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第二章 最高の幕の下ろし方
第二十三話 最後に笑えれば─2
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「会えて……ない……?」
ルソーさんの答えに、私は思わず絶句した。
私が親と会えない──より正確に言えば会わない──のは、れっきとした理由がある。
けどルソーさんが、自分の子どもと『会えてない』というのはどういうことだろう?
「どうして……ですか?」
「それは……」ルソーさんは、いつになく真剣な目をして、上を睨み付けていた。話そうかどうしようか、悩んでるようだった。
「……ごめんなさい。私の口から話すことは出来ないわ。私の中でも……まだ踏ん切りが着いてないことなの……」
「そう、ですか……いえ、それなら別に無理して話さなくても……」
その後ルソーさんは、終始「ごめんね」と言っていた。
ルソーさんとそのお子さんの間に何があったのか、正直気になる。
でも、その事をこれ以上ルソーさんに聞くのは無理そうだった。
「ご馳走さまでした。急に押し掛けてきて、すみません」
「いえいえ良いのよ。こんな年寄りの我が儘に付き合わせちゃってごめんね」
お昼になる前に、私はルソーさんの家をおいとますることにした。そろそろ帰らないとネロが心配する。
「ネロちゃんにもよろしく伝えて。難しい依頼なのは分かってるんだけど、是非叶えて欲しいの」「大丈夫ですよ。あれでも仕事は真面目にやってる……はずです」
そんな事を笑いながら言った後、ふと思い出した事があった。
「ルソーさん、依頼について何か要求する事とか有りますか? こんなことをしてほしいとか……」
「そうねぇ……」
ルソーさんは首を傾げると、悩ましそうにこう言った。
「笑って終わること……かな。頼むとしたら」
「笑って?」
「そう。泣きながら終わっても、悲しいだけでしょう? なら、最後に笑って終われた方が良いなって」
「なるほど……」
何かの終わりというのは涙で締め括られるものだと思っていたが、確かに笑いながら終わるのも悪くは無い。
いや、むしろそっちの方が、この世界には合っているのかもしれないな。
「……という訳で、お店を閉店するときは湿っぽくしちゃ駄目なの。もっと明るく終わらないといけないわ」
お昼時、ネロ特製のバジルの効いたパスタを食べながら、私とネロは作戦会議を立てていた。
「涙でお別れ、じゃなくて笑顔でお別れ、ね。分かる?」
「分かる分かる」
パスタを啜りながら、ネロが相槌をうつ。
「僕もルソーさんの要望には出来る限り答えていこうと思ってるし、そのための準備も始めてるよ」
「本当に~? その『出来る限り』ってのが怪しいな……」
「何を疑うことがあるんだよ……ったく」
その後も黙々とパスタを食べるネロを見て、私は軽く溜め息をついた。
ま、あまり気を揉んでも仕方ない。ここはネロの腕前を信頼するとしよう。
「そういえば……ルソーさんって、お子さんがいたのね。私ちっとも知らなかった」
ふと思い出した私がそう言うと、ネロは目を丸くした。
「ルソーさんに子ども? 何それ、初めて聞いたよ」
「え、そうだったの?」
思わぬ答えに、逆に私の方が驚いてしまった。
「子どもがいたなら、なんで店を継がせ無かったんだろうな」
「ルソーさんが言うからには、もう二十年も会えてないって。その理由は教えてくれなかった」
「ふむ……」
ネロが例の「考えるポーズ」をとる。
「会えてないってのは……どういう意味なんだろうな……?」
ネロの言葉に、私は答える事が出来なかった。
私の脳裏に、部屋で見た写真が過る。
若き頃のルソーさんに抱かれた赤ちゃん……その子は今どうしているのだろうか……
────あれ?
その時私の中で、チクリとした違和感が沸いた。
しかしその違和感が何なのかは気づくことが無く、その日の昼食は終わった。
ルソーさんの答えに、私は思わず絶句した。
私が親と会えない──より正確に言えば会わない──のは、れっきとした理由がある。
けどルソーさんが、自分の子どもと『会えてない』というのはどういうことだろう?
「どうして……ですか?」
「それは……」ルソーさんは、いつになく真剣な目をして、上を睨み付けていた。話そうかどうしようか、悩んでるようだった。
「……ごめんなさい。私の口から話すことは出来ないわ。私の中でも……まだ踏ん切りが着いてないことなの……」
「そう、ですか……いえ、それなら別に無理して話さなくても……」
その後ルソーさんは、終始「ごめんね」と言っていた。
ルソーさんとそのお子さんの間に何があったのか、正直気になる。
でも、その事をこれ以上ルソーさんに聞くのは無理そうだった。
「ご馳走さまでした。急に押し掛けてきて、すみません」
「いえいえ良いのよ。こんな年寄りの我が儘に付き合わせちゃってごめんね」
お昼になる前に、私はルソーさんの家をおいとますることにした。そろそろ帰らないとネロが心配する。
「ネロちゃんにもよろしく伝えて。難しい依頼なのは分かってるんだけど、是非叶えて欲しいの」「大丈夫ですよ。あれでも仕事は真面目にやってる……はずです」
そんな事を笑いながら言った後、ふと思い出した事があった。
「ルソーさん、依頼について何か要求する事とか有りますか? こんなことをしてほしいとか……」
「そうねぇ……」
ルソーさんは首を傾げると、悩ましそうにこう言った。
「笑って終わること……かな。頼むとしたら」
「笑って?」
「そう。泣きながら終わっても、悲しいだけでしょう? なら、最後に笑って終われた方が良いなって」
「なるほど……」
何かの終わりというのは涙で締め括られるものだと思っていたが、確かに笑いながら終わるのも悪くは無い。
いや、むしろそっちの方が、この世界には合っているのかもしれないな。
「……という訳で、お店を閉店するときは湿っぽくしちゃ駄目なの。もっと明るく終わらないといけないわ」
お昼時、ネロ特製のバジルの効いたパスタを食べながら、私とネロは作戦会議を立てていた。
「涙でお別れ、じゃなくて笑顔でお別れ、ね。分かる?」
「分かる分かる」
パスタを啜りながら、ネロが相槌をうつ。
「僕もルソーさんの要望には出来る限り答えていこうと思ってるし、そのための準備も始めてるよ」
「本当に~? その『出来る限り』ってのが怪しいな……」
「何を疑うことがあるんだよ……ったく」
その後も黙々とパスタを食べるネロを見て、私は軽く溜め息をついた。
ま、あまり気を揉んでも仕方ない。ここはネロの腕前を信頼するとしよう。
「そういえば……ルソーさんって、お子さんがいたのね。私ちっとも知らなかった」
ふと思い出した私がそう言うと、ネロは目を丸くした。
「ルソーさんに子ども? 何それ、初めて聞いたよ」
「え、そうだったの?」
思わぬ答えに、逆に私の方が驚いてしまった。
「子どもがいたなら、なんで店を継がせ無かったんだろうな」
「ルソーさんが言うからには、もう二十年も会えてないって。その理由は教えてくれなかった」
「ふむ……」
ネロが例の「考えるポーズ」をとる。
「会えてないってのは……どういう意味なんだろうな……?」
ネロの言葉に、私は答える事が出来なかった。
私の脳裏に、部屋で見た写真が過る。
若き頃のルソーさんに抱かれた赤ちゃん……その子は今どうしているのだろうか……
────あれ?
その時私の中で、チクリとした違和感が沸いた。
しかしその違和感が何なのかは気づくことが無く、その日の昼食は終わった。
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