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植物学者見習いの僕と嫌われ者だった獣人さんは好き合っているらしいです
真綿
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「いっぱい貰っちゃいましたね」
セゾの背負っているリュックは、老婆からもらった服でぱんぱんになっていた。
その様子を見て、ホタルは困ったように、それでもどこか嬉しそうに声をかける。
「荷物になりそうなら売ってもいいっつーから貰ったけどよ……流石に荷物すぎるな」
呆れたように言うセゾの言葉を聞き、ホタルは斜めがけにしている自分の肩掛け鞄に視線を落とした。
中身は着替えが一組、手帳とペン、それに軍手だけ。驚くほど軽い。
「僕も持ちますよ」
「いい。別に重くねぇ」
「でも……」
ホタルが言葉を探すような顔をすると、セゾはふいに懐を探りはじめた。
「……じゃあ、これ持ってもらうか」
「はい!」
その瞬間、ホタルの顔がパッと明るくなる。
明るい声とともに左手を差し出した。
「ほら」
「……えっと。これって……」
セゾの懐から出てきたのはさきほど露店で見たネックレスだった。
三日月形の木の下部に、赤い石がひとつ埋め込まれている。
「さっき、アンタも良いって言ってただろ?」
「それは……セゾさんがつけるのかと思って……」
自分には少し派手だし、そもそも装飾品を身につけるような習慣もない。
そう思いはしたが、ホタルはそれ以上言葉を続けられなかった。
(僕、セゾさんに怒っちゃったし……受け取らないと悪いよね。それにもう買っちゃったんだから……)
セゾはホタルの首にネックレスをかけると、満足気に笑う。
「ほら。似合うじゃねぇか。持ってろよ」
「……はい。あの、あとは……僕が持つもの……」
「それだけでいい。あんまり多いと大変だろ」
「……そうですか」
機嫌良く歩くセゾの半歩後ろ。
その背を追うようにホタルは歩き始めた。
◆
宿を前にしたホタルは目を白黒させていた。
まだ新しさを感じる白いレンガ調の三階建て。窓は大きく、どの部屋にも白くて綺麗なカーテンが揺れている。目の前には小さな広場があり、噴水とベンチまで備えられていた。
「こ、こんな高そうなところに泊まるんですか……!?」
「アンタが壁が厚いほうがいいって言ったんだろうが」
「そうですけど……こんなお城みたいなとこじゃなくても……」
「アンタの住んでたとこの、半分もねぇだろ」
そう言い残して、セゾはあたふたしているホタルを置いて中へと入っていく。
「その……! 壁が厚いって言っても、ここまでじゃなくていいんです! 普通の……普通のとこで!」
「一番いい宿でいいって言ったじゃねぇか」
少し前、セゾは通行人を捕まえて、この町で一番良い宿を聞いていた。
そこでいいかと問われ、ホタルも頷いたのだ。
「それは……一番良い宿って、こんなに豪華だと思ってなくて! 今からでも別の……!」
カウンターへ向かうセゾの背にホタルは慌てて声をかける。
だが、セゾは気に留めずに淡々と手続きを進めていた。
「お客様、ほかのお客様のご迷惑になりますから……」
「あっ。ごめんなさい……」
宿の従業員にそっと声をかけられ、ホタルは身を縮め、静かにセゾを見つめた。
金貨を五枚支払い、鍵を二つ受け取っている。
(僕が、壁の厚いところがいいって言ったから……一番いい宿ってこんなにお金かかるものだったんだ……)
豪華なシャンデリアがぶら下がる広いロビーで、
ホタルの胸に揺れる三日月のネックレスは、やけに安っぽく見えた。
セゾの背負っているリュックは、老婆からもらった服でぱんぱんになっていた。
その様子を見て、ホタルは困ったように、それでもどこか嬉しそうに声をかける。
「荷物になりそうなら売ってもいいっつーから貰ったけどよ……流石に荷物すぎるな」
呆れたように言うセゾの言葉を聞き、ホタルは斜めがけにしている自分の肩掛け鞄に視線を落とした。
中身は着替えが一組、手帳とペン、それに軍手だけ。驚くほど軽い。
「僕も持ちますよ」
「いい。別に重くねぇ」
「でも……」
ホタルが言葉を探すような顔をすると、セゾはふいに懐を探りはじめた。
「……じゃあ、これ持ってもらうか」
「はい!」
その瞬間、ホタルの顔がパッと明るくなる。
明るい声とともに左手を差し出した。
「ほら」
「……えっと。これって……」
セゾの懐から出てきたのはさきほど露店で見たネックレスだった。
三日月形の木の下部に、赤い石がひとつ埋め込まれている。
「さっき、アンタも良いって言ってただろ?」
「それは……セゾさんがつけるのかと思って……」
自分には少し派手だし、そもそも装飾品を身につけるような習慣もない。
そう思いはしたが、ホタルはそれ以上言葉を続けられなかった。
(僕、セゾさんに怒っちゃったし……受け取らないと悪いよね。それにもう買っちゃったんだから……)
セゾはホタルの首にネックレスをかけると、満足気に笑う。
「ほら。似合うじゃねぇか。持ってろよ」
「……はい。あの、あとは……僕が持つもの……」
「それだけでいい。あんまり多いと大変だろ」
「……そうですか」
機嫌良く歩くセゾの半歩後ろ。
その背を追うようにホタルは歩き始めた。
◆
宿を前にしたホタルは目を白黒させていた。
まだ新しさを感じる白いレンガ調の三階建て。窓は大きく、どの部屋にも白くて綺麗なカーテンが揺れている。目の前には小さな広場があり、噴水とベンチまで備えられていた。
「こ、こんな高そうなところに泊まるんですか……!?」
「アンタが壁が厚いほうがいいって言ったんだろうが」
「そうですけど……こんなお城みたいなとこじゃなくても……」
「アンタの住んでたとこの、半分もねぇだろ」
そう言い残して、セゾはあたふたしているホタルを置いて中へと入っていく。
「その……! 壁が厚いって言っても、ここまでじゃなくていいんです! 普通の……普通のとこで!」
「一番いい宿でいいって言ったじゃねぇか」
少し前、セゾは通行人を捕まえて、この町で一番良い宿を聞いていた。
そこでいいかと問われ、ホタルも頷いたのだ。
「それは……一番良い宿って、こんなに豪華だと思ってなくて! 今からでも別の……!」
カウンターへ向かうセゾの背にホタルは慌てて声をかける。
だが、セゾは気に留めずに淡々と手続きを進めていた。
「お客様、ほかのお客様のご迷惑になりますから……」
「あっ。ごめんなさい……」
宿の従業員にそっと声をかけられ、ホタルは身を縮め、静かにセゾを見つめた。
金貨を五枚支払い、鍵を二つ受け取っている。
(僕が、壁の厚いところがいいって言ったから……一番いい宿ってこんなにお金かかるものだったんだ……)
豪華なシャンデリアがぶら下がる広いロビーで、
ホタルの胸に揺れる三日月のネックレスは、やけに安っぽく見えた。
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