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帰りのタクシーでは2人ともほとんど口を効かなかった。哲也はこの先のことを色々と考えてしまって口が重くなり、陸は自由になった安堵のせいか乗ってすぐに眠ってしまったからだった。
タクシーがマンションのエントランスに着いた時。起こすのが可哀想と思ったのが、ここでも自分が軽々しく陸を抱いて部屋に戻るのも気が引けて、結局陸を揺り起こした。陸は半分寝ぼけたままでタクシーを降り、大人しく哲也に付いてきた。
「入って」
玄関を解錠して陸を先に中に入れる。哲也が玄関の扉を閉めて施錠した途端、後ろから陸が抱き付いてきた。
「……どうしたの?」
「……だって……こうしたかったから」
玄関先でしばらくそのままの状態で立っていたが、哲也は体に回った陸の腕をそっと掴んで離した。反転して、陸と向かい合う。
「哲也さん……?」
陸が怪訝な顔でこちらを見上げていた。
「哲也さん……なんかあった?」
「え?」
「今日、再会できてから……ちょっと変だから……」
「変って?」
「なんか……よそよそしいっていうか……」
「よそよそしいつもりじゃないけど。やっぱり、別れたんだし。こういうことは、止めといた方がいいだろ?」
「……え?」
陸が分かりやすく驚いた表情でこちらを見つめた。
「別れた……?」
「……だって……お前が出ていったじゃん。あの日」
「……出ていった?」
「え……そうだろ?あの事故に遭った日。お前、俺と別れるために勝手に家出てったんだろ?」
数秒間の沈黙が2人の間に流れた。陸は目を少し見開いて、驚いた顔のまま固まっていた。たぶん、自分は大人気なく拗ねたような顔をして陸を見ているに違いない。ふと、陸の表情が柔らかくなった。
「哲也さん……」
「……なに」
「哲也さんの馬鹿」
「……は?」
「哲也さんのアホ」
「いや……」
「哲也さんのとんちんかん」
「……陸?」
「……そんなわけないじゃん」
「……え?」
陸が半分泣きそうな笑顔で哲也を見つめる。
「俺が、哲也さんから離れるわけないじゃん」
「…………」
「あの日、俺、確かに家を出たけど。ただ、スーパーに買い物行っただけ」
「え??」
「バックパックを持っていったのはついでにバイトいくつもりだったから」
「……まじかよ」
その全く予想見していなかった新事実に、一体この2ヶ月の間あんなに落ちていたのはなんだったのかた呆然とする。
「……哲也さんが俺から離れることはあっても、俺からは絶対ないから」
「…………」
「だって……哲也さんは、俺以上に大事な人だから。俺なんて価値のない人間だけど。哲也さんがこんな俺を必要としてくれる内は……んっ……」
ほんとにこいつは。
自分を卑下するような台詞を吐く陸の唇を塞いでやった。そのまま啄むように何度か唇を優しく重ねる。するっと舌を陸の口内へと滑らせると、陸の舌が強く絡んできた。そこで、約2ヶ月の間鬱々としていた気持ちの後押しもあり、哲也の理性は簡単にぶっ飛んだ。
タクシーがマンションのエントランスに着いた時。起こすのが可哀想と思ったのが、ここでも自分が軽々しく陸を抱いて部屋に戻るのも気が引けて、結局陸を揺り起こした。陸は半分寝ぼけたままでタクシーを降り、大人しく哲也に付いてきた。
「入って」
玄関を解錠して陸を先に中に入れる。哲也が玄関の扉を閉めて施錠した途端、後ろから陸が抱き付いてきた。
「……どうしたの?」
「……だって……こうしたかったから」
玄関先でしばらくそのままの状態で立っていたが、哲也は体に回った陸の腕をそっと掴んで離した。反転して、陸と向かい合う。
「哲也さん……?」
陸が怪訝な顔でこちらを見上げていた。
「哲也さん……なんかあった?」
「え?」
「今日、再会できてから……ちょっと変だから……」
「変って?」
「なんか……よそよそしいっていうか……」
「よそよそしいつもりじゃないけど。やっぱり、別れたんだし。こういうことは、止めといた方がいいだろ?」
「……え?」
陸が分かりやすく驚いた表情でこちらを見つめた。
「別れた……?」
「……だって……お前が出ていったじゃん。あの日」
「……出ていった?」
「え……そうだろ?あの事故に遭った日。お前、俺と別れるために勝手に家出てったんだろ?」
数秒間の沈黙が2人の間に流れた。陸は目を少し見開いて、驚いた顔のまま固まっていた。たぶん、自分は大人気なく拗ねたような顔をして陸を見ているに違いない。ふと、陸の表情が柔らかくなった。
「哲也さん……」
「……なに」
「哲也さんの馬鹿」
「……は?」
「哲也さんのアホ」
「いや……」
「哲也さんのとんちんかん」
「……陸?」
「……そんなわけないじゃん」
「……え?」
陸が半分泣きそうな笑顔で哲也を見つめる。
「俺が、哲也さんから離れるわけないじゃん」
「…………」
「あの日、俺、確かに家を出たけど。ただ、スーパーに買い物行っただけ」
「え??」
「バックパックを持っていったのはついでにバイトいくつもりだったから」
「……まじかよ」
その全く予想見していなかった新事実に、一体この2ヶ月の間あんなに落ちていたのはなんだったのかた呆然とする。
「……哲也さんが俺から離れることはあっても、俺からは絶対ないから」
「…………」
「だって……哲也さんは、俺以上に大事な人だから。俺なんて価値のない人間だけど。哲也さんがこんな俺を必要としてくれる内は……んっ……」
ほんとにこいつは。
自分を卑下するような台詞を吐く陸の唇を塞いでやった。そのまま啄むように何度か唇を優しく重ねる。するっと舌を陸の口内へと滑らせると、陸の舌が強く絡んできた。そこで、約2ヶ月の間鬱々としていた気持ちの後押しもあり、哲也の理性は簡単にぶっ飛んだ。
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