妹が聖女に選ばれたが、私は巻き込まれただけ

世川 結輝

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34, 師匠

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「バカだバカだと思っていたが、ここまでだったか……」
 大きなため息を吐きかけるトアセスに、私も思わず不機嫌を露わにする。
「そこまで言わなくてもいいじゃない、できないって決め付ける方がバカよ。知らないの? ペネが私の魔力は特別だって言ってたのよ」
 その言葉にトアセスは「ペネ兄が?」と疑いながら、目を凝らして私を見つめる。
「あ、ほんとだ。なんか変な魔力だな、聖女のものとも違う」
 ふむふむと言いながら、それでも私をバカにするように見下ろした。
「ならなんで、魔法にしないんだよ。魔法ならペネ兄が教えてくれるだろ」
「そのペネが私が魔法を使うのは危険だって言ったのよ。あまり魔力が多くは無いから、生命力を使ってしまうって」
「あー、なるほど。バカだもんな」
「ちょっと、私8歳も年上よ? 」
 トアセスはクスクスと笑いながら、頷いた。
「まあ、いいよ。あんた危なっかしいから、自分の身くらい守れるようにならないとな。あの阿呆のためにも」
 阿呆というのが誰を指すのか少し考えたあと、トアセスが柔らかい眼差しで窓の外を見つめるのを見て、クロッセスのことだろうかと少し感じた。特に根拠はなかったが、トアセスの中にまだクロッセスという人間が家族として残っているのだと、そう思えるような声音と瞳だった。
「ありがと、トアセス」
 私のその言葉に一瞬目を見開いたあと、トアセスはまたぶっきらぼうに言う。
「トアでいい。ペネ兄もアルもそう呼んでるんだろ」
 私はくすりと笑い、もう一度言う。
「ありがと、トア」
 赤い頬を隠すように顔を振るうと、トアは真っ直ぐな瞳でこちらを見つめた。
「じゃあ、早速明日からだ。明日練武場まで来い」
 こちらを見つめて歯を見せて笑うトアセスは、年相応のまだあどけない少年に見えた。
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