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魔力の種類は魂により決まり、それは髪に表れる。例えば赤なら炎、青なら水。私の髪は白。魔力の無い証である。
そして黒は……


「そういえば、20年前にそんなお告げをあの大司祭が出してたなぁ」
賢者様は顎に手を添え思い出そうとうんうん唸り出す。
「私はローベルニコフ伯爵家に産まれました。産まれてからはずっと納屋に閉じ込められていました。親は、私に魔石を食べさせて魔力を作ろうとしたり、あらゆるお祓いをしたりしましたが、効果はなく。10歳になった日森に捨てられました。」

生まれてからずっと独りだった。納屋には腐ったパンと私が頼んだからか、本が投げ込まれる。あとはたまに母が雇った変な人が私をお祓いに来たり、チンカス野郎、もとい父が私を殴りに来る。私のせいで家の名前に傷がついたらしい。
私には兄弟がいるらしいが顔も見た事がない。たまに遠くから聞こえる楽しそうな声がきっとそうなのだろうが、私はずっと独りだった。

私は俯いてスープをすする。あまりの温かさのせいか痛み出した傷のせいか、涙がこぼれそうになる。
そんな私を知ってか知らずか賢者様は隣でリンゴを剥き始める。
「この国の迷信だよね。10歳までの子供を捨ててしまうとその家に災いが訪れるっていう。まあ、あの大司祭の予言はそこそこ当たるから貴族たちが本気にするのは無理ないか。」
うさぎ型に切られたリンゴがお皿に並べられる。
「なんだっけ『魔力無しの子供が世界を破滅に導く』だっけ?」
賢者様はニコニコとしながら食べ終わった私の器を受け取り、うさぎリンゴを私の口に突っ込んだ。甘い汁が口の中に溢れ出す。
「それでもみんなは知らないだろうけど、あいつの予言は2割は外れるんだ。60年前くらいに1度外してるし」
賢者様は優しい笑顔で私の白い髪にそっと触れた。優しいその手から何やら暖かいものが流れてくる。溢れかけた涙も傷の痛みも引っ込んでしまった。
「僕のところに居ればいいよ、その予言がホントでも嘘でも僕が世界も君も守るからさ」

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