サイボーグとアンドロイド

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サイボーグとアンドロイド

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僕はダーリン8号という名前を付けられたアンドロイドだ。
僕は8号なので他にもダーリンが7体いるということになる。
ダーリンなんてふざけた名前を付けた先生は腕と足を機械に改造しているサイボーグで、先生と僕はアンドロイドのバージョンアップや人間をサイボーグ化するクリニックを運営している。
クリニックは女性の美容目的か中高年の関節に関する物が多い。
「二の腕の弛みが気になりませんか?当院ではそんなお悩み永遠に解決致します」とか
「膝の関節が最近痛くて困っている、そんなあなたに朗報です」とかそんな謳い文句で宣伝している。
逆に内臓や脳や心臓の移植はうちのクリニックではなく
病院の仕事だ。


今日も朝から先生が診察を行い僕が助手を務めている。
「二の腕の弛みも気になるし、最近、肩が上がらなくて困ってるんです」40代の女性は神妙な顔つきで話している。
「それなら、肩の付け根から私みたいに機械に変えたらそんな悩みは明後日どころか、永遠に吹っ飛んじゃいますよー」
先生はピカピカに光った腕をぐるぐると回して、自慢げに微笑んだ。
「見た目は普通の肌のようにすることができますか?」
「もちろんできますが、こっちの方がカッコいいですよー」
先生は語尾を伸ばすいつもの癖で言いながら、ウインクした。
「じぁ先生とおんなじでお願いします」
「イエス、○○クリニック」先生はいつも決め台詞みたいにこの言葉を言い親指を立てる。
そして先生は僕に向かって
「じぁ、早速オペしましょ、ねぇダーリン」といつものお決まりの流れで言った。  
患者さんもそこで必ず呆気に取られて、開いた口が塞がらないというわけだ。
「彼はアンドロイドで助手のダーリン8号です」
僕の見た目は先生の好みらしく、いわゆるイケメンで人間にしか見えない姿をしている。
「奥様、私が手術を担当するダーリン8号といいます」
僕は真剣な表情を作り、口元には笑みを浮かべた。

それから手術は無事終了し、後は1週間のリハビリ入院すると退院になる。
ただし、ほとんどの患者さんは両腕を機械にした場合、後々両足もする事が多い。
何故なら、胸やお腹やお尻は美容整形できるが、足の関節や足の長さは変えることができない。
それを両足機械に変えると背の高さまで変えることができるからだ。
そして最終的にはダーリン1号~7号の体に提携の病院で脳移植までした人もいる
僕がイケメンでスタイル抜群なのは、先生の好みというだけでなく患者さんがなりたい理想の形というわけだ。

結局、人間はアンドロイドになりたいのかもしれない。
老いや見た目のコンプレックスをなくすために。
それだけでなく、もしも嫌な思い出や都合の悪い記憶を人間が脳から消去してしまったら
それは、不安や悲しみや恐怖を感じることがない僕と一緒じゃないだろうか?
僕は思う。
人間は何もできない赤ん坊から成長し、いずれは老いていき
嫌な事も楽しかった事も心に留めて生きていくからこそ
支えあったり、慰めたり、優しくできたりするんじゃないだろうか?

僕にはわからない、人の心を持たないアンドロイドだから。







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