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その後のことなど全く考えていなかった。交わった熱が少しずつ引いていくにつれて、何とも言えない気恥ずかしさが2人の間に広がった。
とりあえず汚してしまった床の処理などをして誤魔化す。僕がやります、と森本が申し出たが、倉田は断り、森本に身支度をするように伝えた。森本は倉田の言葉に従って、服を着始めた。
素早く下着だけ身に着けて、タオルで床を拭きながら考える。ここから一体どうしたらいいのだろう。ずっと手に入れたかった森本を手に入れることはできた。もちろん自分は体だけではなくて、森本そのものが欲しかった。けれど、森本が望んだ関係が、倉田と同じ意味の関係かどうかははっきりとしなかった。ただ、倉田と関係を持ちたい。そう言われただけだった。
それが、今回限りなのか、先もあるのか。それも分からなかった。欲が勝ち、そこのところを二の次にして進んだのは倉田なのだから、こんな気まずい状況になったのも自業自得なのだが。
森本に今回のことを、今後のことをどう切り出せばいいのか。自分は、何もかも捨てていくつもりだった。まさか、森本と合意の上で事が運ぶとは思ってもいなかったため、こんな中途半端な結末の先は頭になかった。でも、普通に考えれば。やっぱり、これは一度限りのことであって、森本と先の関係、ましてや恋愛関係に発展するとは考えにくいのではないか。
ならば、やはり。ここは普通にあっさりと別れればいい。もう十分だった。高校からずっと望んできて、体だけでも一度は手にできたのだから。森本に対する恋愛感情があるのに気付いたのには正直驚いたが、今更感があるし、そこはもう望むことは贅沢なのかもしれない。
うだうだと頭の中で思いを巡らしていると、後ろから森本に声をかけられた。
「倉田先生、後は僕がやりますから。先生も服着て下さい。風邪ひきますよ」
「ああ、はい」
森本が手際よくベッドを整えて、床も念入りに拭き、タオルを保健室から失敬したビニール袋へと入れた。その姿を視界に捕らえながら、服を着終えた。森本がビニール袋を少し持ち上げて、倉田を見た。
「これ、どうします?」
「あ、それ、捨てますから」
「でも……まだ綺麗なタオルですし。洗いましょうか?」
「え? いや、そんなの、いいですよ」
「だって、僕ので汚れたわけだし……。やっぱり洗います」
「……ほんとにいいんですか?」
「はい……でも……その代わりと言ってはなんなんですが……」
そう言って、森本が倉田へ笑顔を向けた。
「タオル、うちに取りに来てくれませんか?」
「……え?」
「できたら、明日。休みですし」
「…………」
「それで、一緒に過ごしませんか?」
「いや、でも……」
「できれば、これから毎週末」
「…………」
森本のその言葉の意味がすぐに飲み込めなかった。その意味を考えて、ゆっくりと自分の頭の中で消化されていき、はっきりとした自分なりの見解が出たところで、驚いて狼狽する。
「え? え? それ、どういう意味で……」
真っ赤になりながらオロオロと答える倉田を森本はぱちくりした目で見ていた。そして、ふふっと、楽しそうに笑って、倉田を真っ直ぐ見た。
「そういう意味です」
「……ほんとに?」
「はい」
「……マジですか……」
「マジですよ」
「はあ……」
そうは言われても。あまりに急なことで倉田が戸惑っていると、森本が再び口を開いた。
「まあ、先に関係持ってしまいましたし、微妙な始まりですけど。ゆっくりと慣れていったらいいんじゃないですか? お互いのことまだよく知らないし」
とりあえずは。そう言って、森本が倉田に近づいてきた。軽く触れるだけのキスを頬にされる。目の前でニコリと笑った。
「プライベートでは敬語、止めましょうか」
その笑顔が、高校生の森本のあのまぶしい笑顔と重なった。ずっと欲しかった、あの太陽のような森本が目の前にいる。
腕を伸ばして森本を抱き寄せた。腕の中に森本を閉じ込めてぐっと抱き締める。逃げていかないように。きつく。
「倉田先生?」
不思議そうに森本が声を上げた。倉田は強く抱き締めたまま、小さく呟いた。
「やっと、俺のもんになった」
短い沈黙の後、森本が腕の中で小さく笑う気配がした。
とりあえず汚してしまった床の処理などをして誤魔化す。僕がやります、と森本が申し出たが、倉田は断り、森本に身支度をするように伝えた。森本は倉田の言葉に従って、服を着始めた。
素早く下着だけ身に着けて、タオルで床を拭きながら考える。ここから一体どうしたらいいのだろう。ずっと手に入れたかった森本を手に入れることはできた。もちろん自分は体だけではなくて、森本そのものが欲しかった。けれど、森本が望んだ関係が、倉田と同じ意味の関係かどうかははっきりとしなかった。ただ、倉田と関係を持ちたい。そう言われただけだった。
それが、今回限りなのか、先もあるのか。それも分からなかった。欲が勝ち、そこのところを二の次にして進んだのは倉田なのだから、こんな気まずい状況になったのも自業自得なのだが。
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ならば、やはり。ここは普通にあっさりと別れればいい。もう十分だった。高校からずっと望んできて、体だけでも一度は手にできたのだから。森本に対する恋愛感情があるのに気付いたのには正直驚いたが、今更感があるし、そこはもう望むことは贅沢なのかもしれない。
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「ああ、はい」
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「でも……まだ綺麗なタオルですし。洗いましょうか?」
「え? いや、そんなの、いいですよ」
「だって、僕ので汚れたわけだし……。やっぱり洗います」
「……ほんとにいいんですか?」
「はい……でも……その代わりと言ってはなんなんですが……」
そう言って、森本が倉田へ笑顔を向けた。
「タオル、うちに取りに来てくれませんか?」
「……え?」
「できたら、明日。休みですし」
「…………」
「それで、一緒に過ごしませんか?」
「いや、でも……」
「できれば、これから毎週末」
「…………」
森本のその言葉の意味がすぐに飲み込めなかった。その意味を考えて、ゆっくりと自分の頭の中で消化されていき、はっきりとした自分なりの見解が出たところで、驚いて狼狽する。
「え? え? それ、どういう意味で……」
真っ赤になりながらオロオロと答える倉田を森本はぱちくりした目で見ていた。そして、ふふっと、楽しそうに笑って、倉田を真っ直ぐ見た。
「そういう意味です」
「……ほんとに?」
「はい」
「……マジですか……」
「マジですよ」
「はあ……」
そうは言われても。あまりに急なことで倉田が戸惑っていると、森本が再び口を開いた。
「まあ、先に関係持ってしまいましたし、微妙な始まりですけど。ゆっくりと慣れていったらいいんじゃないですか? お互いのことまだよく知らないし」
とりあえずは。そう言って、森本が倉田に近づいてきた。軽く触れるだけのキスを頬にされる。目の前でニコリと笑った。
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腕を伸ばして森本を抱き寄せた。腕の中に森本を閉じ込めてぐっと抱き締める。逃げていかないように。きつく。
「倉田先生?」
不思議そうに森本が声を上げた。倉田は強く抱き締めたまま、小さく呟いた。
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短い沈黙の後、森本が腕の中で小さく笑う気配がした。
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