父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

文字の大きさ
55 / 204
ガチャ屋開業編

055 ヨーコ、永久就職を希望する

しおりを挟む
 貴族街から出て北門脇に向かうとカルロスの奴隷商店が見えて来た。
店頭にいた店員は、カナタたちが向かって来るのを目にすると、会釈して店の奥に引っ込んでいった。
カナタたち3人が奴隷商店に辿り着いた丁度その時、カルロスが店の奥から出て来るとカナタたちに会釈した。

「カナタ様、お待ちしておりました。
オークションでの噂はこちらにも聞こえて来ておりますぞ」

 カナタはどんな噂が流れているのか気になったが、どうせ変な噂なのだろうと、それ以上訊くのを躊躇った。
その空気を読んだのか、カルロスは何事もなかったかのように話題を変えた。

「今日は、3人の奴隷の引き取りということでよろしいでしょうか?」

 カルロスが店の奥の応接室へとカナタたちを誘導しながら訊ねる。

「そのつもりだよ。
オークションで儲けたからお金が出来たんだ」

「噂でそう伺っておりましたので、奴隷の方はいつでも引き渡せるように準備万端にしておりました」

 なるほど、そういう噂だったのかとカナタは納得した。
おそらく同業の奴隷商からカナタが3000万DGも払ってキツネ獣人を落札するだけの余裕があったと聞いたのだろう。
今回のオークションには、エクストラポーションが大量出品されたという情報も入っているのかもしれない。
なんにしろ、奴隷引き渡しの準備が出来ているのはありがたいことだとカナタは思った。

「では、これが残金の1900万DGだよ」

 応接室のソファーにはカナタとララが座り、護衛のニクはカナタの背後に立った。
カナタは【お財布】から白金貨2枚を取り出して応接室のテーブルに置いた。
白金貨1枚に金貨90枚なんて出す方も面倒だったからだ。
いや、楽に取引するなら【お財布】決済なのだが、こういった場合は現金で払うのが様式美というものだった。

「お釣りとなります」

 カルロスは白金貨2枚をテーブルの自分側に引き寄せると、金貨10枚を【お財布】から出してカナタの方に差し出した。
これにて奴隷3人の売買は成立した。

 しばらく待つと、先日キープした奴隷3人が連れられてきた。
既に外出用のワンピースが着せられ靴を履いていた。

「それでは主従契約の書き換えを行いましょう」

 カルロスが恙なく奴隷契約魔法を使い、3人は正式にカナタの奴隷となった。

「これでカナタ様がこの3人の正式なあるじとなりました」

 3人の名は、年上からサキ、レナ、キキョウといった。
全員【ヒューマン・・・・・】の【契約奴隷】であり、メイドとして優秀なスキルを持っていた。

「???」

 しかし、カナタには彼女たちに違和感があった。
彼女たちが動くと頭と尻の部分が一瞬ボヤけるような気がした。
以前は感じなかったことだが、カナタが屋敷のグラス系魔物を500体も討伐してレベルアップしていたため、気付くことが出来たのだ。
しかし、カナタがじっと見つめても何もわからなかった。

「ご主人さまのえっち」

 隣に座っていたララがカナタの右腕を引っ張ると、顔を赤くして突っ込みを入れて来た。
カナタが新しい奴隷のお尻に見とれているかのように見えるのだから仕方がない。

「ち、違うよ! (はぁ。気のせいか……)」

 ララに誤解され、慌てて否定するも、まだ疑われているようだ。
そんな誤解もあり、まだ違和感はあったが、奴隷契約自体はきちんと結べているので、カナタはもう気にしないことにした。
カナタはカルロスからもらった契約鑑定書類を【ロッカー】に放り込んだ。
その契約鑑定書類には、先ほど書類の内容を確認した時には無かったはずの【獣人】【戦争奴隷】という記述があったのだが、カナタは気付かなかった。

 カナタは3人の新しい奴隷を連れて洋品店に向かうとララに全てを任せて買い物をしてもらった。
今回奴隷商で着せられていた衣装は前よりはマシだったのだが、3人とも新しく買ったメイド服に着替えてもらった。
これでどこからどう見てもメイドの完成だった。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 カナタがララとニク、メイド3人を連れてお店に帰ると、既にカリナとヨーコもそこに合流していた。
ヨーコはメイドとして購入していないので、普通のワンピース姿だった。
そのキツネ尻尾の後ろ姿を見てキキョウが声を上げる。

「ヨーコ!」

 振り返るヨーコが目にしたのは、今生の別れと思っていた姉と護衛2人の姿だった。
その驚きに、ヨーコがかけてキキョウが維持していた【幻術】が解けてしまっていた。
ひしと抱き合うヨーコとキキョウ。
キキョウもキツネ獣人だった。そして護衛のサキは虎獣人、レナは兎獣人だった。
その頭の耳とお尻の尻尾は【幻術】によって消され、ヒューマンのふりをしていたのだった。
獣人の戦争奴隷として慰み者にならないように。

 そして、【幻術】解除と同時に、カナタが3人を買わなければと思わされていた脅迫観念も消え去っていた。
これはキキョウのスキル【お願い】の効果だったのだ。
カナタはサキとレナに拒否権を発動された時から、キキョウに「この3人をまとめて買って♡」という【お願い】をかけられていたのだ。
なので、買わなくてもいい3人を買うために借金まで言い出して、オークションで金策に励んだわけだった。

「まいったな。これ契約違反になるよね?」

 事情を理解したカナタの呟きにヨーコが反応した。

「ご主人様、私はどうなっても良いので、姉さまたちを処罰しないでください!」

 ヨーコの懇願には、姉たちを思う気持ちが溢れ、鬼気迫るものがあった。
カナタはその気迫に押され、しばし考える。

「まあいいか」

 よくよく考えれば、カナタは屋敷を掃除したり料理を担当するメイドと、隣のグリーンバレーまで単独でハズレオーブの取引に行ける戦闘職を雇いたかっただけだ。
それがヒューマンだろうが獣人だろうが関係ないし、契約奴隷でも戦争奴隷でもどうでも良かった。
何の対価もなく直ぐに解放しろということで無ければ、何も問題はなかった。

「僕の損害は、思った以上に購入代金が高かっただけだから、その代金を働いて返してくれれば、何も問題ないよ。
つまり、払った分だけ働いてもらう契約奴隷と一緒だね」

 カナタは良いアイデアだと思っていたが、世間の常識からはかなり外れている考え方だった。
1000万DG超えのお金を払いきるのには、普通の仕事では数十年かかってしまうのだ。
だから性奴隷として高額の賃金を要求することで、高額な売値でも短期の契約奴隷となり得るわけだ。
彼女たちは全員特別な契約オールオッケーだったので、1000万DG超えの契約金となっているのだ。
それを短期で返済するには自らの身を捧げるしかない。
なので、メイドの給料だけでは一生解放は有り得なかった。
それを理解していたヨーコは真剣な目でカナタに告げる。

「キキョウ姉さまの分も含めて私が働いて返します。
私はご主人様に一生仕えることを此処に誓います。
カナタさまのもとに永久就職します」

 ヨーコの永久就職の宣言だった。

「ちょっと待って、それって結婚するってこと?」

 ララが慌てて間に入った。
ヨーコは暫し考えると「それも悪くないか」と呟いた。
カナタの優しさ、更には経済力も魅力だった。

「ご主人様とは、ララが結婚するの!」

「ずるい。ルルも」

「ちょっと、ヨーコ、私は許しませんよ!」

 ララとルルの爆弾発言は聞かなかったことにするカナタだった。
キキョウもヨーコの永久就職宣言にパニックになっていた。
その様子を見たニクはクスリと笑ってスルーを決めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...