忘れた引き出しの場所

platinum666

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忘れた引き出しの場所

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お風呂で誰が一番長く潜れるか競争していた。
僕達二人はゴーグルをして、お父さんを含めた三人で水の中で顔を見合わせる。
水の中でにらめっこしてるみたいに。
僕が最初に浮き上がる、そしてお父さん、次がお兄ちゃん。
お兄ちゃんは喜び、僕は悔しがる。

日曜日、ママに内緒で駄菓子屋さんに行き、それを持ってお兄ちゃんとお父さんと三人で大きな滑り台のある公園に行った。
僕は大きな滑り台が怖くてお父さんの股の間に座って滑った。


父は記憶の欠片を頭の何処かに置き忘れてしまって、引き出しの場所を忘れてしまった。
僕は父と一緒に引き出しの場所を探している。


「ほんの何日か見ないだけで、大きくなったな
ちゃんと野菜も食べてるか?」
父は僕を見て、僕の名前を呼んで
僕の頭を撫でる。



夜、僕とお兄ちゃんとママが寝る時間になっても仕事で帰って来ない日が続く時があった
次の日は夜ご飯のとき、お父さんが帰ってくるとお兄ちゃんはカーテンに隠れ、僕は机の下に隠れた。
お父さんはあれ?二人は?とママに聞くと
お兄ちゃんと僕はお父さんを驚かせようと猫の鳴き真似だったり、こっちだよーと隠れたまま言った。



お父さんは今、僕の頭の何処かに置き忘れていた記憶の引き出しを開けた。
まだまだお父さんにも僕にも忘れていた記憶がたくさんあるはずだ。

お父さんにしか開けられない僕の記憶の引き出し。
僕にしか開けられないお父さんの記憶の引き出し。
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