることは俺にもわかる。
 小さな二人の姿をただ眺めながら、俺はそう思った。

「そんでさ、兄ちゃん」

「……なんだ?」

「そろそろあたしにも教えてくれよ。よっぽどの理由……うまい話があんだろ? 今、悪い噂を流されることだけは絶対に避けたいはずの【運び屋】が、ギルドのルールを破ってまで、十三歳の子供を第五層まで連れてきた目的をさ」

 至近距離でアミノと見つめ合ったまま、ロウリーはニヤリと笑う。
 俺は少し考え、アミノの顔を見る。
 顔を動かさないまま、視線だけをこっちに向けたアミノと目で会話をして、俺はロウリーにこの探索の目的を告げた。
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