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第二章
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私は中学生の頃、剣道部だった。当然の帰着、既定路線、まぁ、つまり、当たり前のように、剣道部に入った。家が道場だったのは大きい、学校は私に過大な期待を寄せていて、だったら、私自身も剣道で良いか、昔からやってるし。そんな入部のしかた。
やる事は変わらない。毎日、竹刀を振って、相手を倒すだけ。違うのは、家の道場ではないのと、同年代の子たちに囲まれて、剣道をする事。ウチの道場では、比較的、オジサンが多くて、強い人も多かった。だからって訳なのか、わからないけど、部活の練習はとても、物足りない。みんな、それほど強くないし。でも……なんだか、楽しかった。
私が一年生から、二年生に上がって、三年生は卒業。部長も、新しい人に変わった。私が部内で一番強かったから、一度、部長にって話になって、断った。そういう事じゃない、と思ったし、そもそも、統率力みたいなのが私にはない。その点、新しい部長になった人は、違った。
努力家で、優しくて、みんなをまとめられるリーダー。その人は、男子の中で身長も高くて、顔も整ってる。高校生に間違われそうな感じ。子供ばっかりの男子の中で、ひと際、大人びてた。好き……かも。
ある日、部活が終わって、帰り道、忘れ物をして、学校の剣道場に戻った。部長が一人で、黙々と素振りをしている所を見る。たれる汗が光って見えて、その真剣な瞳に夢中になった。
「あぁ、リコ、帰ってなかったんだ、恥ずかしいとこ、見られたな」
「あっ、すみません、盗み見みたいなマネ」
二人っきり。ドキドキする。私は舞い上がる。何かできる事はないかって。その人のために。
「あのっ、部長……素振りの時、力を抜いたほうが」
「ッ! ……いいよ、そういうの」
「でも、そうした方が……」
「やめろよ!」
部長の声が響いて、そのあと、シンとする。私はまだ子供だった。いいよと言ったそこに、苛立ちが隠れていた事に、気づかなかった。アドバイスなんて、やめておけばよかったんだ。
「部長?」
子供の私は気づかない。彼の怒りに、ただ、意味がわからず、震えるだけ。
「部長なんて……ッ! 名ばかりじゃないか! みんな言ってる! お前の方が強いんだから、リコの方がふさわしいんじゃないかって!」
「そっ、そんな……」
「うるさい! 子供の頃から毎日、稽古してきたのに! お前の足元にも及ばない、どれだけやっても届かない! なのにお情けで、おこぼれで、部長になった! お前のせいで! 毎日毎日惨めな思いになるッ……剣道が……嫌いになりそうだ」
嗚咽の混じる言葉、最後の方は悲しみに満ちて、聞き取れないほど、声が小さくなった部長の言葉。
「すみませんでした」
私はそれだけ言って、その場を離れた。私は悪くない。それでも、なんて言ったらいいか、わからなかった。そう言うしかなかった。涙が止まらなかった。訳が分からなくて。それでも、一つわかったのは、彼とはもう今後、溝は埋まらないという事。好きだった。終わったんだ。
私は部活をやめた。居られるはずもなく、逃げ出した。
やる事は変わらない。毎日、竹刀を振って、相手を倒すだけ。違うのは、家の道場ではないのと、同年代の子たちに囲まれて、剣道をする事。ウチの道場では、比較的、オジサンが多くて、強い人も多かった。だからって訳なのか、わからないけど、部活の練習はとても、物足りない。みんな、それほど強くないし。でも……なんだか、楽しかった。
私が一年生から、二年生に上がって、三年生は卒業。部長も、新しい人に変わった。私が部内で一番強かったから、一度、部長にって話になって、断った。そういう事じゃない、と思ったし、そもそも、統率力みたいなのが私にはない。その点、新しい部長になった人は、違った。
努力家で、優しくて、みんなをまとめられるリーダー。その人は、男子の中で身長も高くて、顔も整ってる。高校生に間違われそうな感じ。子供ばっかりの男子の中で、ひと際、大人びてた。好き……かも。
ある日、部活が終わって、帰り道、忘れ物をして、学校の剣道場に戻った。部長が一人で、黙々と素振りをしている所を見る。たれる汗が光って見えて、その真剣な瞳に夢中になった。
「あぁ、リコ、帰ってなかったんだ、恥ずかしいとこ、見られたな」
「あっ、すみません、盗み見みたいなマネ」
二人っきり。ドキドキする。私は舞い上がる。何かできる事はないかって。その人のために。
「あのっ、部長……素振りの時、力を抜いたほうが」
「ッ! ……いいよ、そういうの」
「でも、そうした方が……」
「やめろよ!」
部長の声が響いて、そのあと、シンとする。私はまだ子供だった。いいよと言ったそこに、苛立ちが隠れていた事に、気づかなかった。アドバイスなんて、やめておけばよかったんだ。
「部長?」
子供の私は気づかない。彼の怒りに、ただ、意味がわからず、震えるだけ。
「部長なんて……ッ! 名ばかりじゃないか! みんな言ってる! お前の方が強いんだから、リコの方がふさわしいんじゃないかって!」
「そっ、そんな……」
「うるさい! 子供の頃から毎日、稽古してきたのに! お前の足元にも及ばない、どれだけやっても届かない! なのにお情けで、おこぼれで、部長になった! お前のせいで! 毎日毎日惨めな思いになるッ……剣道が……嫌いになりそうだ」
嗚咽の混じる言葉、最後の方は悲しみに満ちて、聞き取れないほど、声が小さくなった部長の言葉。
「すみませんでした」
私はそれだけ言って、その場を離れた。私は悪くない。それでも、なんて言ったらいいか、わからなかった。そう言うしかなかった。涙が止まらなかった。訳が分からなくて。それでも、一つわかったのは、彼とはもう今後、溝は埋まらないという事。好きだった。終わったんだ。
私は部活をやめた。居られるはずもなく、逃げ出した。
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