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第三章

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 ボスが一体だけ、ここにいるというのは、さすがにこじ付けか。
「どうしよう」
 私は、シルクの言葉を、思い出す。いなかった場合、すぐに戻るよう言われてた。ただ、隠れている可能性もある訳だし、ちょっと、探してみよう。
 私は廃村をウロウロしながら、何個か、家の中を覗いていく。
「何にもない……そろそろ戻るか」
 私はそう思いながら、目についた家の、扉を開けた。
「な?! え?! なんで」
 そこには、小さな女の子が、倒れていた。十歳ぐらいの、金髪の女の子。頭と手を通す穴を開けた袋を、かぶった様な服を着ている。
「なんで、こんなところに」
 私は、女の子を触ってみる。暖かい。ちゃんと息をしている。死んでなかった。
「大丈夫?」
 声をかけながら、揺らしてみるけど、起きる気配はない。寝ているというより、気絶している、といった感じだ。どうしよう、放置しておくわけにもいかず、私はその子を抱えて、馬車に戻る事にした。



「なっ、なんですかな、この状況」
 私が子供を抱えて、馬車まで戻ってきた事に、ドレグは、訳が分からないという表情で、そう問いかけてくる。
「影の魔物は、倒したのですかな」
 ドレグの言葉に私は言い淀む。でも、嘘をついたところで、影の魔物はすぐ出てきて、バレるし、素直に伝えるしかない。
「……いなかった、影の魔物さえ、一体も」
 明らかに落胆する表情。空気がとても重たくなる。ただ、今は、この女の子の事を、どうにかしたい。
「その子を馬車へ」
 シルクがそう言って、二人で女の子を、馬車へと乗せる。
「状況は、あとで聞かせて、いただけますな?」
「うん、ちょっと、今は、とりあえず女の子を」
 私の言葉を聞き終えると、ニールとドレグはそのまま、見張りを続ける。エネリーが、シルクと一緒に、女の子を見ていた。
「寝てるわけじゃ、ないよね?」
「はい、気を失っている、みたいです」
 エネリーがそう言うと、言葉を引き継いで、シルクが続ける。
「外傷はありません」
「……よかった」
 私はとりあえず、安心する。さすがに、人が倒れているなんて驚いた。しかも子供だ。ケガは無いみたいだから、何かあって倒れたんだろうけど。
「とりあえず、この子は、寝かせておくしか、ありません……浮浪児が、廃村を寝床にしていて、何かあった、という感じですかね」
 エネリーが、呟くように言うと、少し間をあけて、聞きにくそうに続ける。
「それで……影の魔物のボスは」
 再度、確認という事だろう。どうしても信じられない、だから、確認をしてしまう。どうにもならない事実に、私は少し胸が痛む。私は、見た物をすべて、話すしかないのだ。
「二人も呼ぼう」
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