英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル

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第一章

42話 諸葛亮という男

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「それでは、「諸葛亮」という男についてご説明します!」

「よ! レオ!」

「や、やめろよ歳三……」

  歳三も冷やかしに来て、両親とシズネ、歳三の四人の前でプレゼンすることになった。

  シズネは異世界の英雄という存在に興味津々で、やはり根っからの学者なのだと、彼女の本職を思い出した。



「まずは彼の名前から。姓は諸葛、諱は亮、字は孔明」

「えぇと、それじゃあ孔明さんとお呼びすれば良いのかしら?」

「いえ。余程親しい者以外が字で呼ぶことは失礼になります。呼ぶ時は姓か、姓に役職を付けて呼びます」

「ほう。それで彼の役職というのはなんなのだ」

「はい。彼は古代のとある国で「丞相」という、国の二番目の立場の人間でした」

  蜀の皇帝劉備に仕えた諸葛亮。丞相という役職は君主を補佐する、官吏のトップである。

「彼は天才的な頭脳を持ち、軍師として、そして政治家として国を支えたのです」

「ほう、軍師様というのは興味深いな」

「政治家という一面も気になる所ね」

  よし。まずは掴みはOKだ。

  軍事面では父が、内政面では母が彼の力に助けられるに違いない。それに、故実に通ずる知識人と言う点では、シズネも彼から学べる事は多いはずだ。

  そして私が個人的に期待している、あまり知られていない諸葛亮のある一面。それは発明家としての諸葛亮だ。

  木牛流馬という、兵糧輸送用の荷車から、連弩のような兵器まで。それらはきっとこの世界の戦いを大きく進歩させるに違いないと私は睨んでいる。

「彼の奉じた「天下三分の計」はまさに天下を作り替えてしまった。それ程の力の持ち主なのです」

  父と母も黙って頷く。

「彼の演じた戦いの中で最も有名なのが赤壁の戦いです」

「……そいつは俺も聞いたことがあるような気がするなァ!」

「敵の曹操という男が率いる数十万の兵を、周瑜というもう一つの国の軍師と力を合わせ数万の兵力で破った戦いです」

  魏の曹操が大敗し、一気に勢いを落とした赤壁の戦い。その裏には周瑜や黄蓋といった呉の武将たちの活躍もあった。

  強大化した魏に対抗する為に呉と協力体制を整える。その一方で、追い詰めた曹操を逃がし魏を残すことで呉が魏に代わって強敵となることも防ぐ。

  まさに彼の先見の明と天才的な策略家としての代名詞となる一戦だ。


「───なるほどな! その諸葛亮という男が凄いやつだというのはよく分かった!」

「父上!」

「それに国の二番目の役人ということなら、このウィルフリードだけでは持て余すかもしれないくらいね!」

「母上も!」

  とにかく諸葛亮という人間は今の私に必要不可欠な人材だ。今すぐにでもこれからの全てを相談したいほど、まだ会ったこともないの人物に期待を寄せている。



「……それにしても、『英雄召喚』というスキルは凄いものだな! 異世界での出来事まで知ることができるなんてな!」

「え?」

「ほんとね! その異世界の知識だけでも十分凄いスキルだわ!」

  そうか。両親を含め、この世界の人間は私が転生者である事を知らない。

  そう考えてみると、私が諸葛亮という男について熱弁しているこれもかなり不自然なことだ。歳三だけはニヤニヤ笑ってこちらを見ているが。

  私がこの真実を話したらどうなるだろうか。父と母に気持ち悪いものだと見放されてしまうだろうか。

  いや、この二人に限ってそんな事は絶対にないだろう。

  しかし、カミングアウトするまでの勇気が私には無かった。私が転生者であると知るのは、私自身と、あの光の部屋で出会う英雄たちだけだ。



  私は暫しの躊躇いの後に、この真実を隠すことを決めた。秘密を抱えて生きていくというのは心苦しい。

  しかし、もし話してしまい、この事が広まったらどうなるのだろうか。

  勇者として取りただされるのだろうか。それとも頭のおかしな奴らだというレッテルを貼られるか。

  どうなるにせよ、私が守りたいのは今のこの平和な日常だ。それ以上も以下も望まない。

  これでいいのだ。

「ありがとうございます。それでは早速召喚したいのですがよろしいですか?」

「えぇ、もちろんよ! 私も早く会ってみたいわ!」

「そうだな、場所は裏庭の広場にしよう! 狭い部屋に呼び出して愛想を尽かされても困るからな!」

「分かりました! では行きましょう!」



「おいレオ。今度はどんな部屋に繋がったのか後で聞かせてくれよ!」

「分かったよ歳三」

  裏庭に着くなり歳三がそう言う。これも歳三なりの冗談だろう。緊張している私をほぐそうとしてくれているのだ。

「それじゃあいきます」

「頑張ってねレオ!」

「召喚時は指先に魔力を集中するんだ!」

「レオくんならできるよ!」

  今回は大衆こそいないが、沢山の温かな観客に見守られている。私はそれを横目に思わず笑みを零しながらも、ふっと息を整えた。

  魔石付きブレスレットを顔の前にかざし、その光から魔力の高まりを確認した。それは魔力の流れが目に見えるほどしっかり動いていた。

  そして手を広げ前に突き出し、優しく唱える。

「『英雄召喚』……!」

  唱え終わると魔石の輝きは一層増して、私はいつかのように光に包まれた。
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