未来予知できる王太子妃は断罪返しを開始します

もるだ

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3話 マリアと遭遇



 ルーカス殿下と幼い頃から兄妹のように仲がよかったようで、マリアは婚約者の私のことを「クラーラ姉さま」と呼ぶ。

 マリアは人懐っこい笑顔を浮かべながら近寄ってくる。他人の目が無いところでは、驚くような暴言を吐く人だとは思えないくらい可愛らしい姿をしていた。

 艶々と光を反射する綺麗な栗色の頭髪は、形の良い頭をふんわりと覆っている。小動物を思わせる大きくてつぶらな瞳に見つめられると、頼み事を断れないと王宮の中で噂になるほどだった。

 今、腹の中ではほくそ笑んでいることだろう。無視したい気持ちをぐっと堪えて王太子妃としての振る舞いを意識する。

 にっこりと微笑むとマリアに呼びかけに答えた。

「マリア、久しぶりね。元気にしていたかしら?」

「……はい、クラーラ姉さま。お会いしたいと思っていたところですわ」

 パーティー前に視察をしにきた、という感じだろうか。明るくて楽しげな声を出しているけど、よく見ると目の奥に光がない。

「……どうして?」

「お元気なのか気になっていたんですの」

 私が元気な方が断罪のしがいでもあるのか? マリアがこんなことを言うなんて珍しかった。

「見ての通り、とても元気よ」

「それなら良かったですわ」

「では、お先に──」

 私が言いおわる前に、マリアが被せて尋ねてくる。早くマリアを視界から外したいのに……。

「ところで、ルーカス殿下にはどういったご用件でしたの?」

「あぁ、そんな大した用件ではないの」

「でしょうね、そんな感じがいたしましたわ。あまりルーカス殿下の手を煩わせないようにお願い申し上げますね」

「……ええ、もちろん分かってるわ」

 ふん、と鼻で笑ったあと挑発的にこちらを睨み付けてくる。マリアは婚約が決まってから、私に対しては好戦的な態度だった。

 仲の良い兄同然の殿下が奪われたようで嫉妬してしまうのかと、はじめは我慢していた。

 だけどマリアは王太子妃になるつもりで幼い頃から計画的にルーカス殿下に近づいたんだと明かしてくれた。

 周りに私たち以外に人がいないことを確認するとマリアの口調が変わる。正していた姿勢を崩して、人を品評するかのようにジロジロと舐めまわすような目で見てくる。

「クラーラ姉さまはお忙しい方でしょうし、早くお戻りになられたらいかがです?」

「そうね、お先に失礼するわ」

 軽く会釈をする私を無視してマリアはルーカス殿下のいる執務室へと進んでいった。

 後ろから聞こえるマリアの甘ったるい声が鼓膜にへばりつくようだった。

 
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