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出し物会議

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まずはクラスの出し物を決める話し合いが始まる。



喫茶店!お化け屋敷!コスプレ撮影館!腕相撲試合!



あちこちから好き勝手の意見が飛び交い、教室が一気に騒がしくなった。
んー、俺は目立たなくて何事もなく終われるのだったら何でも良いな~。そういえば、去年はお化け屋敷のお化け役をしたっけ…。

『咲良なら無言で暗闇にいるだけでビビるから安心しろ!』と失礼以外の何物でもない励ましの言葉を受けて渋々その役割を担ったのだが、本当にそこに座っているだけでよかったから、結果、凄く楽だったのを覚えている。

今年もお化け屋敷だと楽だな~と思いつつも、左京くんを見る。
去年の彼は喫茶店のウエイターをしていた。本格的なブルゾン姿が様になっていて、あの姿を見た瞬間…僕はもう死んでも悔いはないと思ったほどだ。誇張とかじゃなくて本当に!

まぁ勿論、至近距離で見つめたらキラキラオーラで確実に失明してしまうので喫茶店には入れなかったんだけどね…ははは。

でも今年は同じクラスだから…頑張ってたくさん見ておこう…!!うん!



「あらら~、意見が全然纏まらないわねぇ~」

「はいっ!!!アヤちゃん!!はいはいっっ!!」

悠太が元気よく挙手をして身を乗り出した。

「文化祭当日って近くの女子校のコもたくさんくるんすよね?だから女の子ウケがいいやつが良いと思いまーす!!!」

悠太の発言を聞いて少しの間シーンとした後、教室中がうおおおお!!!!という雄叫びで揺れた。
おおおおおおおおおおよくいった佐木!そうだそうだ!女の子にキャーキャー言われるやつにしよう!黄色い声援を浴びよう!!!!

先程まで割れていた意見が面白いくらい一気に纏まってしまった。


「女の子ウケ…って例えば?」

アヤちゃんが首を傾げる。

その後、やれ筋肉がだのやれインテリがだの大盛り上がりを見せた後、結局無難にカフェに決定した。
…ということは今年も左京くんのブルゾン姿が拝めるってことだよね…!?!?!?わああ神様ありがとうございます!!!今年こそは目が乾燥して干からびるまで目に焼き付けますーー!!!

あ、勿論僕は裏方で!


「アヤちゃんセンセー、提案なんですけどー」

そのとき僕の左隣、つまり左京くんの後ろの席の生徒が手を上げる。
彼は確か去年左京くんの隣にいつもいた人だ。僕と同じ位の身長で、少しつり上がったクリクリの猫目が特徴の強気美人さん。
名前は確か…


「宇佐くん、なにかしら?」

そうそう、宇佐柚月くん。

「全員ウエイターなんてむさ苦しいし面白みに欠けるから、くじをしてクラスの半分はウエイトレスになるとかどうですか~?ついでにいくつかオプションを用意して、僕たちは、お客さんから指名制で別料金をもらったらどんどんカスタマイズされちゃうとか~面白そうだと思うんですけど」



ち ょ っ と ま っ て 

くじって!!くじって僕も当たる可能性あるってことだよね!!!???ムリムリムリムリ女装したら体中が痙攣して心臓発作起こすから!!!!!左京くんも居るのに絶対ムリーーーー!!!


「いいんじゃない?面白そうだし話題性もあると思うよ」

まさかの左京くんが賛成したのを皮切りに周りのクラスメイトも気に入ったのかほぼほぼ満場一致で可決されてしまった。う、嘘でしょ…。


「じゃあケッテ~イ!名前はー、『ドキッ!執事もメイドも皆DK☆貴方好みにカスタマイズ!精一杯ご奉仕します(ハート)』でいいですか?」

いやいや、宇佐くん。なんでそんなAVみたいなタイトル付けるの…?クラスの皆もノリノリでいいね~とか言ってるんじゃないよ!来るの!?このタトルで君らが求めてる女の子来るの!?!?
しかもしれっと執事メイド喫茶にされたね!?!?


「ん~…まあ、年頃の男の子って感じで面白いし、皆も賛成のようだからそれでいいんじゃないかしら」

アヤちゃんもなんかノリノリになってきてない??



「じゃ~今からくじ作るから皆引きに来て~!あ、ちなみにボクは立候補でメイドやりまーす!」

そういえば、宇佐くんはゲイって周りにおおっぴらに公言してるんだっけ。良く女装もするって噂に聞いたことあるけど、あれだけ美人なら様になるんだろうなぁ。


皆が順番に教卓に置かれたくじを引いていく。クラス人数分用意されたの紙の半数だけが赤いペンで先が塗られていて、いわゆる『アタリくじ』だ。つまり赤を引いたら女装決定。
くじを引き終わった生徒から次々歓喜と悲鳴が響き渡る。この光景、朝のデジャヴだな…。

「俺達の番だな、行こうぜ紗地~」
「あ、うん…」


心臓がバックンバックン暴れている。どうしてこんなことになっちゃったんだろう!?
大丈夫大丈夫ダイジョウブ!当たらない当たらない!!!


「おっしゃー!俺ハズレー!!!よかったーーーーー!!!!」

先に引いた悠太が嬉しさのあまり小躍りする。くっ、僕だって小躍りしてやるんだからな!!みてろよ!


ギュッと目を閉じて、冷や汗でしっとりした手で紙を一枚掴むと、ひとおもいに引き抜いた。
バクバクと心臓がうるさいし、怖くて目が開けられないでいると、

「おー!!!!紗地おめでとう!」

隣から悠太の祝福の声。…ってことは!!!僕当たらなかった…!!!???

バッと目を開いて手のひらに握られた紙を見た。




その紙は、先端に赤いハートマークが描かれていた。



「当たりくじじゃねーか!ははは!紗地ちっこいから案外メイド似合うんじゃねーの?」


カミサマああああああああああああああ!!!!!!!!!!
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みんなの感想(1件)

わさび
2021.08.20 わさび

初めまして!
この作品、好きすぎるのですが続きはありますか…😭
あと、君だけを愛してるもめっちゃ好きでした!!機会があったら同棲生活が始まった2人も見てみたいです…
最終更新日が何年も前でビックリしました😭また更新してくださると嬉しいです…

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