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第三章
213話 生還
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私は馬車に飛び乗る。ただでさえ頑丈な客車を竜型ルーデルの翼が覆い、強固な防御であった。
そして往路ではあくまでもその武威を示すための平穏な行列だったが、復路では近衛騎士は全て抜剣し、魔銃部隊も全て銃を構え本当の意味での竜騎兵となっている。
『出せ!』
全体指揮を執るナポレオンの号令で隊列が動き出す。
少しでも早く遠くへとのことから駆け出す馬により、馬車は激しく揺れた。
『レオ様、大変申し訳ございませんでした。我々の調査不足により御身を危険に晒すなどという不手際を……』
「気にするな。危険を承知であそこへ足を踏み入れたのだ。……それにしても孔明の策には命を助けられた」
『大砲や爆弾しか知らない奴らにこの拳銃は見抜けなかったな! 流石孔明だぜ』
「ああ。それもタリオたち魔銃部隊を堂々と見せつけることで、武器になるのはこの大きさなのだという先入観を持たせた。まさか手の平サイズのこれが強力な武器だとは考えもしなかっただろう」
このリボルバーには何の戦術的優位性もない彫刻を施しているが、ここではただの装飾品だと誤魔化すことには役立った。
『そう言えばレオ様、発動もさせていないのに突如身体強化魔法がかかったのですが……』
『陛下、私もです』
タリオと団長がそう言う。
「すまないが私は身体強化魔法を使えないので良く分からない。他に使える騎士たちはどうだ?」
『確かに感じました』
『はい』
『そしてそれは私が使える以上に強力な身体強化魔法でした』
他の近衛騎士たちも口々に同意する。
「……どうやら気のせいではないようだな。そう言われると私もあの時妙な感覚に襲われた」
『陛下のお力ですか?』
「いや違う。私にそんな特別な力はない。……あの時は──」
確か真っ先にナポレオンが私を狙う暗殺者に気が付き、「後ろだ!」と叫んだ。その瞬間、脳の処理速度が上がったかのように視界がスローモーションに見え、そんな中でも自分だけ信じられない速さで銃を取り出せた。
「……まさか、これがナポレオンの能力か?」
『……ほう?』
ナポレオンのスキルは今まで分かっていなかった。歳三の『幕末ノ志士』のように、特定の条件下に置かれないと能力が現れずどのようなスキルか発覚しないパターンもある。
『あの場にいた全員に対して最上級の身体強化魔法を掛けたと言うのですか!?』
『た、他者に対して身体強化魔法を使うなど聞いたことがありません……。そもそも魔導具などを媒介にしないと魔力を外側に使えない人間が、自身の内側にのみ魔力を利用するのが身体強化魔法です』
「……なあ、もうひとつ疑問に思っていたことがある。……そもそも、この馬、早過ぎないか?」
早すぎて馬車がとんでもなく揺れ首が痛い。
『動物に身体強化魔法!? ……いや、珍しいですが冒険者の中にはテイマーという職分の者もいると聞きますが……』
「そう考えると全て腑に落ちる。ナポレオンが言い出したことは達成に対して妙な自信が湧いてくる。些細な励ましにより不思議な高揚感が訪れる。そしてこうして命令を出せば人間、動物問わず身体強化魔法がかかる……」
分かりやすくゲーム的な解釈をすれば、味方全体に対する強力な全体バフ能力だ。
『フハハハハハ! それが吾輩のスキルとでも呼ばれるものか! 部隊を率いることで真価を発揮する……。まるで吾輩が将軍に任ぜられ大勝したヴァンデミエールの反乱鎮圧の時ようだ!』
「そうか……! 『葡萄月将軍』だナポレオン! 私がイメージしたお前に対する絶対的なカリスマ性、不可能を可能にする天才的な指揮力! それがお前のスキルの能力だ」
『ほう、『葡萄月将軍』とは懐かしい呼び名だ。だが、心地良い……。──進め! 一秒でも早く帝国に帰還する!』
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
身体強化魔法と言えど最強ではない。所詮はベースが人間であるから限界はある。
しかし食事と睡眠以外で隊列が止まることはなく、僅か四日で皇都まで戻ることができたのだった……。
「……今回の一件、他の貴族にも詳細を明かすのか?」
「ああ。私の動向は貴族どころか国中が注目している。アキードまで赴きこの早さで帰還したことを怪しまないはずもない。隠すのは無理だ」
皇城の会議室では全ての閣僚が集められ、閣議が行われている。
私の横には何故かエルシャも参加しているが特に仕事がある訳ではない。ただ傍にいるだけだ。
「むしろ貴族たちを利用すべきでしょう。王国とアキード、その両方を相手するというのに内輪揉めをしている場合ではありません」
「そそそ、それはつまり戦争になるということかい……?」
「あれだけのことをされて戦争にならない方がおかしい」
「そ、そんな……」
孔明の言葉にヘクセルが怯えだす。そしてナポレオンが追い打ちを掛けたことで遂にヘクセルは頭を抱え机の下に潜ってしまった。
「もはや選択の余地などない。──ここからは戦争の時間だ」
私がそう言い切ったことで場は騒然とした。
「だが、ただの戦争ではない。……血を伴わない、次世代の戦争を奴らに教えこんでやろうじゃないか」
「次世代の、戦争……?」
「ああ。経済戦争だ!」
そして往路ではあくまでもその武威を示すための平穏な行列だったが、復路では近衛騎士は全て抜剣し、魔銃部隊も全て銃を構え本当の意味での竜騎兵となっている。
『出せ!』
全体指揮を執るナポレオンの号令で隊列が動き出す。
少しでも早く遠くへとのことから駆け出す馬により、馬車は激しく揺れた。
『レオ様、大変申し訳ございませんでした。我々の調査不足により御身を危険に晒すなどという不手際を……』
「気にするな。危険を承知であそこへ足を踏み入れたのだ。……それにしても孔明の策には命を助けられた」
『大砲や爆弾しか知らない奴らにこの拳銃は見抜けなかったな! 流石孔明だぜ』
「ああ。それもタリオたち魔銃部隊を堂々と見せつけることで、武器になるのはこの大きさなのだという先入観を持たせた。まさか手の平サイズのこれが強力な武器だとは考えもしなかっただろう」
このリボルバーには何の戦術的優位性もない彫刻を施しているが、ここではただの装飾品だと誤魔化すことには役立った。
『そう言えばレオ様、発動もさせていないのに突如身体強化魔法がかかったのですが……』
『陛下、私もです』
タリオと団長がそう言う。
「すまないが私は身体強化魔法を使えないので良く分からない。他に使える騎士たちはどうだ?」
『確かに感じました』
『はい』
『そしてそれは私が使える以上に強力な身体強化魔法でした』
他の近衛騎士たちも口々に同意する。
「……どうやら気のせいではないようだな。そう言われると私もあの時妙な感覚に襲われた」
『陛下のお力ですか?』
「いや違う。私にそんな特別な力はない。……あの時は──」
確か真っ先にナポレオンが私を狙う暗殺者に気が付き、「後ろだ!」と叫んだ。その瞬間、脳の処理速度が上がったかのように視界がスローモーションに見え、そんな中でも自分だけ信じられない速さで銃を取り出せた。
「……まさか、これがナポレオンの能力か?」
『……ほう?』
ナポレオンのスキルは今まで分かっていなかった。歳三の『幕末ノ志士』のように、特定の条件下に置かれないと能力が現れずどのようなスキルか発覚しないパターンもある。
『あの場にいた全員に対して最上級の身体強化魔法を掛けたと言うのですか!?』
『た、他者に対して身体強化魔法を使うなど聞いたことがありません……。そもそも魔導具などを媒介にしないと魔力を外側に使えない人間が、自身の内側にのみ魔力を利用するのが身体強化魔法です』
「……なあ、もうひとつ疑問に思っていたことがある。……そもそも、この馬、早過ぎないか?」
早すぎて馬車がとんでもなく揺れ首が痛い。
『動物に身体強化魔法!? ……いや、珍しいですが冒険者の中にはテイマーという職分の者もいると聞きますが……』
「そう考えると全て腑に落ちる。ナポレオンが言い出したことは達成に対して妙な自信が湧いてくる。些細な励ましにより不思議な高揚感が訪れる。そしてこうして命令を出せば人間、動物問わず身体強化魔法がかかる……」
分かりやすくゲーム的な解釈をすれば、味方全体に対する強力な全体バフ能力だ。
『フハハハハハ! それが吾輩のスキルとでも呼ばれるものか! 部隊を率いることで真価を発揮する……。まるで吾輩が将軍に任ぜられ大勝したヴァンデミエールの反乱鎮圧の時ようだ!』
「そうか……! 『葡萄月将軍』だナポレオン! 私がイメージしたお前に対する絶対的なカリスマ性、不可能を可能にする天才的な指揮力! それがお前のスキルの能力だ」
『ほう、『葡萄月将軍』とは懐かしい呼び名だ。だが、心地良い……。──進め! 一秒でも早く帝国に帰還する!』
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
身体強化魔法と言えど最強ではない。所詮はベースが人間であるから限界はある。
しかし食事と睡眠以外で隊列が止まることはなく、僅か四日で皇都まで戻ることができたのだった……。
「……今回の一件、他の貴族にも詳細を明かすのか?」
「ああ。私の動向は貴族どころか国中が注目している。アキードまで赴きこの早さで帰還したことを怪しまないはずもない。隠すのは無理だ」
皇城の会議室では全ての閣僚が集められ、閣議が行われている。
私の横には何故かエルシャも参加しているが特に仕事がある訳ではない。ただ傍にいるだけだ。
「むしろ貴族たちを利用すべきでしょう。王国とアキード、その両方を相手するというのに内輪揉めをしている場合ではありません」
「そそそ、それはつまり戦争になるということかい……?」
「あれだけのことをされて戦争にならない方がおかしい」
「そ、そんな……」
孔明の言葉にヘクセルが怯えだす。そしてナポレオンが追い打ちを掛けたことで遂にヘクセルは頭を抱え机の下に潜ってしまった。
「もはや選択の余地などない。──ここからは戦争の時間だ」
私がそう言い切ったことで場は騒然とした。
「だが、ただの戦争ではない。……血を伴わない、次世代の戦争を奴らに教えこんでやろうじゃないか」
「次世代の、戦争……?」
「ああ。経済戦争だ!」
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