悪役令嬢になりたくないので婚約を阻止しようとしましたが、いつのまにか王子様に溺愛されています。

えるる

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第二章 <断罪阻止>

第10話 <生徒会>

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 今日は目の死んだご令嬢に絡まれることもなく(もちろん彼女たちは授業に来ていなかったが。)、つつがなく授業を終えたローズ。
 ランチの時間、ローズとアシュガは食堂へ向かった。

 食堂と言っても、私達が向かう先で出てくる料理は、おばちゃんが作る、安くて早くお腹を満たせるようなものではない。
 ここは、多くの貴族と一部の平民が通う学校なのだ。
 食堂もいくつかあり、平民向けや貴族向け、貴族の中でも最上級の者が使うランクの食堂などがある。
 そして、私達が普段使っているのは勿論最上級の食堂だ。つまり、一流のシェフが調理する最高級の料理が出てくる。
 ……ただし、バカみたいに高い。

「ローズさ……ローズ!」
「アザミ!」

 アザミが満面に笑みを浮かべて私を呼んだ。
 子爵家の令嬢が公爵家の者に先に話しかけるなんて、ナンセンス!
 ……なんてことは言わない。友達だから。

「こんにちは、アザミ嬢」
「ご機嫌よう、アシュガ殿下」

 アザミは、もうアシュガ様に慣れたようだ。
 いつまでもガチガチで居られても困るから、よかった。

「そういえば、今日は生徒会のメンバーが決まるみたいですわね。」

 今日一日、気にしていたことだ。

「っえ、えぇ、そうね」
「やはり殿下とローズは選ばれるのかしら?あとは、シユリ公爵家のレンデュラ様?」
「ま、まさか、私が選ばれるはずがないでしょう」

 そうであってほしい。切実に。
 というか、アザミの予想結構当たってる。……いや、当たっていて欲しくは無い!

「えぇ?ローズは、成績優秀で皆に優しいでしょう?学校を背負うのに相応しいと思うわ」
「私なんかよりもっと相応しい方がいると思うわ!……あ、料理が出来たみたいだから取りに行ってくるわね。」

 ナイスタイミング、食堂のおばちゃ……じゃなくて食堂のシェフ!
 食堂のシェフって、前世からすると物凄く違和感があるけど。

「ローズ、私も一緒に行こう」

 しまった、アシュガ様の存在を忘れてた。

「あ、え、はい!行きましょう。」
「……ローズ、もしかして私のことを忘れていた?」
「そ、そんなわけありませんわ。」
「ふぅん……」

 アシュガ様の目がスッと細められる。
 まずい。

「ほ、ほら、アシュガ様、早く席に戻りましょう?」
「そうだね。それより、ローズ」

 蕩けるような甘い笑みを作って・・・、アシュガ様は言う。

「今日の放課後、ローズの部屋を訪ねていいかい?」
「うっ……き、今日は予定が」
「おかしいなぁ。今日は大きな予定は無いはずだし、暫く大人しくするっていう私との約束を破ったの?ローズ、いけない子だね」

 あ、ダメだ。目が笑ってない。

「……わかりました。」
「じゃ、放課後行くね」

 ……放課後の事は考えないでおこう。

「ローズ? ご飯食べる時間無くなるわよ?」
「あっ、早く食べないと間に合わない!」

 間に合わないでいたい……。
 いや、私が行かなくても結果は同じか。腹を括るしかない。

「ローズ、私を置いていかないでね?」
「うっ……ごめんなさい。」

 アシュガ様、段々独占欲が酷くなってきてない……?
 そうやって求められるのもいいな、と思ってしまう辺り、私は本当にアシュガ様のことが大好きなんだな、と自分で思ってしまう。

 そんなことを考えながら、私は出来うる限り急いで昼食を食べた。

 ☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+

 そして、ローズにとっては緊張の瞬間が訪れた。
 昼食後すぐに始まった生徒会役選は、

「生徒会はローズ・ネーション、アシュガ・ヘルビアナ、レンデュラ・シユリ、アナベル・イージュの四人だ。異議はないな? ……よし、その四人、立て。」

 役選とは名ばかりの、ただの発表だった。

(異議アリ!! なんて、言える空気じゃないよ……)

 言えるものなら、選ばれたローズの方が異議を唱えたかった。
 しかしローズが渋々立つと、ラベンダー先生は指をパチンと鳴らした。

 その途端、制服のリボンががオレンジ色の光に包まれる。周りを見ると、生徒会に選ばれた三人のネクタイやリボンはみんなオレンジ色の光に包まれている。
 みるみるうちにリボンには美しい銀の装飾が出来ていった。

「ロングホームルームは終了だ。生徒会の四人は放課後生徒会室に行け。解散。」

 そう言うなり、ラベンダー先生は教室から出て行った。

 これロングホームルームじゃなくて、ショートホームルームなんじゃ……。

「ローズ、後で生徒会室へ行こうか。」

 満面に笑みを浮かべるアシュガ様。
 ……たとえアシュガ様と一緒でも、あの攻略対象が跳梁跋扈する(そんなことはない)生徒会室へ行くなんて……!

「……私、少し用事がありまして、生徒会室にはいけませ」
「用事? さっき、無いって言ったよね?」
「……体調が思わしく――」

 そこまで言ったとき、はたと思い出した。
 悪役令嬢ローズは、生徒会に入ったはいいものの仕事が面倒くさくなってヒロインに押し付けたり、仮病を使ってサボったりするのだ。
 そのせいでヒロインは過労で倒れてしまうというイベントがあった。

 ……ヒロイン、弱すぎないかしら……?

 いやいや、そんなことを考えている場合じゃない。とにかく、行かなくては悪役令嬢になってしまう。
 運命を変えるためには、悪役令嬢と同じ行動は控えなければならない。
 ……生徒会室へ行ったら、絶対に大人しくしておこう。

「ローズ?」
「っ! いえ、なんでもありません。行きましょう」

 ☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+

 結論から言うと、生徒会メンバーはゲームと同じだった。
 ヴィリディからはレン様、アシュガ様、ローズ、アナベル。
 ローゼアからはフォル・フルレンスと、モブの女子が一人と男子が二人。
 ライティアからはリーゴとモブの女子が三人。

 みんな、胸のリボンやネクタイには綺麗な銀の装飾がついている。
 特に何か言われた訳では無いが一列に並んだ私達。

 ……目立たないように、端っこにいよう。

 それにしても、攻略対象を避けていたからか初めて会う顔が多いな……なんて考えていたその時、ゲームでは『生徒会長』としか表記されていないモブだった、メガネを掛けた先輩が口を開いた。

「えー、では自己紹介から……僕はレイ・カーリス。よろしくね。」

 なんだか穏やかそうな、ほわほわした話し方だな。
 その後から、これまたゲームではただのモブだった現生徒会メンバーが軽く自己紹介をしていった。

「よし、じゃあ次はみんな、一人ずつ前に出て自己紹介していってくれるかな?」

 と、がっつり私を見ながら言った。
 うわぁ、これ端っこにいたからか!!
 それでも渋々前に出て、幼い頃から叩き込まれた挨拶を披露する。

「ローズ・ネーションですわ。これからよろしくお願い致します」

 にっこりと笑って、お辞儀。
 もはや挨拶など無意識でできる。

 パラパラと拍手が起こり、カーリス先輩の「次、どうぞ」という一言でアシュガ様と交代。

「アシュガ・ヘルビアナです。私は確かに殿下ではありますが、この学園の中では皆さんは同級生と先輩です。なので、私の事は殿下と呼ばないでいただけると助かります。」

 今度はさっきよりも大きな拍手。
 次はヒロインだ。

「えっと、アナベル・イージュですっ!生徒会の仕事、頑張るので皆さんよろしくお願いしますっ!」

 うん、ゲームと一言一句違わぬ自己紹介。
 しかし、拍手はあまり大きくない。

 そうして、全員の挨拶が終わった。

「よし、終わったね。えっと、慣例通りで行くと生徒会長は僕なんだけど……アシュガ君、生徒会長よろしくね」

 あ、やっぱりゲーム通りなのね。
 それにしてもおかしい気もするけど、まぁ……ゲームだから、仕方ない?

「わかりました、カーリス先輩。」

 あっさり理解するアシュガ様もすごいな。

「では、とりあえず今日はここまでにするね。アシュガ君は生徒会長の役目を説明するから、ちょっと残っていて欲しいんだ。他のみんなは解散。」

 その声で私達は出て行った。
 ……これ、アシュガ様を待っていたほうがいいのだろうか?
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