タンタカタン

こはり梅

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第1話

第1話 エピローグ

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 その後の話を少し。
 妃慈さんの声と重なっていた鳥の怪異は、カラスの怪異だった。カラスは古来より『死を予兆する鳥』という伝承があり、その伝承から生まれた怪異だそうで、事故を巻き起こすような力はなかった。
 妃慈さんのあの声――あれはカラス自体の鳴き声が重なってノイズ掛かったように聞こえていた。カラスは必死に死の危険を教えてくれていたのだそうだ。

 ロア曰く、土砂崩れの後からは妃慈さんと普通に話すことが出来たのは当然で、死の危険がなくなった僕にカラスは鳴くことは無くなったかららしい。
 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 妃慈さんのお母さんについては、三日後から県外に住む友人の所へ会いに行く予定があったそうだ。
 事情が事情ではあるが、怪異についてはそう簡単に話すことはできないし、話したとしてもまず信じてはもらえなかっただろう。
 僕と妃慈さんは回りくどく策を講じることなく、ド直球に外出自体を延期するように願い出てみた。
 始めのうちは理由も言えない、兎に角外出を止めるか、別日に延期してくれの一点張りでかなり怪しまれた。
 初対面の僕が同席していたのもあり、良からぬことを企んでいるのではと、2人は少し喧嘩ムードにもなっていた。
 ああいうときの家族以外の人間の肩身の狭さったら無い。
 結果的には『妃慈がこうまでいうのであれば、きっと何か理由があるのだから』という信頼関係がなせる力で延期することにしてくれた。妃慈さんの日々の行いの賜物なのだろう。

 妃慈さんのお母さんが乗る予定だった電車は、脱線により死者を出すような、大事故を起こした事をネットニュースで知ることになった。
 当の本人である妃慈さんのお母さんはテレビのニュース番組でその事故を知ったそうだ。
 「あら、危なかったのね」
 その一言で終わったと、妃慈さんが報告してくれた。
 その時の呆れているような、怒っているような、安堵したような複雑な顔で報告してきたのを僕は良かったと思う。
 妃慈さんに言ったら、本人は恥ずかしいだろうから言わずに心にしまっておいた。

 その後は特にノイズが重なることなく、お母さんとも普通に会話が出来ていると妃慈さんは満面の笑みで報告してくれた。
 この事件はこれで一件落着となる。
 この事件が僕の高校生活2年目――『はじまりの事件』になる。
 僕の高校生活の中で一番騒がしい一年間になったのは間違いない。
 ま、順を追って話していくとします。
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