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1話 断罪される未来
王宮が主催するパーティーに参加した私──クラーラの目の前には精悍な顔つきの男性がいた。
眉間には深い皺が寄っていて、私が見上げているのに視線は合わせようとしない。
ふっ、と短く息を漏らすと重々しく口を開いた。
「謀反を企てているようだな、クラーラ」
謀反……? 私が……?
国のために尽くしてきた私がどうして。こんな真似するわけない。
男の言葉を合図に、衛兵たちがぞろぞろと詰め寄ってくる。乱暴に腕を掴んでくると、引っ張るようにして進んでいく。
全体重をかけて抵抗しているのに、普段から鍛えている衛兵たちの力には叶わなかった。
引き摺られながら、会場の中央部分にある階段の上からこちらを覗く顔をみてハッと気がつく。
……まんまとしてやられたと。
マリアは下卑た笑みを浮かべながら手をひらひらとさせている。隣には婚約者の母親、マルガレーテ王妃陛下の姿もあった。
マルガレーテ王妃陛下の顔色は悪く、よろめく身体をマリアが支えている。
じっとマリアを見ていると、ずるずると進む私の耳に聞き慣れた素敵な声が聞こえてきた。
「どうして君が……よりによって……なんで、君なんだ……」
すれ違うときに、周りの人に聞こえないくらい小さな声で男が呟く。震える声はとてもか弱く、悲しげな声音だ。
この男はアストロギウス王国の次期国王であり私の婚約者、ルーカス王太子殿下。
真っ赤に燃える夕陽色の瞳が一瞬だけこちらを向いた。まっすぐ見据えられると、胸の奥まで貫かれたような痛みが走る。
愛おしい人。
たくさんの人の前でわざわざ断罪をするくらいだから極刑は免れないだろう。
「君の部屋からたくさん証拠も見つかったんだ、証人まで出てきて俺の力を持ってしても覆しようがなかった」
この会話が最後になるかもしれない。
話したいことはたくさんある。でも、慎重に言葉を選ばなければルーカス殿下の人生に大きな影響を及ぼすかもしれない。
そう思うと何を言えばいいのか分からなくなっていく。
「……っ、ルーカス殿下」
ようやく絞り出した声は掠れていた。我慢している涙が溢れ出てきそうで、これ以上何も言えなかった。
会場の外へ出て、離れた場所にある地下牢へと近づいていく。
マリアが大人しくなったのは今日のためだったとどうしてもっと早くに気づけなかったのだろう……。後悔と悔しさと憎しみとで感情はぐちゃぐちゃだった。
大粒の涙がぽろぽろと落ちる。きつく唇を噛み締めていたら、どんどん意識が重くなっていく。目を開けていられないくらい。
あれ……? これって……?
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