英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル

文字の大きさ
11 / 262
第一章

9話 戦いの後で

しおりを挟む
 母の予想に反し、二人は死闘を繰り広げた。それは実力を試すなどという建前の元、強者を前にした男同士のプライドをかけた戦いだった。

 一騎打ちの後、父も立っているのがやっとの状態だった。アルガーの肩を借り、なんとか治療室まで歩いていった。

「あなたの殺気をあそこまで感じたのは久しぶりでしたよ。全く、一人で戦争でもやってる気分ですか?」

 アルガーも半分心配半分呆れといった様子だ。


 歳三はもっと重症だった。担架に乗せられてマリエッタたちによって運ばれて行った。本当は私も付いて行きたかったが、そうもいかなかった。

 誰もがすっかり忘れているだろうが、今夜は私の六歳祝いと時期領主決定記念の晩餐会があるのだ。主役無しで行うことはできない。

 だが、結局のところ、現当主である父を抜いての晩餐会など成り立たないに等しい。

 母は父の代わりに手短に挨拶を済ませ、晩餐会を始めた。

 本当であればここで私の社交界デビューという晴れ舞台な訳だが、前座としてあのようなものを見せられて、今更そのようなことを気に止める人などいなかった。

「全く……、これだから男は……」

 母がそう頭を抱えるのも仕方がない。私も、目を輝かせながら先程の戦いについて語り合う貴族たちに混じるのは難しかった。

 仕方が無いので、ある程度食事が済んだら私の挨拶を持って締めることになった。

 一応、その間何人かが私の所へ挨拶に来たが、それは難なく応えることができた。社交辞令などというのはサラリーマン時代に磨いた最大のスキルと言えるだろう。それはこのような形でこの世界にでも役に立った。


 料理よりも戦いについての話を肴に酒ばかり進むようなので、ここら辺で終わりにしようと母が提案した。内心、母も早く父の様子を見に行きたいのだろう。

「えー、皆さま、本日は私の祝賀会と晩餐会に出席いただきありがとうございました。父は今ご挨拶出来ないので、私の挨拶を持って閉会の言葉に代えさせていただきます」

 私が前に立って話し始めると、話し声も次第に小さくなっていった。昼とは違い、目の前にはお偉いさんばかりだと思うとやたらと緊張した。

「先程ご覧頂いた通り、私のスキル『英雄召喚』は異世界の英雄を召喚する能力です。この力を持ってこの領地と帝国を護る為、日々励みたいと思います。皆さま、これからこのレオ=ウィルフリードを宜しくお願い致します」

 そう言い頭を下げると、拍手が返ってきた。とりあえずはこれで良かったみたいだ。安心した。

「それでは少々早い時間ですが、これで晩餐会は閉会とさせて頂きます。皆様、お気を付けてお帰りください」

 母がそう挨拶をすると、マリエッタに案内され、貴族たちはゾロゾロと帰って行った。

 
 片付けはメイドたちに任せて、私と母は、父と歳三の元へ向かった。

「おう、レオ。すまんな、負けちまったぜ」

「父上を相手にあれだけ戦えれば英雄を称するのに十分だよ」

 歳三はボロボロになった服を脱ぎ捨て、上裸の状態だった。中々見事な肉体で思わず見入ってしまうほどだった。

 そう、あれだけの怪我をしていたのに傷ひとつない綺麗な体だった……。

「ルイース、レオ。心配かけたな。少しはしゃぎすぎたようだ」

「本当よ……。あなたが居ないからもう晩餐会も終わりにしたわ」

「そうか、せっかくのレオの晴れ舞台に、すまんな」

 母は父を見るなり抱きついた。父は恥ずかしそうに笑いながら、私に謝罪した。

 しかし、二人とも何ともなかった安心感が上回り、誰も責める気になどなれるわけもなかった。

「いや、しかしあのお嬢さんのおかげで助かったぜ。後でちゃんと礼をしねェとな……」

 マリエッタのことだろうか?彼女が治癒魔法を使えるなんて初耳だ。

「───とにかく、二人が無事でよかったわ。今日はゆっくり休んで、明日ちゃんと皆でお話しましょう」

 不自然に思い母を見たが、そう切り上げて部屋から出ていってしまった。

 妙な違和感を覚えたが、それ以上どうすることも無く私も自室に戻り寝ることにした。今日はいくつもの大舞台を経験し、疲労もかなりのものだった。

 父は何ともないさと腕を回して見せ、脱いだ鎧を担いで部屋へと戻って行った。

 歳三の部屋はまだ決まってないので、とりあえずはこの治療室で寝ることにした。あれだけの怪我をしたのだから、念の為にもその方がいいだろう。




◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 




 私はベットに潜り込み、少し考え事をしていた。

 まず何よりも、領民や貴族たちへの挨拶が済み肩の荷が降りた脱力感に包まれていた。

 それにこの世界での戦闘というのがどういうものか、初めて目の当たりにした。

 ファンタジーな世界とはいえ、現実とのある程度の整合性があり、常識は通じるのだと安心した。

 というのも、魔剣でドカンと大爆発を起こし数百人を吹き飛ばしたりしないということだ。帝国最強の父であの能力(十分人間離れしていると言えるが)なら、基本的な戦争の仕組みは変わらないと言える。

 他にもHPが尽きるまで致命傷も関係ないなどという不自然なことも無い。つまり、いわば死はこの世界にも平等に与えられるということだ。

 私の転生や歳三の召喚など、命のサイクルが疑われる部分もあったが、基本的には常識の枠に収まるというわけだ。


 ──などと、将来領主になった時、戦争になった時の事を少しばかり考えているうちに、いつのまにか私は深い眠りについていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

処理中です...