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第一章

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「メイドです」
 澄ました顔でシルクは言った。城で二番目に強いのが、メイドって、どういう事よ。
「元暗殺者とか?」
「生れながらにメイドです」
「……はは」
 確かに普通の女の子だ。人によって、何かしらの空気というか、圧が違ったりする。優しそうな人でも、空気がすごかったり、怖い人でも、たいした事ない空気だったり。シルクは本当に普通。でも、それが怖いけど。
「もう降参ですか?」
 少しバカにしたような表情で、シルクがそう言った。私は少しムッとして、その言葉に「まだだよ」と返す。
「そうですか」
 その言葉と共に、シルクが少し、深めに息をすると、それと同時に、多数の何かが飛んでくる。私はそれを避けながら、考える。何かを飛ばしているのは、間違いなさそう。目が慣れてきて、何かが飛んできているのは、見えてきていた。あとは、勇気を出して、飛び込むだけ。
「もう、素直に、降参と言ってはどうですか?」
 シルクが煽るように、そう言ってくる。シルクのその言葉で、飛んでくる物の間隔に、間が空いたのを見逃さなかった。しゃべった事で隙ができたのか。私は、すぐさま、シルクに向かって、駆ける。
 当然、ズバリ、当たる位置に、何かが飛んでくる。ほとんど見えないけど、感覚だけで、私は避けながら、シルクとの距離を詰める。シルクは少し、焦った表情を見せつつ、それでも、動かなかった。
「もらったっ」
 私は、シルクに攻撃が届く範囲まで近づくと、木天蓼を抜こうとする。柄をシルクに当てるつもりだ。さすがに刃で斬ったら、大ケガだ。
「ふっ」
 シルクが一瞬、微笑んだ気がした。その瞬間、右側面から違和感を感じる。私はほとんど無意識に、横から飛んできた何かを斬り落とした。
「あっ」
 シルクのその声に続いて、私が「勝負あり」と言いながら、刀を鞘に納めつつ、シルクの頭にチョップを入れる。
「痛っ」
 私にチョップされた頭を、両手で押さえながら、シルクが少し涙目になり「参りました」と呟く。よほど自信があったのか、悔しがっている。
「さぁ、種明かしをしてもらおうか」
 私はシルクの頬を両側から摘まんで、少し意地悪くそう言った。
「い……あい」
 上手く喋れない様子でシルクが何かを言っている。私が手を離してやると、恨めしそうにこちらを見ながら、シルクが自分の頬を擦った。
「ただの簡単な魔法です」
「……ただのと言われても、私は魔法を知らない世界から来たので」
 どういう魔法なのか。なんとなく、何かを飛ばしているのだろう、とは思うけど。
「魔法矢という、基礎中の基礎魔法です……簡単に言うと魔力というエネルギーを、弓矢のように飛ばす、という感じです」
「そういう魔法……見えないから、空気を飛ばしてるかと」
「それは、殺傷能力を無くすために、小さい魔法矢にしてるので」
「見えないくらい、小さいって事か」
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